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運命の分岐点  作者: 溝端翔
〇〇編
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8/10

6-B

 携帯に映し出された見慣れない電話番号。彼は疑問に思った。

 ふと彼女の顔が頭によぎる。

 しかしその可能性を頭の中で振り払う。

 彼女はとても常識ある人だ。いきなり電話をかけて来るわけが無い。そう思いながらも「とりあえず出よう」彼はそう思い至り電話にでた。

 ツーという音が耳に入る。

「もしもし?」

 返事は無く、電話の向こうで何か動く音が聞こえるだけだった。

「あの、多分間違い電話だと思うんですけど、あの、聞いてますか?」

 耳に当てている高性能なハコの中は、静まり返っていて返事が無い。

 耳から離しそのハコを見つめる。

 もう一度耳に当て再度呼びかけた。

「もしもし?切りますよ?」

 そう言った時だった。

「も、もしもし、○○さんですか?良かった、出てくれた。出てくれなかったらどうしようかと思いました。」

 声、聞き覚えのある声、声の主は彼女だった。

「どうしたの?何があったの?」

「なんでも無いですよ、ただちょっと○○さんに伝えたいことがあったから。」

 その返事が嘘だと、彼はすぐにわかった。

「じゃあ」

なぜなら、

「どうして」

彼女は、

「泣いてるの?」

「泣いてなんか無いですよ」

涙声で彼女は否定する。

「そんな事よりも、伝えたいことがあるんです」

 そんな事よりも。

 彼女は自分の悲しみよりも、もっと大切なことがあると言わんばかりに、言葉を続ける。

「あの、ですね、私、○○さんの事が好きでした」

 過去形。

「本当、なんでもっと早く言えなかったんですかね、もう会えないのに」

「どうして、何かあったの?家でなんかあったの??」

「違います、私、だめ、あの。店長に、何も言わずに辞めてごめんなさいって言っといてもらえますか?」

 こんな時にも、彼女は人のことを考える。僕に話しかけてくれたように。

 彼女は震えていた。

「ありがとうございます、あ、あの、大好きでした。もう会えないのが悲しいです。ここ、どこ」

 何か鈍い音と共に勢いよく電話が切れる。

「ここ、どこ」と言う彼女のセリフが頭から離れない。

 箱の中の静寂、何かの動く音、震える彼女の声。何か引っかかる。

 何か。何処かで聞いたような。気がする。


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