喧喧諤諤3
気づけば50までいけました。これからも頑張ります。
ゆうきは悩んでいた、それはいつもの光景に相違なかった。しかし、普通とは違った雰囲気の悩みであった。
まずは、悩み方だろう。うつ伏せになってひたすら動かずにじっとしていた。
次に周りの環境だ。シーンとしていて物音の1つ1つが響き渡りそうな静けさに似た、張り詰めた空気だった。実際はテントの外からの歓声でそんな事は無いのだが。
そう、そうして1番の間違いとでも言うべきはそのシーンとした空気でその態勢で悩んでいる内容が自分の”キャラ付け”な事だろう。
(うーん、どうしよう。異世界来たし、僕可愛いからやるなら魔法少女がいいんだけど僕ヴィラン側なんだよねぇ。どうしようかな〜)
唯一まともだったのは、うぬぼれにも近いその考えでゆうきが実際に人が見て可愛いと思える容姿であり、その活用方法だけだった。
「む?ゆうきよこんな所で何を?まぁ、良い。我は1回戦を通過した。当然の事ではあるがな!」
顔を上げるとそこに居たのはハルマだった。
顔と実力のお陰かテント内の人達からゆうきとは違う理由で注目を集めていた。
「あ、そういやそうだったな。まぁ、あんくらい余裕でしょ?ハルなら勝つと思ってたよ」
「ふふっ!そうであろう?そうであろう!?……してゆうきよ。お主様の試合はいつだ?」
「今やってるやつの次だよ。ワクワクしてきたね」
しかしながらゆうきは自分のキャラを確立できていなかった。
その時ふとハルマを見て思いついたことがあった。
こいつは見た目に対して中身がお子ちゃまである。つまりはギャップのあるキャラクターを演じればいいのでは?と。
思いつくがすぐに予め配られた自己紹介及びキャラクター設定の詳細用紙に必要事項を書き込み係の人へと手渡す。
(これはいいんじゃないかな?ハル、残念だが僕が勝たせてもらうよ……)
そうして悪い笑みと共にゆうきは試合の準備の為に、何故かハルマを連れて更衣室へと向かうのだった。
「さぁ!グリーンボーイ王座決定戦も3回戦に突入します!そして皆様お待ちかね、2人目の女性の登場だ!おい!ネイビスどんな奴が出てくると思う?」
「うーん、こんな大会に出るぐらいですし、聞くところによると魔術より体術で戦うかたらしいんですよ。ハルスは魔術師みたいだったので、次の方はやっぱり筋肉質でゴッツイ女性じゃないですかね?ネルドはどう思う?」
「俺もお前と一緒だな、多分身長2メートルはあんじゃねぇか?……おっと、答え合わせの時間だ。さぁさぁ!皆様お待ちかね!第3試合始まります!」
ネルドは係から各選手の自己紹介文の書かれた紙を受け取り、息を整えて大きな声でマイク越しに叫ぶ。
「さぁ、お待ちかね!ヒーローの登場だ!心に宿すは勧善懲悪!善を勧め悪を懲らしめる!ムラマサ!対するヴィランは!どんな悩みも銃とナイフで一発解決!爆殺魔法少女エラ!」
そう言うとヒーロー側のテントから日本鎧を着て腰に日本刀を携えた若いイケメンが出てきて、ヴィラン側のテントからは何故か白基調の黒と赤い模様で下半身はミニスカートになった浴衣、つまりはミニ浴衣を着て白い長髪姿のゆうきが出てきた。
ゆうきの格好はまるで白装束のようで不吉に見える人もいるかもしれないが会場の人達はその見た目に心を奪われた。
「お、おぉ!ちょっとちょっと!2メートルもないし、めちゃくちゃ小さくて可愛い子出てきたんだけど?さっきのハルスといい勝負じゃないか!?」
「そうですけど……うーん、個人的にはヴィランって暗色系のイメージがあるんですよねぇ……。彼女は何かを企んでいるんでしょうか?その部分にも注目していきたいですね」
メイビスのその言葉にゆうきはニヤリとする。
(おぉ!流石分かってるねぇ、さて早速行動開始しますか。大事なのはギャップだよね。さぁ!向こうの世界で観たプ〇キュアの知識で得たこの格好をとくと見よ!)
