第三十五番 やり直そう
お久しぶりです。
夏休みは終わってしまいましたが皆様どのようにお過ごしでしょうか。
さて、無理矢理感はありますが久々の投稿です。
フェニックスに対抗できる力を持っていなかったクリスティアは何もできなかった。何も出来ないのは彼女を守っているゆめのも同じで。長尾の意思のもとクリスティアの盾となるだけ。強くなった光りは既に中の人物の姿を隠してしまっている。眩い光と共に凄まじい音が響き渡り、ますますフェニックスがどうなってしまったのかわからない状況だ。
「あるんだって……誰にでも……幸せになる権利」
聞こえるわけでも届くわけでもない言葉。すべては手遅れだったんだ。目の前にいるのは既に天文学者でもなく、運命に逆らうことのできなかった者でもない男が立っているから。かつて、フェニックスと呼ばれた男。
「なんだ。お前たち。神の前で突っ立っているとは。あいにくこの世界を一から作り直すつもりだから、仲間には入れてやらないんだ」
目の前の男の姿はまるで神とは呼べない姿と化していた。神は神でも死神のようで。負の魔力を漂わせていた。彼から発せられた言葉に慈悲は無く、下級の生き物たちに暇つぶしとして話しかけているかのような態度。そして、非情に魔弾を飛ばしてきた。
その魔弾はクリスティアとゆめのにめがけて撃ってきたものであったが、誰も当たらなかった。いや、魔弾の軌道を変えられたことにより、当たらなかったのだ。
「あなたに世界を変える権利は無いわ。もし、それでも変えようとするのであれば私が全力で阻止します」
魔弾の軌道を変え、瞬間移動のごとく、彼の前に立ちはだかったのは『蛇遣い座』の化身にして闇より解放されたユメノ。彼女はまっすぐな瞳を死神と化した彼に向けている。ユメノはもう、闇に取りつかれるつもりはない。闇から目を背くつもりもない。何も恐れるものはない。一人ではない。一人では耐えきれぬ力であってもユメノは一人なんかじゃない。『黄道十二宮』に支えられる『蛇遣い座』なのだから。
「神に逆らう者もいるだろうと考えてはいたが……まさかこんな子供とは」
死神は軽蔑の眼差しを向けたが態度は変わらなかった。神である以上逆らう者は子供であっても容赦しないという態度。負のオーラが強まり、離れた位置にいる雨音たちの肌でさえ、電気刺激を走らせていた。
すぐさま、ユメノは光りの壁を作り出す。雨音たちを守るための光り。
「そこにいるんですよね。フェニックスさん。私です。ユメノです」
目の前にいる相手は神に身を落とした男。闇に飲み込まれた哀れな男。そこに立っているのはそんな言葉がとても似あう死神。だけど、それでも、それだからこそ、彼はそこにいる。
「フェニックス? 誰と間違えているのか知らないがこれ以上の無礼は――」
彼の言葉を遮るようにユメノは手を取った。男の右手をユメノの両手で包んでいく。包まれた右手からぬくもりを感じた男は解放を求め、暗黒の力を右手に集中させた。本来ならその力で存在そのものが消えてしまうはずだが消えていない。ユメノの力がそれを上回っているからだ。
「何が正しく何が間違っているのかわからなくなって、間違った方向に進んでしまった私達ですが、それでもあなたが私のことを最後まで一人にはしなかった。あなたは私を利用するためにそうしたのでしょう。それでも、あの時の私には最大の救いだったのです」
ユメノの語りかけはぬくもりと共に、心に響いてくる。その感覚が気持ち悪いと感じ取った男は身震いをした。自我をしっかり保っているはずなのに、もう一人の自分が自身の身体を乗っ取ろうとする感覚。心の中に閉じ込められているのはフェニックス。
「そんなあなただからこそ、私はあなたを救い出したい。あなたは一人ではないんですよ。少なくとも、あなたの傍に居た彼女はずっとあなたを救いたいと思い続けていたんですよ」
ユメノの視線に合わせるように男もその方向を向いた。
「クリスティア」
男は無意識に名を呼んだ。自分でも驚いている。間違いない。これは閉じ込めたはずの男が一瞬、身体を乗っ取ったから。名前を呼ばれ、クリスティアはゆっくりと男の傍にやってきた。それでも男の右手は解放されていない。
「はい。私はここにいます」
クリスティアはいつも通りの返事を男に向けた。いや、男に向けてなどいない。フェニックスに向けている。
男が意識すればするほど、身体の制御が聞かなくなる。無意識に左手をクリスティアの頬にあてる。あてられた左手に重ねるように手を重ねるクリスティア。
「私は自分の運命に耐えられなかった。故に間違ってしまった。それでも、お前は俺の傍に居てくれるか?」
懇願するように、もう一度人間として歩んでいきたいために、手を伸ばす。こんなに間違ってしまった自分でももう一度……
「私も、あなたを救いたいと思いながらも間違った行いをしてきました。そんな私でもあなたのお傍においてください」
クリスティアの言葉を聞き、消し去ったはずの感情が溢れてくる。涙は次から次へと零れてゆく。立っているのもままならないフェニックスを抱え込むようにクリスティアが抱きしめた。
ユメノの光りが彼を優しく包み込んでいく。浄化していく。依り代を失った死神は抵抗することもなく浄化して消えていった。
この流れだと、次話が最終回になりそうですね!
うーん。なかなか思い通りの物語とはいきませんでしたが(読者様にも満足いただけてないかもしれませんが)終わらせることができそうである意味満足です。
では、最後の最後までこの物語に寄り道してもらえますよう、頑張ります。




