不撓不屈3
更新遅れてすいませんでした。
これから平常運転に戻していきますのでよろしければご贔屓に願います。
〜???視点〜
ゆうきの迷い込んだ路地裏の、どこにあるかも分からない薄暗い部屋には30人ほどの人影があり、皆が思い思いに過ごしているように見えた。
しかしその場には1人を除いて共通点があり全員黒いローブを羽織っていて顔が良く見えない。
また、その残りの1人はリーダーなのか、灰色のローブを纏っていてやはり顔が見えない。
するとその灰ローブに1人が近づいて報告を行う。
「報告!エラトマが無事に結界内へ入りました!一般人の誘い込みも順調で、誘導の方も上手くいっています。また、奇襲もかなりの効果が出ているみたいです。あとは魔力の持つ限りこちらの独断場です。この後はどうしますか?魔力の残存量が予測通りなら今すぐにでも襲撃場所への誘導も可能です」
「……あぁ、やるか。準備をしろ!俺達の攻撃の番だ。今日こそ我々の恨みを晴らす日が来た。準備を始めるぞ!」
リーダーらしき人物がそう叫ぶと、黒ローブ達は一斉に立ち上がり装備を確認し始めた。
そしてその黒ローブ達の目は恨みがこもっていたり決意を決めたような目をするものまで様々な者ばかりだった。
「全員準備は出来たな。敵との直接接触になる。覚悟して臨め。そして、我々の失ったものをあいつに分からせてやれ。出撃だ」
準備の時と打って変わって静かに指示をだしたその目は周りの部下達と同じ復讐の目だった。
そうして部下達はゾロゾロと部屋の外へと順番に向かって歩いていく。
(なんだか……締まらないなぁ……。でもこれでいい。俺達には俺達の雰囲気があるからな……この戦いが終わっても俺達は仲良く出来るかなぁ……)
部下達を見送ったリーダーは静かに今までと、それから今後の事を考えていた。
〜ゆうき視点〜
「だぁぁぁあああああ!!!どこもかしこも糸ばっかりじゃねーか!いい加減イライラしてきたぞ!ていうかここどこだよ!」
絶賛道に迷っていた。と言うより行きたい方向に行けずどんどん訳の分からない所に来てしまった。
なにより1番ゆうきをイライラさせたのが相手にとって間違った道を通れば普通に前来た道を戻れるのだが、正しい道を通った場合後ろの道が糸で塞がれてしまい、そのおかげで時間がかかってしょうがなかった。
しかし、そのおかげでいくつかの予測を立てることが出来た。
まず第1に結界の起点としてゆうきが使われているという可能性である。
確かに対象がゆうき1人ならわざわざ街全体を迷宮化するのではなく対象を起点に迷宮を作ってしまえばいい話だ。無駄な魔力消費も抑えられる。多分大した量の住民は被害にあっていないことだろう。
第2にゆうきはどこかへ誘導されているということ。まぁこれはなんとなく察していたが……。
第3にこの罠からは逃げる事ができないということである。だって自分と共に移動してるからね。
多分糸が出る起点みたいな付与魔法や魔法陣なんかがあるんだろうけどどこかに誘導しているという事ならば、まず間違いなく逃げられないだろう。
そして最後にこの迷宮自体に致死性はないという事だ。
多分糸の壁を作り出して敵を誘導する役目しか持っていないのだろう。でもウザいウザすぎる!
「くっそ、腹立つなぁ……この壁ぶっ壊してぇ……でも絶対アリシアとレベッカに怒られる……しかも羽塚さんのお腹が心配過ぎてとてもそんな事は……」
そろそろ街の建物を破壊して突き進もうかと悩んだが羽塚のお腹と中にいる人や建物が崩壊すると危険なのでギリギリ踏みとどまっていた。
そうしてイライラしながら歩いていると角から人影が飛び出してくる。
突然の事とイライラしていたので思わず銃を突きつけて叫ぶ。
「てめぇ!いい加減出せよ!こっから!」
「ひ、ひぃぃぃいいい!」
見るとそれはただのおじさんで突きつけられた銃を見た瞬間に怯えて尻餅を付いて顔を隠している。
「あ、すまない……」
思わず謝ってしまったがその瞬間におじさんがナイフを片手に飛び掛ってくる。
咄嗟に蹴りを繰り出すと運良く相手の脇腹に当たって相手は顔をしかめその場に1度立ち止まると、そのまま後ろに飛び退いて煙幕を張って逃げられてしまった。
「くそっ……またか……人が多すぎて見分けがつかないぞ……」
(イライラのピークを狙って部下を差し向けるとか相手はかなり頭いいんじゃないか?これはめんどくさい事になるな……)
そんなギリギリの精神状態のなかであることに気づく。
「ん?糸の間隔って言うのか?狭まってきてるような……?」
今までは迷路のようにいくつものルートがあったのだが、今はほぼ一本道と言っても過言ではない程に道が糸で閉ざされていた。
「……最終決戦ですかぁ?……なんで今更……まぁ、イライラしてたし絶対ぶっ飛ばす」
遂にイライラから開放されると考えると思わず走り出してそのまま誘いに乗る。
通路を走り抜けるとそこは建物に囲まれた広場のような場所で真ん中には噴水があり周りには街路樹のようなものが生えている。災害が起きた時の緊急避難所だろうか?
