1話. 序章~カタラ大陸
その日、ラス王国の宮殿では式典が開催されていた。
各国の来賓が集まる中、人々の視線を惹きつけ、ざわめきと共にリルの前を横切ったのがクアだった。彼の姿を初めて目にした瞬間だった。
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カタラ大陸の東に、ウタという国があった。
大陸は四方を海で囲まれ、北から東側にかけて険しい山脈が連なっている。ウタ国は大陸を遮る山脈の東側に位置し、はるか2万年前から続くとされる、古代ウタ文明の歴史を持つ国だ。
ウタ国の人々は黒い髪に白い肌、狼のようなブルーグレーの瞳を持つ。穀物や魚、木の実を主食とし、肉を食べないのに体は筋肉質で体格が良い。古来からこの大陸に住む民族だ。
自然豊かなウタ国には、秋になると木々が赤く染まる「赤い森」と呼ばれる森が広がっている。森の背後にはウタ文明の遺跡が残る岩山があり、その山の頂からは雄大な滝が流れていた。
赤い森には人の背丈をゆうに越える、大型で白銀の毛色をした狼と、真紅の羽色を持つ赤い鳥がいる。この二つの生き物はウタ民族の象徴とされており、愛や繁栄の意味を持つ紋様として衣服や建物に使われている。
岩山にはカタラ大陸で唯一の金鉱脈があるが、その中腹より上には古代から「禍」と呼ばれる、実体のない悪しき存在が巣食っていた。禍は、時には人や動物に取り憑き、命を奪う。ウタ国の神官は古代から受け継がれてきた術式によって、この禍から人々を守ってきた。
そして2万年の歳月の間に、カタラ大陸には海を越えて流れ着いた民族によって、西にキパ国、南にタルス国という新たな国が築かれていった。
カタラ大陸の西南部は気候が温暖で、海岸には砂浜も広がっている。
一方、北から東の海岸線は断崖絶壁に囲まれており、北側は一年を通して氷に閉ざされた不毛の地が広がっていた。
大陸を隔てる険しい山脈と断崖絶壁を見て、南と西側の人々の間では、北と東側は人の住まない世界だとされていた。
西側は乾燥していて砂地が多く、南は西よりも気温が高い。どちらの国も建物は石やレンガを用いたものが多く、西は海からの砂を防ぐ堅牢な作りの建物、南は暑さを逃す開放的な作りの建物が広まった。
温暖な気候で両国は次第に栄えていき、大陸に新たな文明が広まっていった。
そして次第に、西と南の中央にあたる領域に、新たな勢力が集まりはじめる。その領域は、なだらかな平野が広がっていた。北東の山脈から流れる川が土壌を豊かにし、作物が豊富に採れた。
作物をもとに南や西の国に向けて交易が盛んに行われ、急速に発展していき、一つの国が築かれた。
それがラス王国である。
広大な平野の中心には街が築かれ、今ではカタラ大陸で最大の繁栄を誇る国となった。
現王政の時代に入り、東側への道が整備されるにつれて、東側のウタ国とも交流が進んでいった。
ラス王国とキパ国、タルス国の三国は皆、同じ民族だ。
この民族は金や銀色の髪色を持ち、目の色は明るい色彩がほとんどで、ピンクや水色、金色などさまざまだ。そのため、稀に生まれる黒や深い色彩の瞳は、珍しさから三国の間では美の象徴とされていた。




