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運命の分岐点  作者: 溝端翔
〇〇編
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6/10

4-B

 頭の中に同じ音が繰り返し響く。この音の正体を僕は知っていた。

 うるさいなぁ。心の中でそうつぶやきながら携帯のアラームを止める。画面には『15:01』と表示されている。特に起きてやることもないが、この時間から起きていないと仕事が辛い。

 とりあえず予定にあった風呂に入る準備をした。

 湯船を沸かしている間に、洗濯物を洗濯機に放り込む。

「そう言えば、カバンにシャツ入れてたっけ」

 カバンを持ち上げた瞬間、足元に何かが転がってきた。

「これ、昨日のストラップ...」

 拾い上げ見つめてみる。

 何度見ても子供がつけるような、可愛らしいストラップだった。

 自分の携帯を取り出し並べて見る。

 5分位見つめていた気がする。

「せっかく買ったから」

 僕はそのストラップを、携帯のイヤホンジャックに差し込んだ。

「やっぱ僕には似合わないかな」

 でも「こんなもので損した」何て思いたく無い。

「ま、そのうち慣れるよ」

 と適当に自分を説得し、「お風呂が沸きました♪」と言う通知音に、「はいはい」といつも通り返事をしながら風呂場へ向かった。

 脱いだ服を洗濯機に入れ作動させる。

「え?沸いてないし...」

 浴槽には水が張られていた。

「服、入れちゃったしなぁ...でもこっちはお湯は出るみたいだし、こっちからお湯は張ろうかな」

 浴槽の水を抜きシャワーを突っ込む。そのまま勢い良くお湯を出し蓋を閉めた。

 腰にタオルを巻いてリビングに戻る。

 こんな格好で動きたく無かったので僕はニュースをつけた。


『最近女子高生の失踪事件多いですねぇ...』

『それもどんどん場所を移して行ってるみたいで、もしかすると同一人物の犯行かもしれません。女性の皆様は十分に注意をしてください。続いては...』


「失踪か...そういえば◻︎◻︎さん高校生だっけ...」

 そんなことを呟きながら、たわいないニュースを眺める。パンダの赤ちゃんや、政治、どれも特に興味は無かった。

「そろそろ溜まったかな」

 予定より30分遅れで風呂に入る。

 別に急いでいるわけでは無かったのでゆっくりと昨日の疲れを癒した。

 1時間くらい入っていただろうか。

 髪を乾かしたり、片付けをしたり、そうこうしているうちにお腹が減る。

 食事は1日1回しか摂っていなかった。お金が勿体無いのと、買いに行くのが面倒だったからだ。今はもうこの生活に慣れたのか、この時間にしかお腹が減らなくなっていた。

「そろそろ買いに行くか...ってあれ?財布どこやったっけ?」

 さっき片付けた時に何処かにおいたのだろう。机の上にあったはずの財布が姿を消していた。

 カバンの中も確認したが見当たらない。

 30分ほど探していただろうか、今更ポケットに違和感を覚えた。

「あった...何か散々だな今日は」

 そんなことを思いながら僕はいつものスーパーに足を運んだ。

 今日も彼女はそこにいた。

 店に入ると彼女は手を振ってくれる。僕はそれに対して手を振りかえし、いつも通り、このスーパーの安い手作り弁当を手に取りそのままレジに向かう。

「今日はちょっと遅いんですね」

 そう言いながら彼女は弁当を温め始める。

 いつもと違うのは時間だけ。そう思っていた。

「あっ!そうだ○○さん!良かったら連絡先交換しませんか?本当に彼女いないなら良いですよね!!今丁度店長いないんです、携帯出してください!」

 そう言って彼女は自分の携帯を取り出した。

 糸の弾ける音が耳に入ってきた。

 どうやら彼女が付けていた携帯のストラップが切れたようだった。

「あっ、切れちゃった...お気に入りだったのに...あ、連絡先!...可愛いストラップですね!!」

 交換位なら、と思い携帯を取り出していたのだが、彼女は、さっき携帯に付けたストラップを見て目を輝かせていた。

 連絡先そっちのけで「可愛い可愛い」と呟いていたので、僕は「可愛いの好きなの?」と尋ねる。

「だいっっすきです!!」

 小さな子供のような笑顔でそう答える彼女に、

「あげようか??僕、別にいらないし」

 と...僕は何を言っているのだろう。関わっちゃいけない。彼女が不幸になってしまう。

「え!!良いんですか!?」

「良いよ、いつものお礼」

 あげるだけ、連絡先を交換するだけなら大丈夫かもしれない。

「ありがとうございます!あ、連絡先も!また、連絡しますね!もう来ちゃダメですよー!!」

「またね」

 彼女の無邪気な笑顔に見送られながら僕は店を出る。

 連絡先位なら大丈夫...ストラップだって捨てたようなもんだ。そんな事を考えながら、ふとガチャガチャに目をやる。昨日のガチャガチャはもう撤去されていた。

「運命か...もしも、変えることが出来るなら、変えたいな」

 ◻︎◻︎さんともっと仲良くなりたい、そう思いながら僕は帰路についた。

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