夜明け前の出発
離れに戻りいつの間にか
敷かれていた 煎餅布団に横になる
本を読む気分にもなれなかったので
そのまま眠りにつく
俺は誰かと話している
願いは叶ったかと?その誰かは言う
まだ叶っていない。と言うと
その誰かは消えてしまった
俺は誰かと話している
まだ望みはあるかと?その誰か言う
もう望みはない。と言うとその誰かは消えてしまった
俺は誰かに話しかけられている
「起きて……起きて」と
目を覚ますとミカが俺を揺すっていた
「……おはようミカ もう朝になったんだ」
俺は窓を見るがまだ薄暗い
夜明け前といったところだろう
「薄情な人達の代わりに
私が一緒に行ってあげるね。おじいちゃんにバレると
止められるから早く準備して」
有無を言わさす俺を起こし、村長に貰った
お古の服や短剣を、身に着けさせようとする
「勝手に出ていって大丈夫なのか?」
「いいのいいの私も15だし
外の街も観てみたいしね。ヴァネッサちゃんなんか
9歳から独り立ちしてるんだから、遅いくらいだよ」
引っかかる言い方だ
「独り立ちってミカも旅をするってこと?村には」
「戻らない」
ミカはキッパリと強い意志を込めて言った
「私の村 若い人居なかったでしょ?
このままじゃ村がなくなっちゃうから
私が何とかしなきゃ……
その為にも色んな村や町を 観て回るの」
彼女なりの考えがあるみたいだ
「わかった 一緒に村を出よう」
俺は身なりを整え杖を手に取る
「ヴァネッサちゃんが
クヌギ君を送ってあげたら
私も行かなかったかもしれないけど」
ミカにとって 心底以外だったのだろう
彼女は悲しそうに呟く
「バネッサも大変なんだよ
でもミカが付いてきてくれるなら心強いよ」
その言葉にミカは
「エヘヘ〜そぉ〜?
この村以外のことは知らないけど
ヴァネッサちゃんやたまに来る行商さんに
色々聞いてるから、クヌギ君よりは詳しいよ」
任せといてと 言わんばかりに笑顔になる
「あの……さ
バネッサには報告しといたほうが良くないか?」
家を出る前にミカに提案すると
「ん〜……ヴァネッサちゃん稼ぎにいくって
言ってたから
街に行けばそのうち会えるでしょ
その時に報告すればいいじゃん
それより早くしないと 夜が明けちゃう」
そう言って急かすミカに押されながら
俺たちは村を後にした