「みんな〜!応援宜しくね〜!!爆殺魔法少女エラ!いっきま〜す!」
実はゆうきの格好は前の世界、つまりは地球においてかの有名な日曜の朝に活躍する少女達の服がモデルになっており、それどころか元々は浴衣なのでそれを活かしたデザインとなっている。
当然能力の方も制服と遜色ない出来となっているが、光学迷彩と防汚だけは時間的に付与することが出来なかった。
それ以外はいざと言う時のために持ってきていた即先の魔方陣を写し取る紙。と言っても塗りつぶす部分だけ切り取られており上から塗料で塗れば下地に模様が残る。というものを使い簡単に付与することが出来た。
そんな努力も重ねつつ、全力の笑顔で観客へとアピールを行う。
その笑顔に観客のテンションは更に上がり、所々でゆうきのヴィラン名を呼んだり応援したりする声が聞こえる。
(よっしゃ!掴みはバッチシだな)
相手方は驚いた顔をしてこちらを見ているが、仕方なくリングへとあがっていく。
ゆうきも倣ってリングへとあがりムラマサと対面する。
「まさか試合が始まる前にパフォーマンスするとは思わなかったよ。では、エラさん!いい試合にしましょう」
「ま、出来るならね。僕が君を圧倒してみせるよ!」
お互いにだけ聞こえる声で一言ずつ言葉を交わすと審判が間に入りルールの再確認を行い、2人はそれに同意する。
「それでは……試合開始!!」
「いくぞ!エラ!いざ尋常に参る!」
「うふふふっ!楽しく遊びましょう!」
ムラマサは武士らしく、そして漢らしく叫び、対してゆうきは普段の喋り方と違い幼女感を出して叫んだ。2人は演技とは別で本当に試合を楽しもうと思っていた。
そんなお互いの気持ちも知らずに試合は始まっていく。
ムラマサは腰の刀を抜きながらゆうきことエラに迫るが、ゆうきはコルトパイソンを構えて何発か牽制のためにムラマサに撃ち込む。
「来たか!”我が肉を動かしたまえ”」
しかし、呪文を唱えて自身の身体能力を強化すると大きく横に周り弾をかわしてしまう。
それどころかそのまま螺旋状になるようにゆうきに近づくかと思いきや、突然方向を変えてジグザグに突っ込んだりとゆうきを完全に翻弄しているように見えた。
「おっと!ムラマサ選手すごいスピードで移動してますね!身体能力強化だけではなく素の身体能力も高いようですね」
(なるほどな〜身体能力強化してるとはいえ、鎧を着てこの速度……すごいな……)
しかし、ゆうきは射撃を一度止めると、落ち着いてリロードをしていた。と言うのも時間戻しちゃえばいいわけだからね。
そしてゆうき以外が気付かぬうちに入った2周目でゆうきはムラマサの入ってくるべき場所の、頭に当たる部分にナイフを置くようにそっと突き出す。
しかし、ムラマサは身体強化しているお陰か致命傷こそギリギリで避けるが、体勢を崩してしまいそこに大きな隙が生まれる。
「バイバイ!」
体勢を崩したムラマサのアゴを容赦なく膝で蹴りあげると、そのまま身体に銃弾を撃てるだけ撃ち込み、ムラマサはそのまま場外へと弾き出されてしまう。
そうしてそのままゆうきの勝利が決まってから、一瞬の静寂の後に観客から歓声が上がった。
流石の観客も10才程の少女が勝つとは思っておらず、更には予想以上の戦闘力と容赦のなさに一瞬の静寂が生まれたのは当然と言えば当然だったのかもしれない。
「これは!予想外の結果になりました!いや、正直にエラの姿を見た時は流石に……と思ったけどまさかまさかだぜ!」
「そうですね、完全な死角からの一撃を的確に予測してカウンターを入れてましたね、あれはかなりの察知能力が無いとほぼ不可能な芸当です。それにうまく自身の手の内を隠していますね、次の試合にも備えての一手ですね」
「あぁ、そうだな。それにしてもエッグい攻撃してたなぁ……アゴを蹴りあげてから全弾ぶち込むとか、そもそも一朝一夕で出来るような芸当じゃないよな!まぁとにかく1回戦突破おめでとう!じゃあ次の試合に行くか!」
実況と解説の2人が話している間に、ゆうきとムラマサは試合会場の外へと出て2人でテントに向かっていた。
「お疲れ様エラちゃん。とても強いんだね、まさかあの一撃が防がれるとは思わなかったよ。一瞬でやられちゃったよ……」
「いやいや、正直あの一撃はギリギリだったよ。とにかく、こっからも頑張るから応援よろしく!」
「あぁ、僕の分まで頼むぞ。応援してる」
そう言って2人は握手をするとヒーローとヴィラン、それぞれのテントへと戻る為に別れるのだった。
ゆうきがテントに戻るとハルマが入口で出迎えてくれた。
「お疲れ様、良い試合だったぞ!まぁ、貴様なら当然の結果であるとは思ったがの」