「こんな場所があったのか……ってヤバっ……」
見ると最初のおじさんを助けた黒ローブと全く同じ黒ローブを纏った人々が屋根の上や広場に通じている通路や広場にある木の影に待ち構えていた。
正確にはまだ準備をしていたがゆうきが来てしまい一瞬呆けたあと咄嗟に配置についた。という感じだったが。
ゆうきも咄嗟に近くの木の影に隠れる。
しばらく相手の様子を伺っていると1人だけ違う色のローブを纏った人が出てきて噴水の前に立つと、こちらへ向けて声をかけてくる。
「エラトマ、我々『フーガ』は貴様にランク戦を申し込む。嫌とは言わせないぞ!そちらから来ていいぞ、こないなら我々の方から仕掛けさせてもらう」
「そうだね、まさかここに来て5回もやり直させられるとは思わなかったよ……まぁ、魔力的に今回で最後にしたいからな、全力で行かせてもらうよ!」
「何を言ってるんだ?まぁいい、全員構えろ!」
ゆうきは既に相手の人数と配置を把握しているのであとはどう勝つかのみとなっている。
屋根の上に12人、噴水の裏に4人、木の影に2人1組で8人、各通路に2人1組で6人の合計30人となっているのだが、やはり1番のネックは屋根の上の敵だった。
放置していれば一方的に狙われてしまい、逆に先に倒しに行こうとすれば屋根に登ろうとする時点で下と上から挟み撃ちにされてゲームオーバーとなってしまった。
ならばと思いスキルを使って上の敵を引きずり下ろしたが距離が足りずに半分だけしか降ろすことが出来なかったうえに、残りの屋根の上の敵はそのスキルを警戒して常に離れて行動するようになり、下では敵の密度が上がり、弾幕は薄くなったものの依然として上から一方的に狙われる状況は打開できなかった。
さて、ではどうするか?答えは簡単、一切合切今後の事も考えず容赦のない攻撃をするだけである。
既に周回済みのこの地形は把握したし結界もあるのを確認しているので相手を殺すつもりでやっても問題ない。いや、あるにはある、今後ゆうきのスキルやステータスの発覚の恐れもあるし、何人かの腕やら足やらがぽぽぽぽーんしてしまうかもしれないが最早関係ない。
そうと決まれば行動は早かった。と言ってもやることは単純で、いつも通り銃とナイフを構えると木の影から飛び出して近くの木へと移る。
その際に走りながら何発か発砲して1人を結界外に弾き飛ばして2人に怪我を負わせた。
「攻撃を開始しろ!」
一拍遅れたが相手方もゆうきに攻撃を開始する。
(おおう、来たか一斉射撃ね。まぁ、我が能力の前にゴミクズに等しい、いや万全のカウンターの材料にしかならんのだがな!)
