問題児は異世界でも問題児
また夢である。あのいつかに見た夢、女性と話した記憶はあるが何を話したかまでは覚えてられなかったやつだ。この地域には彼女に関する何かがあるのだろうか?まぁ、それはともかく目の前には彼女がいる。
「…………」
「あぁ、久しぶり。元気、なのかな?取り敢えず先に言った方がいい事があるんだが、前回君が言ってたことを全部忘れてしまったんだよね。今は分かるんだけど、夢から覚めると何も覚えてないんだ」
「……!?…………、……ぁ……ぁーあー、こんなもんかな?」
「どうかな、夢から覚めないと覚えてるかどうか確認のしようがない」
「それもそうか取り敢えず前回話したことをもっかい話とこっか」
そういうとどこかから手帳を取り出してこちらにそれを渡してくる。手に持つと自然とページがめくれてあるページでとまる。今から話す内容が書かれているようだ。
「どうにも目で見たものは覚えてるみたいだから保険にね。さてと、どこから話そうか?まずあなたに頼みたい事ね。魔法の復活を頼みたいのよ」
「は?魔法は……もうあるだろ」
「そうなんだけどね。この空間なら分かるかしら?使う魔法に違和感がないかしら?特に呪文とかに関して」
「……」
(違和感ねぇ……呪文は長いとは思ったが、うーん……)
その時に気づいて、驚いた。なぜ今まで気が付かなかったのか。不思議でならない。
「名前がないのか!?」
「せいかーい!!そうなの、私が昔に使った魔力の元にしちゃったのよね〜」
「はぁ!?なんだそれ?」
「そう、あなたの今いる世界って名前と歴史?んーと、言い伝えとか伝承とかって言った方がいいかな、そういったものがとても強い力を持つのよ。その中でも名前は別格、すごい力を持ってるわ」
「それでなんで魔法の名前なんか使ったんだよ」
「魔王様を復活させようとしたのだけど失敗してしまったわ」
やれやれといったふうに首をふる。ムカつくなこいつ。
「それと僕がここに呼ばれるのに関連性を見いだせないんだが、暇つぶしって訳でもないだろ?」
「だから言ったでしょ名前の力がすごいって。そのエネルギーのせいで私はこの次元の狭間っていうのかしら?正確には多次元にわたって引き伸ばされてる状態なのだけど、とにかくここから抜けられないの。そこであなた、あなた移動する能力持ってるでしょ?この空間に連れてくるのに便利だったのよ」
「それで名前をつけ直してどうするんだよ。お前が戻ってくるだけじゃないか」
「確かにそうね。私も戻ってくる。でも私がここにいることで起こる弊害って結構大きのよね……」
驚きが連続の内容だったが、だが次のセリフには敵わないだろう。彼女は口に手を当ててにっこりと微笑みながら衝撃の内容を口にする。
「異世界から人が入り込んできちゃうのは私のせいなんだよね」
翌日、学校に行くと呼び出しがかかった。昨日の件だろう。職員室に着くと直ぐに昨日のことについて尋ねられた。
「エラさん、ラムさん、なぜ呼び出されたか分かりますか?」
「昨日勝手に演習室を使ったことですか?」
「それもそうですがクラスメイトに対して……その暴力的な行為を行ったと聞きました。リーツ側からの言い分は聞いたのですが……エラさんからの言い分を聞いておかなくてはと思いまして」
なるほど、一方的に叱る訳ではなくしっかり両方の意見を聞いてから判断したいと。どうやら生徒は腐っているが教師はまともらしい。
「分かりました、簡単に説明しますと……」
昨日の一連の流れを嘘偽りなく説明する。服を欲しいと頼まれ、断るとキレて襲いかかられた、返り討ちにしてやったと。
「……そうでしたか、リーツ1人で挑んだと本人とその取り巻きは言っていましたが……取り巻きは一瞬で片付いたわけですね、まぁ多分あなた達の主張が合っているんでしょうね……」
「あの、他校の生徒にそんな事を言ってしまって良いんですか?」
「既にこっちから手を出してるのは確定でしょう。後でカメラは確認しますが……前からリーツはおかしいと感じてました。彼が転入してきてから5人がこの学校を去っていった、皆優秀だったんですが不思議なくらいの不幸が重なって……」
その時ちょうど鐘が鳴った。
「おっと、授業の時間のようですね。確かに大勢で襲いかかられましたが目を潰して放置は倫理的な問題がありますから気をつけてくださいね。まぁ大人の小言と思って流してください」
教室に入ると同時にクラスが静まり返る。
(浮きましたね、どうします?)
