表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/112

第十三章⑬『三人』

 「ふふっ。君も素直じゃないよね、シャムス。嬉しいなら嬉しい、と素直に口にすればいいのに」

 「たわけ。だが、せっかく親友とのおそろいの贈り物だ、まあ仕方あるまい。王の寛大さに免じて、受け取ってやらんこともないぞ、エア」

 「はい! ありがとうございます、義兄さま、エレツ――」

 「ふん、調子の良い奴め……だが、両手に花とは、まさにこういうことだな」


 相変わらず尊大な態度のシャムスだが、エアを一瞥した眼差しも声も、どことなく温かな色を帯びていた。

 そんなシャムスの心裡を見透かしたうえで、隣のエレツもにこやかに微笑む。

 日向のように温かな双方の眼差しに包まれ、エアの顔には天真爛漫な花のような笑顔が咲く。

 嬉しそうなエアの表情に、エレツも愛しい我が子を慈しむ親に似た微笑みを咲かせる。

 シャムスですら、憮然とした顔を微妙に紅潮させ、口元も微かに緩んでいた。


 エア、エレツ、そしてシャムスの三人は、梔子の幸福な芳香に抱きしめられるように、甘やかなで平穏な瞬間を共に過ごした。


 白昼は、庭園に咲き乱れる彩りの草花と果実の香りに癒されながら憩う。


 夕刻は、ザハブの中心を貫く清涼なフラート川の前を歩きながら、夕焼けの淡い月を共に眺める。


 夜は、芳しい夕食に甘い果実と甘露を味わいながら歓談する。


 在る日の夜更けには、星空の天蓋(カーテン)に抱かれながら、三人で肩を並べて眠ることもあった。


 薄紫色の夜を超えて、始まりを迎える朝日を眺めながら、三人は共に目覚め――。


 青く透き通った朝空の上で、日輪に照らされた昼空の下で、共に笑い――。


 終わりの近づきを告げる切ない夕陽に照らされながら、共に語らい――。


 真珠色の月に癒され、運命を占う満天の夜空の下で、共に眠り――。


 エアの幸福な日々は、いつもエレツとシャムスと共に在った。

 連なる願い星が紡ぐ永遠を象徴するアイビーのように、三人と共に在る日々はいつまでも続く――エアはそう密かに願わずにはいられなかった。


 たとえ不滅を司るアイビーですら、いつかは枯れ果て、土に還る運命にある真実を、エアは心に知っていながらも――。


***

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