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運命の分岐点  作者: 溝端翔
〇〇編
5/10

終-A

「ただいま」

 彼はその言葉を言わずに扉を開けて中へ入った。

 靴を脱ぎ散らかしそのまま定位置につく。今日はいつも通りテレビを付けニュースが流れている中で弁当に手を付けた。


『昨夜△△市で女子高生が失踪する事件が発生しました。最初の失踪事件とは距離があるものの、前回、失踪事件があった場所から近いと言う事もあり、警察は同一犯の可能性があると見て捜査を進めている模様です。』


「へー、失踪かー。最近多いよな、このニュース」

 食べながら独り言を呟く。

 ニュースなんてものは所詮、制作側の意図でその事件を取り上げる。普段から転がっている物を最近増えたように取り上げるわけで、結局は増えたわけでは無いのだ。彼はそんな事を考えながら、テレビに向かって話しかける。

「ん、ごちそうさま」

 そう言って水を1杯飲み干す。

 弁当のゴミを入っていた袋に戻そうとして、思い出す。と言うよりも見つけたと言う方が正しいかもしれない。

「あっ、これ」

 袋の中には彼女が入れた連絡先の書かれた紙切れが入っていた。

 その紙を手に取り、彼は見つめる。右へ左へ上へ下へ首を傾げ、時たま唸り声をあげながら考える。

 30分ほどたっただろうか、唸り声は大きな意思に変わった。

「やっぱりダメだ。もしも◻︎◻︎さんに何かあったら、それこそ、取り返しがつかなくなる。明日、ちゃんと謝ろう。この紙切れは、ただの紙切れなんだ」

 彼は自分に言い聞かせるように、独りだけのこの部屋には不相応な、大きな声でそう言い放った。

「運命なんてそんな簡単には変わらないんだ」

 連絡先の書かれた紙は小さく丸められゴミ箱に捨てられた。

 この日、彼は用済みになった旧型のロボットのような雰囲気を漂わせながら、それこそ、ロボットのように機械的に仕事を終えて眠りについた。

 ピピピ

 機械が起きるように彼を催促する。

 うるさく鳴り響く携帯を止めて、風呂の準備をする。

 彼は考え事をしているようだった。

「どうやって謝ろう。どうすれば自然に謝れるだろう。傷つけてしまうかもしれない。絶対傷つけてしまう。どうしよう。どうやって謝ればいいだろう」

 そんな事を考えながら動いているうちにいつもの時間がやってくる。

「考えたけど良い方法なんか見つからないよな。普通に謝ろう」

 その言葉は部屋の隅に吸収されるかのように悲しく消えていく。

 彼はいつもの道を通ってスーパーに向う。

 いつもと違う雰囲気。世界が今日、終わってしまう。そんな気がしながら、終わってしまえば楽になれるのに、そんな事を願いながら彼は歩く。

 しかしそんな彼の願いは叶うことなく、世界が終わる前にスーパーについてしまう。

「よし!」

 彼は決意し、スーパーに入る。しかし彼女の姿は見当たらず、本来立っているはずのレジには、店長のおばさんが立っていた。

 店長は彼に気づいたようで、駆け寄ってこう告げる。

「あっ!○○さん!昨日ね、突然◻︎◻︎ちゃんから電話があってね、やめるって。◻︎◻︎ちゃん泣いてたから、本当に大変な事情があったみたい。でね、連絡、ちゃんとしてください、待ってます。ってあなたに伝えて下さいって。◻︎◻︎ちゃん、いつもあなたの事話してたから、ちゃんと連絡してあげてね。ちゃんと連絡してあげるなら、お弁当売ってあげる」

それを聞いて、

「僕と関わったから。仲良くなったからだ。これ以上不幸にしちゃいけない」

彼はそう思い、

「連絡は絶対にしない」

そう決意した。

「もちろんじゃ無いですか!連絡ちゃんとしますよ!ここのお弁当買えないと困りますから」

 彼は嘘をついた。店長のおばさんにも、彼女にも、自分にも。

 お弁当を買い家に帰る。

「◻︎◻︎さんの事は忘れよう。いつもの事じゃ無いか。これが僕の運命なんだ」

 彼は家に着くとテレビを付けて弁当を食べる。


『昨夜、またも失踪事件が発生しました。失踪した人物は××市の女子高生だと言うことです。狙われているのは女子高生ばかりで、全ての事件には関連性があると見て、警察は未だ捜査を続けている模様です。』


「また失踪のニュースか、ってここの近くだ」

 そんな事を呟きながら彼は切り替える。いつもの不幸な人生に。不幸な運命に。

 このニュースすらも、その運命の一部だとも知らずに。

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