ゆうきの隠れている木に一斉に大量の魔法が飛んで着弾すると爆発してもくもくと土煙が上がる……はずだったのだが一切そんなことはなかった
『空間の門』によりその魔法を撃ったフーガ達が次々に爆発して、また屋根の上にいた仲間達も血を吐いて次々と結界外へと放り出されていく。
「な、なんだこれは……」
リーダーは何が起きたか分からず戦闘中にも関わらず独り言を零してしまう。
それもそのはず、攻撃したら突然仲間が倒れ始めたのだから。その実ゆうきの『空間の門』の能力に過ぎなかった。
数週間前にハルマとの実験中にたまたま発見したものだった。
ハルマが怒って撃った魔法がたまたま『空間の門』に当たった瞬間にハルマの服が爆発したのだった。
ハルマ曰く魔法が『空間の門』に当たった瞬間にその魔力が消え、代わりにハルマの服に感じたこともない魔力が現れ逃げ場を失い爆発したそうだ。
まさかこんな場所でいきなり実践運用するハメになるとは思わなかったが死ぬ事は無いだろうから概ね問題ないだろう。能力解析される心配はあるがしょうがない。
「残りは12、3人くらいかな?おやおや大変だねぇ。そんなに倒さなきゃいけないのか」
「クソ!全員魔法はやめろ!仕方ない、物理攻撃に頼れ!」
流石はリーダーだけあって素早い判断と指示能力を持っていた。しかし、この声質から女の子なんだろうか?もっと言葉遣いに気をつけようね。
そうして再び木の陰に隠れていると3人が剣やら槍やらを持って突撃して来る。
「おお、この動きは初めてだな。まぁ、問題なし!」
ゆうきは木を背にして相手が来るのを待ち、タイミングを読んで木を背にしたままナイフを逆手に持って後ろ側に突きつけ、拳銃を横に向けて発砲する。
突然出てきたナイフと拳銃に対応出来なかった2人は胸を刺され頭を撃たれ、頭を撃たれた剣士は結界外へと弾き出されて気を失い、刺された方は木の影から飛び出したゆうきに首根っこ掴まれて3人目の方へと蹴り飛ばされる。
3人目もそれに対応出来ず2人は抱き合うようにして倒れ込んでしまう。そこにゆうきが容赦なく弾丸を撃ち込む。
「はい、お疲れっと。あと何人だっけか」
木の陰に隠れ銃に弾をこめながら周囲を確認すると正面の噴水の影に3人と通路組4人が木の影に隠れ直しているのが確認できた。リーダーと思わしき人物は噴水の影にいる。
(ふむ、隠れて出てこなくなったな。そりゃあそうか、一瞬で20人近くやられたら警戒もするよなぁ。ゲームならボムとかで一掃できるんだけど……ま、やるようにやるか)
そう決心すると最後の魔力を使って光学迷彩を発動させ一気に外へと躍り出る。
光学迷彩を発動させているとはいえあくまで光をねじ曲げているだけなので自分のいる場所が少しボヤけてしまっているので相手もゆうきがなにか仕掛けてきたのは分かったようで銃やら弓矢やらで迎撃してくる。
しかし、やはり高速で動いている透明な物体を背景と見分けるのは難しかったのかなかなか思う様に弾や弓が当たらなかった。
「はっはっはっ!当たらなければどうということはない!」
ゆうきはスキルを使って平行移動しながら完全に調子に乗っていた。そしてそのまま相手の集団のど真ん中に思いっきり突っ込んで行き、光学迷彩を切る。
これで相手は味方を気にして迂闊な攻撃は出来なくなった。
「くっ……、3人ずつ対処に当たれ!ヒットアンドアウェイで戦うんだ!6手以上のやりとりは絶対にするな!」
やはりリーダーはかなり指揮に慣れているようで、独自の戦術論も持ち合わせているようだ。確かにこいつは強敵だな、とゆうきは改めて感じた。
「やるな!だが君たちじゃ僕には勝てないよ」
(あぁ〜やっとここまで来たぁ〜)
そう言うと先日やっと会得した無詠唱で周りに雷の弾をばらまいていく。
ばらまかれた弾はかなりの数があり、当たっても大したダメージは無いのだが当たった部分が痺れてうまく動けなくなってしまう。
そこからは最早殲滅戦だった、1人ずつ順番に撃ち抜いていき弾がきれればナイフで応戦、そしてリロードを行う。
そしてついに残るはリーダーだけとなった。
「やぁ、リーダー様。とうとう君だけになっちゃった訳だけどもどうするかな?」
「うるさい!黙れ!貴様が……貴様さえいなければ……」
「ん?なんの事?この際だから聞くけど君たちランク戦以外の目的があるんじゃないの?じゃ無かったら僕1人の為にこれだけの手間暇かけないよね?」
「……貴様、それは本気で言っているのか?」
当然その通りなのでそうだと答える。
「そりゃあ、まあ。分かりませんね」
「貴様だけは許さん!あれだけの人間の人生を奪っておいてそのような無責任な発言をするとはお前に人の上から去る理由はもはや充分だ!安心して負けろ!」
