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第182話

 レイクネスは司がいかに來冥者の常識に当てはまらない人物かを見抜いていたが、界庭羅船がそれに気付いたという事はWPUの人間も司の才能に気付く可能性は非常に高い。


 そしてテトラは開花適応後の司の來冥力を間近で感じ、確信へと変わっていた。彼の体内を渦巻く來冥力の量はWPU内で見ても頭1つ抜けていると。


 まさしく才能開花と言ったところなのだろう。


 元々司の内にはマグマのように燃え滾る來冥力が流れていた。だが使用する機会がほとんど無かった上にアルカナ・ヘヴンではそもそも來冥力が使えない環境にある。司も周囲の人も彼の才能や実力に気付く事は無かった。


 しかしレイクネスという怪物を前にした事で、これまで使い道の無かった來冥力が開花適応という形で覚醒を果たしたのだ。もっとも司はその事にまだ気付いていないが。


「……っ!」


 だがそんな司にも限界というものは当然存在する。


 彼の体力や來冥力が本当に無尽蔵など有り得ない話であり、何か特別な条件を満たすと來冥力が自動的に作り出されるといったチート能力を有している訳でもない。


 どれだけその量が多くても使用し続けていてはいつかは限界を迎える。当然の話だ。


「ははははははは! 確かにテメェの來冥力はスゲェ! その点は素直に褒めてやる! けどな……オレを超えるレベルじゃねぇよ。その理由はただ1つ……開花適応のレベル差だ! どれだけ凄かろうが、超えられねぇ壁ってのは確かに存在すんだよ。それを認めろクソガキ!」


「がぁ!」


 ついに司は被弾を許してしまった。


 そして1度攻撃を受けた事で司はリズムを乱されてしまい、拮抗が崩れた。司の反撃や防御は全てワンテンポ遅れ、レイクネスの攻撃を防ぐには至らない。


 最終的にレイクネスはトドメの一撃として彼の腹に強力な打撃をヒットさせた。


 テトラの時と同じく残っていた來冥力は全て被ダメージ軽減に消費されたのだろう。司は來冥者形態が解除され、膝から崩れ落ちてその場にうつ伏せで倒れてしまった。


 何とか立ち上がろうと力を込めるが、全く力が入らない。そんな司に歩み寄ったレイクネスは彼を見下ろしながら楽しそうに話し始める。


「残念だったなぁ司。この勝負……テメェの負けだ。世界に通用する天才來冥者だったみてぇだがな、オレに挑むには経験も開花適応レベルも何もかもが早かったっつー訳だ」


 潜在的な実力だけで勝てるほどレイクネスは甘くなかった。


 この時司はシュレフォルンが以前言っていた事を思い出した。


『奴らが踏んだ場数は桁が違う。仮に俺らの來冥力がレイクネスを少し上回ったとしてもそれくらいの差であれば、まだ向こうに軍配が上がると俺は判断してる』


 あの発言はこういう事だったのだと司は身をもって理解した。


 來冥力の使い方、戦闘経験、状況判断力では完全に劣り、開花適応レベルというハッキリ数字として比較される要素でも負けている。寧ろそんな状況下であるにも拘らずここまでレイクネスと渡り合えた事が奇跡なのだ。


「ま、そういう事で……終わりだ、天賀谷司。一撃で絶命させてやる」


 レイクネスはゆっくりと金砕棒を振り上げる。


 司とテトラは來冥力を使える状態になく、キュルキオネは気絶し、逆転や反撃の一手を作り出してくれそうな存在はもう居ない。


 間違いなく考え得る最悪の状況となっていた。


 奇跡は起こらなかった。レイクネスも言っていたが、司たちが彼女に挑むにはあまりにも早すぎたのだ。


「 (くっ……ここまで……なのか……?) 」


「くくく。楽に逝けや、司ァ!」


「――ッ!」


「司く―――ん!」


 誰もが司の死を確信した。先も述べた通り、奇跡を起こしてくれそうな味方はもう居ないからだ。


 だがそれは――救世主が新たに現われなかった場合限定の話である。




「ふん。開花適応したばかりの原石を、リバーシの器がある人間を、私の目の前で殺そうとするとはな」

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