城ですね
「これって食べれるの?」
シンプルな質問である。てか食べ物じゃないよね。
「これは失礼しました!このような雑魚を食べる訳にはいきませんよね!消し炭にします!さぁやってしまえ」
横で見ている魔法使いに向かって命令している。
そういうことじゃない。食べれるか聞きたいのだけど。
「ちょっと待って!とりあえずしまっとくから!こんなとこで炎使わないで!」
ここは森だ。ってことは今あの魔法使いが手のひらで出してる特大の火の玉は完全にアウト!
絶対ダメ!
とりあえずエンペラーゴブリンを収納空間に閉まってみた。
これも特に呪文とかは必要なくて念じるだけで魔法陣に吸い込まれていった。
どれくらい入るんだろう?
そう考えていると先程水辺を探しに行ってくれた忍者っぽい女性が帰ってきた。ちなみに魔法使いも女性だ。
「陛下。水辺を発見致しました。」
俺に向かって言ってる。陛下って言っちゃってる。
「あ、ありがとう。あと俺陛下じゃないから。主様も慣れないから。」
「いえ!主様は主様です!陛下が失礼に当たるのであればやめさせましょう!」
戦士が忍者に注意している。
「そこまでじゃないけど!あ、そういえば名前聞いてなかったね。俺の名前は田、、、タナトス!」
田中はあまりにも日本風すぎてとっさに変えてしまった。
「主様の名前はタナトス様ですか!なんと甘美な響き、、、失礼しました。私の名前はエクスです!ほらお前達も名前を名乗れ!」
危なそうな顔をした後しっかりと名乗ってきた。
「わたくしはシンと申します。末永くよろしくお願いします。」
今まで一切喋らなかった魔法使いがスカートをつまみながら挨拶してくれる。
「僕の名前はシノです。」
口数が少ないのだろうか。忍者風の女性は跪きながら頭を下げる。
「エクスさんにシンさんにシノさんね。これからよろしく。ってか俺に召喚されたの迷惑じゃなかった?!もしそうならすぐに解除するけど?」
そういえば勝手に召喚してしまったが大丈夫なのだろうか。
用事とかあったら大変なんだけど、、、
「私達に敬称は必要ありません!呼び捨てで大丈夫でございます!迷惑なんてことも全くありません!むしろ感謝しており、このまま永遠に仕えさせて頂きたく思います!」
エクスの言葉に後の2人も頷く。
「えっと、じゃあエクス、シン、シノ。あんまりくどいのはよくないから何も言わないけど、これからもよろしくね」
いつ地雷を踏むか分からないのでとりあえず色々スルーした。
強そうだしこのままずっとパーティとしてやっていけたらこれ程心強いことはない。
挨拶も済んだ俺たちはシノの案内で大きな湖のほとりに来ていた。
ここまでも何体か魔物がいたけど瞬殺。それはもう瞬殺だった。
一応全部収納してある。
「おー!大きな湖だなぁ!ではさっそく!」
俺は湖を覗き込んでみた。
やっぱり。めっちゃ若返ってる。14歳くらいじゃないかな。若すぎない?
「なぁ。俺って若すぎない?こんな歳の子が森から出てきたら不審に思われるよね?」
周りを警戒してくれている三人に聞いてみた。
「若いです。若様。」
「お可愛いですわ。」
「主様がどのような歳であろうと私が守ってみせます!」
三者三様だなおい!
「しかしながら確かにそのような状態ですと街にも入ることは難しいですね。身分を証明する物もなく、旅人にしては若すぎます。」
エクスがまともなこと言ってる!
ちょっとホッとした。
「だよね?どうしよう。流石にずっと野営はきついなぁ。」
三人にも申し訳ないし、何よりも布団もお風呂もトイレもない環境で生活なんて日本人には無理!
日本人には無理ってか俺的に無理!
「では私たちで家を建てましょう!いえ、主様は何もしなくて大丈夫です!私達にお任せ下さい!」
エクスが張り切って腰に下げた剣を抜く。
「待って待って!ちょっと考えるから!」
そう言うとエクスは剣を納めた。命令には忠実である。
んー。召喚してみる?家。
多分出来るだろうと思っている。
ただ、護衛が欲しいと言っただけでこのとんでもない人たちを召喚してしまった。
普通に家とか念じたら城とか出てきちゃうんじゃないかな。
あ、念じちゃった。
ゴゴゴゴゴ
湖のほとりに巨大な城が姿を現す。
何故か周辺の木々は消滅し、岩などの障害物も消え去った。
かくして立派な家が顕現したのである。
「これは、、、お見事としか言いようがありません!さすが主様です!」
エクスの目がキラキラしている。
違う違う!
家違うだろこれは!城じゃん!俺が念じたんだけど!
間違ったとか言えないよあんな表情されたら。
「ほ、ほら!大は小を兼ねるって言うしね!これで俺が大人になるまで生活出来るね!」
もはやヤケである。
「大きい城。さすが若様。一生ついていく。城なくてもついていくけど。」
シノはこんな感じだなぁ。
城と言っても城だけ出てきたわけではない。
しっかりと城門と柵、中庭には噴水やガーデニングとか出来るとこもある。
一言で言うと城まで遠い!庭デカすぎだろ!
「これは本当に立派ですね。わたくしが住んでいたところの数倍はありますわ。さすが愛しの主様です。」
シンがどさくさに紛れて愛しのとか言っちゃってる。
「若様好き。僕も。シンだけダメ。」
あれ?モテ期?いや俺今14歳だから。
嬉しいけどそこはちゃんと一線を引かないとね。
城門を抜けしばらく歩き城の入口に辿り着いた。
では、入ってみるとしますか。
この城の入口に相応しい豪華な扉に手をかけようとすると、エクスがすっと前に出た。
「主様!扉は私が開きます!」
「それくらいは俺がするけど?」
ニコニコしているが無言の圧力。
「お願いします。」
俺は折れた。
エクスが扉を押す。
ギギギと開いていく。