(任務に影響なければ問題ないだろ)
(エラさんのその強いハートはどこからくるんですか?)
(考えるのが面倒臭いだけだ)
特に滞りなく席に着くとリーツとその取り巻きが見える。リーツと目が合うと怯えたように縮こまり、周りの取り巻きがそれに気がつくと壁になって視線を遮る。
「……弱いな」
「あんな事しておいてよくも!」
あまりにくだらない事だったと自分を戒めつつ、目を逸らして次の授業の準備を始める。机にイタズラでもされそうだから爆発系の魔法でも仕込んでおくことにした。
次の時間は体育である為、着替えなくては行けないので更衣室に移動する。下着になったところで絡まれる。大胆にも壁ドンを仕掛けられてしまった。オーラムは……遠くから見てる。
(武器を隠せないところでかつ逃げられない状況で勝負を挑むとか、卑怯にも程があるだろう)
「リーツ君に何したか分かってるの?」
「返り討ちにしましたね」
「違うでしょ!!リーツ君に酷いことをしてなんとも思わないの!?」
「私達に多人数で挑んでなんとも思わないの?」
そのセリフで言葉につまり何も言えなくなるが引っ込みがつかないのだろうか、引き下がらない。
「うるさい!やっていいことと悪いことがあるだろ!」
「そーだぞ、あれはやりすぎだ!」「物事にも限度ってもんがあるでしょ」「リーツ君可哀想」
その場にいた取り巻きたちが口々に責めてくるのだが、まぁ、全く気にしてない。だが面倒臭いなぁ、これどうしようか?後ろでニヤニヤしてるオーラムはぶっ飛ばすことにして……オーラムが何かに気づいてビクッとするのが見える。
(あぁ、めんどくせぇなぁ)
「何か言いなさいよ!」
肩を強く押され後ろのロッカーにぶつかった瞬間だった。教室で大きな爆発音がする。取り巻きたちがなんの音かと振り返った瞬間に魔法で足元を凍らせて動けなくしてやった。
「ひぃ!」「動けない!!」「何すんのよ!?」「早く抜けないと!」
取り敢えず授業に遅れないようにゆっくりと着替える。その間に抜け出そうともがいているが氷は溶けなければ砕けもしない。
「さて、それじゃあ。私は授業に行きますので、爆発したお仲間も助けに行ってあげてくださいね。では」
「待ちなさい!」
無視して行こうかと思ったが後々面倒くさそうなのでオーラムに頼み事をする。いや、結局無視はするのだが。
(あいつらの素性調べろ!)
(なんて雑な扱い……分かりました。じゃあ、放課後までには)
ちなみにどうでもいいことだが、足を凍らされた彼女たちは無事授業に間に合っていた。
────放課後
「なるほどねぇ……リーツくんの取り巻きは色んな人がいるわけと、金持ちから平民、貴族までもがいる訳か。共通項は特にないしまぁ、あえて言うなら調子に乗ってる奴ら、パリピって言うのか?陽キャばっかりってこったな」
「ですね、それでこれを調べてどうするんですか?」
「ん?脅しに使えるだろ?」
「鬼か!?」
「魔王だ」
後日、取り巻きおよびリーツの机の中から個人情報が。内容に関してはありとあらゆる情報(文字通り)の書かれた紙が各々の机の中から見つかる。