「ありがとう、ハルマ。それにそっちと当たるのは次の次だから、そこまでは負けるつもりは無いよ」
「こちらも同じだ、負けるでないぞ……それと服を戻したらどうだ?」
「ん、そうだね」
そう言うとゆうきは身体に張った魔力を落としていく。
するとみるみるうちに服と髪の白い部分が溶けてポタポタと垂れ落ちて、元の黒基調で赤い模様の浴衣が出てくる。
「しかし、よくもまぁ具現魔法も使わずに即席でその服を作り上げるとは……どころか追加効果まであるのは全くもって末恐ろしい頭と運じゃのぉ」
「まぁね」
実は以前学校で使った魔力で髪を凍らせたものを応用して服を一時的に作り替えていた。
また、ハルマの言った追加効果とは魔力で張った氷の服に物理的に触れるとその部分にまで影響が及ぶというもので、当然すぐにゆうきの体から遠ざかれば魔力制御が行えなくなり、そのまま氷結した状態で凍傷や低体温症になってしまうというものだった。
ただやはり、魔力を常に張り続けているので少しばかり魔力消費が大きくなってしまうが、ゆうきにはあまり縁のない話だった。
そうしてハルマとの小さなやり取りを終えて、共にテントの中で先程と同じ位置に座り込む。
すると、周りの選手がジロリとこちらを見てくる。さっきよりも視線が鋭い気がする。
「なぁ、ハル。さっきより視線が強くない?」
「……どうやら、こいつらはお主が偶然勝ったと思ってるらしい。まぁ目のないやつが見ればあれはたまたま偶然にしか見えんだろう」
「なるほどね……ってことはさ。さっきの解説と実況って完全に僕がやったって見切ってたよね?その辺の奴らより強いのかな?」
少しの思案の後、ハルマは静かに答える。
「確かに……カウンターを決めた。と断言しておったの……目だけは確かなのは間違いあるまい。ううむ……あれを見切れたのは我だけと思ったが、世は広いなゆうき」
「あぁ、そうだね。いつか彼らとも一戦交えてもみたいけどねぇ」
「そうじゃのぉ……そうだ、次の選手の意試合を見ておいた方が良くはないか?今やっておるのだろう?」
「そうだね。ナイスアイデア!」
そう言うが否や2人はテントの入口に陣取って4回戦目の試合を観察し続けていた。
両選手ともに武器を使った戦い方で、ヒーロー側は片手剣に盾といったスタイルで、ヴィラン側は大きなハルバードを持っていて、2人とも軽鎧を身にまとっている。
ヒーローの絶え間ない連撃の隙をついて大きな一撃を狙うヴィランの試合は、お互いの攻撃をヒーローは盾で、ヴィランは回避とハルバードで防いでしまい、どちらも決め手に欠けるのか、全く試合が進むことは無く膠着状態に陥ってしまった。
「おおっと!試合は完全な膠着状態になっちまったな。どちらかの気力がきれるかの問題になってきたと見るけど……メイビスはどう思う?」
「そうですね……言う通り気力の勝負になっているのは間違いありませんけども、それでも勝負は最後まで分かりませんから……両選手の覚悟次第でもありますね」
「覚悟?と言うと?」
ネルドが不思議そうにメイビスに尋ねる。
「覚悟とはつまりは気力もそうですが変化を受け入れる、覚悟ですかね」
その瞬間にその答えを待っていたかのようなタイミングで試合に動きが生まれた。
ヒーロー側の選手が突然盾を投げ捨てて、両手で剣を持って戦い始めたのだ。
当然防御力は落ちたが攻撃の回転速度と一撃の威力が上がっている。
ハルバード使いは突然のギアチェンジに対応出来ずにそのまま呆気なく首に剣を添えられて負けを認めてしまった。
「おぉ、なかなかにやるではないか、あの男。しかしながら流石ヒーロー。我等と違いトドメは刺さぬのだな。腰抜けのクソ野郎だな、ゆうき。絶対にあの偽善者を倒すのだぞ!」
「…………ハル、久しぶりの戦いで少し興奮しすぎだぞ。まぁ、構わないけど程々にね。あと、あの偽善者は倒すから安心しときな。それより2回戦が始まるまでに少し時間あるから外に出てご飯買おうよ。肉が食べたい」
「それは良い提案じゃの!行くぞ行くぞ!」
そう言うとハルマはゆうきを引きずっていってしまう。その時ゆうきはふとあのスパルタ兵はどうなっているのかな、とも思ったが肉への誘惑でその思いは消えてしまった。
お話を作るようになってから思うようになったんですけど、キャラ紹介ってあるじゃないですか?
あれって作者が自身のキャラの設定忘れてその確認のついでに載せてんじゃないですかね?
個人的な意見ですが。
まぁ、僕は自身のキャラを忘れてない時はほとんど無いので安心ですね
それから活動報告を更新します。
という訳で50部までお付き合い頂きありがとうございます。
これからも辞める時まで辞めないのでお付き合いください。
宜しければ次回もお読みください。




