18話「妖精と羊」
〜前回のあらすじ〜
今日も探索に出発。今日はいつもと違う方に行ってみた。
早速ランク2のヒール草発見! さらに何かよくわからない花畑発見!
帰ろうと思ったら謎の声が聞こえてきた。気づいたら走り出してた。あれ……?
情報源?
正義感?
後味の悪さ?
理由は、後付けしようと思えばいろいろできるけど、実際のところ、どうして走りだしたのかは自分でもよくわからない。
あれかな、イベント的な演出とか?
けどこのゲームだと、こういう自己判断を要求されそうなところで強制するのは無いと思うけど。
まぁ、とりあえずは乗りかかった船。
今さら引き返すのもあれだし、どうにか出来そうなら力になってあげようじゃない。
ダメそうなら……うん、もう、帰ろう。
いのちだいじに、で。
◇◆◇
見つけた。
花畑跡からそれほど遠くない距離。
声?の元にたどり着くと、二つの存在が目に映った。
片方は、妖精?
半透明な羽を持つ、半透明な体の小さな女の子。
大きさはだいたい20センチくらい。
「妖精」のイメージからすると少し大きく思うけど、十分小さい。
全てが半透明で、幻想的でファンタジーな見た目。
だからこそ、この光景が、まだ少し、マシに見える。
「……っ」
半透明な羽はボロボロで、ところどころに穴や切り裂かれたような痕が見える。
それは、体も同じ。
あちこちに怪我をしていて、毒か出血の状態異常にでもかかってるのか、ところどころ継続してダメージエフェクトが見える。
何が起きたのかわからないけど、あまりに酷い状況に思わず息を飲む。
そして、その妖精の前に立つ、もう一体。
見た目はどう見ても、真っ赤な羊のぬいぐるみ。
大きさは30センチくらい、妖精より少し大きい程度。
見た目は、可愛らしいはずのぬいぐるみ。
なのに、「可愛い」と言う気持ちが全く浮かばない。
ただただ不気味で、見てるだけで得体の知れない恐怖みたいなのが、まとわりついてくる感じがする。
そんな羊のぬいぐるみが、明らかに敵意を持って、その妖精に向かっている。
『7#31W……L-‘z7z……8#31/zL-‘#……』
「っ!?」
まただ。
また聞こえた、助けを求めるような声。
声の主は、やっぱり妖精っぽい。
意味はわからないはずなのに、それを聞くと、なぜか助けないといけないような気持ちになる。
今回もそう。
その声に誘われて、隠れていた茂みを飛び出して、妖精の前に出る。
『!?』
「っ……何やってんだか、私」
後ろで、妖精がびっくりしてるっぽいのが、なんとなく伝わってくる。
いやいや、あんたが呼んだんでしょーに。
とりあえず、あのぬいぐるみがヤバイみたいだから、後ろは振り返らずに、剣を構える。
その間、ぬいぐるみも驚いてたのか、動きを止めてこっちを見てた。
まぁ、ぬいぐるみだから表情なんてわからないけど。
「……」
「……」
『……』
そのまま、動く様子の無いぬいぐるみ。
動くに動けない私。
状況が理解できてないらしい、思考停止状態の妖精。
……どうしろと?
「……えーっと、用が無いんなら帰って欲しいんだけど」
《特殊シナリオNo. Y-7『血濡れた羊のぬいぐるみ』が開始されました》
《特殊シナリオクエスト『REDRUM』に挑戦しますか? Yes/No》
「ひっ」
突然目の前に表示されたシステムメッセージ。
ほんっともう、緊張してる時にやめてほしいんだけど。
ほんと、ビビるから、マジで!
「あーもう。 ほんと、何なの? クエスト? やらないよ帰りたいよ! ノー!」
緊張の糸が切れて、もうヤケクソ気分でNoを選択する。
私の叫びに反応したのか、Noの選択に反応したのか、羊のぬいぐるみは一瞬、やばいくらいの殺気を出すだけ出して、どこかへとトボトボ歩いて行った。
たぶん後者だろうけど。
「はぁ……あー、怖かった。今のがリアルなら漏らしてたかも……」
恐怖はシステム的に制限されてたはずだけど……。
もしかして、それを超えてくるくらいやばい奴だったとか?
さっきまで感じてた不気味な感じも、もしかしたらやばいくらいの威圧感が制限された結果だったとかなのかな。
どっちにしろ、クエストは受けなくて良かった……。
受けてたら、たぶんアレとの戦闘だったよね。
「ふぅ……。もうこんなのこりごり……って言いたいけど、特殊シナリオかぁ」
メニュー画面からシナリオメニューを開くと、さっき勝手に開始された特殊シナリオ、No. Y-7『血濡れた羊のぬいぐるみ』が載っていた。
分岐条件?
失敗条件?
何かいろいろ書いてあるけど、まぁ、あとで確認しよう。
「それより……襲われてた妖精さんは、っと……?」
メニューを閉じて、全く動く気配の感じない後ろを振り返る。
「……え、あ、これ、もしかして気絶してる感じ、かなぁ?」
振り向くと、明らかに気を失った感じの妖精さんが倒れてた。
殺気を向けられた時にでも倒れたのかな?
幸い、漏らしてたりとかそう言うのはなかった。
妖精さんってその辺どうなんだろ?
と言うか、ゲーム的にその辺どうなんだろ?
流石に無いか。
無いよね?
「と、現実逃避はこの辺にして、どうするかね」
流石に、このまま放置は良くないよね。
若干、洗脳と言うか、思考誘導された感じはあったけど、助けを求めてのことだし大丈夫だよね、うん。
たぶん。
よし、そうと決まればさっさとこんなところから離れよう。
妖精さんを抱えて、っと。
凄い軽い、けど少し邪m……げふんげふん。
片手が塞がるのは、道中モンスターとか出た時に怖いね。
「……あ、小袋」
採取前で空にしてた、腰の小袋。
妖精さんの大きさ的にちょうど良さそう……と思ったけど羽が引っかかったからやめた。
「まぁいいや。モンスター出ても逃げれば良っか」
と言うわけで、妖精さんを胸に抱えて、隠れ家に帰ることにした。
あ、帰りに忘れずに、小袋にヒール草と花畑の花を摘んでから帰路についた。
いやだって、勿体ないし……ねぇ?
こんにちは。
お読みいただきありがとうございます!
年始からの忙しさも落ち着いてきて、余裕が出てきた作者です。
まぁ、もう少ししたら新年度の準備的な忙しさが出てくるのでしょうけどね……。
この主人公……やたらモンスターと遭遇数少ないわ、知的生命体と遭遇しないわ、二つほど知らないうちにイベントフラグ叩き折ってるわ、なかなかスローなライフを楽しんでたのですよね、実は。
それが、チュートリアル終わってYの確率上がった途端これです。
急な展開ですが許して()
あと、変な記号表記の文は、言葉が通じないのを表してるだけなので、特に意味はありません。
ついでに言うと、このゲームではシステム的にプレイヤーの思考を操作することはできません。
何が起きたのでしょうねー。
そのうち本人とかが教えてくれるでしょう、たぶん。
さて、次回は土曜日更新予定です。
その次辺りから、また更新頻度3日更新に戻したいですね。
余裕のあるうちに頑張って書かねば。
と言うわけで、また次回もよろしくお願いします!




