第三十六番 雨降って地固まる
最終話です。どうか温かい目で読み進めてください。
あれから半年が過ぎた。あんな変事があったにもかかわらず、時間は止まることなく流れ続ける。もちろん時間が解決させる問題でもなく、自分たちが関わったことにより、多くの問題も残った。しかし、誰も弱音を吐かなかった。自分たちの責任なのだと。もちろん世間の闇に揉み消されることもあり、『黄道十二宮』の存在は世間一般に広まることは無かった。もともと広めるつもりもなく、むしろ公開することで混乱を招きかねないと、事実を歪ませて世間に伝えたところが大きい。それはユメノを含むみんなが痛感した闇であるが……
フェニックスはというと、幹部であるクリスティアと誰にも迷惑をかけないように姿をくらませることにしたらしい。服役することも考えたがそれでは自分たちが犯してきた罪を簡単に許してしまう気がして、自分たちが犯したことによる被害を目視し、陰ながらに支援することにしたらしい。もう二度と、『黄道十二宮』にも『蛇遣い座』にも近づかないという条件付きで。フェニックスはもう一人ではない。クリスティアが傍に居る。同じ過ちを犯すことは無いだろうと甘い考えでユメノは彼らの背中を見送ったのだった。
そして――
「Happy Birthday!!」
天音に連れられて扉をくぐってみると、拍手と共に紙吹雪が舞いあがった。よく知った誕生日の歌を聴きながら部屋の中央、ゆらゆらと揺れるろうそくの火の下を見てみると手作りケーキが美味しそうである。
促しのままにユメノがろうそくの火を吹き消すと薄暗かった部屋に明かりが灯った。それぞれがそれぞれの役割を担い、やるべきことを行ってきた半年間。十二人が再び揃うことも半年ぶりであった。ユメノの誕生日は八月五日で今日は二月六日である。これはただの誕生日会ではない。ようやく責任も役割も収束されてきたということから、一区切りの意味を込めている。そして、ユメノの誕生日が変事の二日後だったことからバタバタしていてそれどころじゃなかったことからも、この誕生日会が開かれた。ちなみにこの会が開かれた場所はユメノにとって始まりの場所。一度は焼野原になったにもかかわらず、大方復興した故郷。そしてそれもユメノの新しい住宅となる場所。村人たちの協力も得て開催することができたのだ。
「ありがとう。みんな、本当にありがとう」
ユメノは幸せそうに感謝した。スモアおばさんに手渡されるままにケーキを美味しそうに頬張る。紅茶を優雅に飲む土師はユメノのことを妹のように微笑ましく見つめていた。そんな様子を枚方は羨ましくも思いつつ、ユメノが美味しそうにケーキを頬張るのを同じく温かい目で見つめていた。双子や杏樹、西中島も年が近いこともあり楽しそうにおしゃべりしている。旅の最中ではあまり笑うことのなかった子供たちが今ではすごく楽しそうに笑っている。その様子を友里亜と撫子は見つめていた。凛音、四条、長尾、ミッシェルは村人と話が合い、談笑していた。また、同じ村育ちということから長尾は共感しまくりであった。
『黄道十二宮』としての力はこの十二人は既に使えなくなってしまい、マークの色もすっかり変わってしまった。もちろん『蛇遣い座』としての力はまだ健在する。それでもその力をあれから使っていない。使わずして村をここまで復興させたのだ。人の知恵と技術でここまで復興させたのだ。
「そういえば、ユメノは何歳になったんだっけ?」
スモアおばさんは分かっていてなおユメノに問いかけた。ユメノは迷うことなく胸を張って答えた。
「十七歳になりました!」
その様子に奥に引っ込んでいたイワナが前に出てきた。
「すっかり大人の女性になってしまったな。見ない間にこんなにたくましくなって……」
おかえり。ユメノ。
イワナおじさんはそれだけを言い、優しくユメノを抱きしめた。
大人の女性になっても、ユメノは子供みたいにイワナに抱きついた。
ただいま。イワナおじさん。
この日のこともきっと忘れない。例え二度と会えなくても、この絆は切れることは無いのだ。
二十歳の『双魚宮』の天音は大学に復学し。
十一歳の『双児宮』の颯真と楓真は双子村に戻り。
二十歳の『処女宮』の友里亜は自ら企業を立ち上げ。
二十四歳の『天秤宮』の枚方はスカウトされてモデルとなり。
二十二歳の『巨蟹宮』の撫子は姉の桔梗のもとに帰り。
三十歳の『金牛宮』のミシェルはテンダーの待つ自身のレストランへと帰り。
二十八歳の『宝瓶宮』の土師は世界を見て回るということから旅に出て。
二十歳の『獅子宮』の凛音は夢を再び追いかけて復学し。
十歳の『天蠍宮』の杏樹は友里亜のサポートを受けて西中島と共に街の小学校に通いだし。
十歳の『人馬宮』の西中島は友里亜のサポートを受けて杏樹と共に街の小学校に通いだし。
二十歳の『白羊宮』の四条は土師の旅に自ら加わり。
二十三歳の『磨羯宮』の長尾は村の伝統を守るためにゆめのと共に故郷へ戻り。
十七歳の『蛇遣い座』のユメノは村と街とを繋ぐお仕事をはじめ。
多くの月日が流れた。姿をくらませたフェニックスとクリスティアがその後どうなったのか誰にも分らない。永遠の迷宮。そもそもこの変事を覚えている人も次第にいなくなってしまう。それでも次の化身達の道しるべとなるように、書を残そう。一人の少女が多くの仲間に支えられ、人間として生きた物語を。
天国にいる両親にも届くように。
おしまい
はい。ようやくお話が終了しました。なんだか無理矢理終わらせた感じがすごいですけどね!
それこそ、雨降って地固まるですよ!はい!
なかなか思い通りにいかなかった物語ではありますが自己満足です。
では、次回作も寄り道していただければと思いつつ、ここまで読み進めてくださった読者様に感謝いたします。ありがとうございました。
また、どこかで。