「ははっ、なんの事かほんとに分かんない」
その怒りを皮切りに相手が小太刀で斬りかかってくる。
脳天めがけて刀が振るわれるがゆうきはギリギリで体を逸らしてかわすが、振り下ろしきったところで刃を切り替えて振り上げてくる。
「うわっ……」
避けるのに必死で尻餅を着いてしまう、しかし相手は容赦なく刃を突き刺そうとしてくる。
後転の要領で刀を回避して前を見ると逆手に持たれた小太刀が地面に突き刺さっているのが見えた、次の瞬間には小太刀を軸にして蹴りを繰り出してくる。それを両腕を交差させて受け止める。
そのままお互い距離をとって構え直す、その瞬間を狙ってスキルで幅を詰めてナイフで切りかかるが剣で受け止められてしまう。
「すごい連撃と反射神経だね、流石に焦るよ。今のはリグルくんも破った技だったんだが……」
「あの程度の速度反応できない方が問題だ。さっさと黙ってやられろ」
「ならそれ相応の理由を教えて欲しいね。そもそも顔も出さずに「私、学校の生徒ですぅ!」とか言われても……ねぇ?せめてお顔見せてよ?」
「……それは出来ない。だが理由は話してやる。単純に貴様が上に立つにふさわしくない人間だと思ったからだ。それだけの才能を持ちながら恐ろしいまでの残虐性を持ち合わせている。貴様のせいで何人がハンターとしての人生を諦めたと思っている?12名だぞ!」
「おお!襲ってきた半分近くが学校辞めちゃったのか、でもそれ僕関係ないし襲ってきた奴が悪くない?僕の事自分より弱い、って判断して襲い掛かって挙句負けてプライトでも傷ついちゃったのかな?傑作だね!」
「違う!!彼らは貴様の拷問で心折られたせいで戦闘に対して恐怖心を持ってしまった。だから学校を辞めるしかなくなってしまったんだ!それを笑うのは許せない。やはり貴様は人の上にいるべき人間ではない」
その物言いと言うか主張にゆうきは流石に怒りをあらわにした。
「うるせぇな……さっきから人の上にどーたらこーたら。そもそもなんでAクラスだからって人間的にも上。みたいな価値観持ち合わせてるんだよ?そこが根本的に違うだろ?あぁ?どうだよ?」
「いや、それは……しかし、実際そうだろう?Aクラスの人間は才能でいえば我々を圧倒している。ならば人間的にも上と言えるではないか」
その主張に流石のゆうきも本気でキレてしまった。
「そこもだよ……才能?あいにく俺はそんなもの持ち合わせちゃいないさ。何度も死にかけてやっと辿り着いた、それは茨の道だったよ。それをお前みたいな下っ端は才能だなんだと簡単に一括りにしやがって……んな事言ってんならスキルのひとつでも覚えてみろよ!」
そう叫んでゆうきは相手に少しずつ近づく。
相手はと言うと、ゆうきの突然の行動とブチギレた事により一瞬言葉に詰まるが、それでもなお自己主張を続け、またスキルを使ったのかゆうきの周りが爆発し始めるがゆうきには1発も当たる気配がなかった。
そしてその能力を見て怒りとは別にある、冷静な思考が全てを察していた。
「た、確かにそうかもしれない。だがしかしそうだとしても退学していった人達はどうなる?彼らの人生はお前によって閉ざされたんだぞ!?」
しかし、それでもゆうきは少しずつ近づきながら反論する。
ゆうきの周りは依然として爆発が起こるが全く当たる素振りは無かった。
「知るか、たかがハンターになれなかったぐらいで人生終了ってか?そもそも俺にやられたぐらいで心的外傷後ストレス障害とやらになるぐらいならハンターになって即死だよ。むしろ命1つ拾ったと思ってほしいね」
「ふざけるな!そんな自己中心的な主張が通るわけがない!」
最早フーガのリーダーはゆうきが近づく事を止めるのも忘れる程に、追い詰められて焦っていた。
そしてそれでもゆうきは止まらない。
「自己中心的?お前がよく言うよ……ほんとに笑える」
その一言を最後に遂にフーガのリーダーの目の前に立ち塞がった。相手は腰が抜けたのか地べたに座り込んでしまう。
ゆうきは相手のフードに手をかけるとさっきとは打って変わって優しい声をかける。
「いいか、そんな理屈が通ると思うなよ。”ルーナ”」
小太刀を出したあたりで少し察してはいたが最後の空間が突如爆発し始めたので確信へと変わっていた。
ルーナはと言うと何も言わずにただ静かに下を向いて俯いていた。
今回出てきた敵の名前『フーガ』これは曲名?なんですかね。
意味は遁走曲で、遁走とは逃げ惑う様子って意味らしいです。
この前携帯いじってたらいつの間にか楽曲データがあったのを丁度良かったので名前を拝借しました。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。




