第3話「主役のパートナー」
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Lv.1
名前:スイル・エルド
種族:人族
HP:D
MP:S
筋力(STR):G
耐久(VIT):F
敏捷(AGI):D
器用(DEX):B
知力(INT):S
運(LUK):B
スキル:白魔法
異名:
使命: 伝説の魔法使い
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「うわぁー!なにこれ!すごーい!」
「ま、まじかよ……」
石板に、スイルのステータスが表示される。
俺が予想していた能力値より、大幅に違っていた。
この世界では、能力値がG〜Sの
アルファベットでランク分けされる。
ここは、"デーモンズクエスト"だ。
Sランクは才能があっても、
中々辿り付けない境地である。
レベルが上がると能力値が上がる。
基本的に100レベルまで上げても、Sランクまで上がることは滅多にない。
Sランクの能力値が2つあるのは、主人公である勇者くらいだ。
しかも、スイルはレベル1。
世界最強の魔法使いになるかもしれない……
「お、おい!スイル!お前……」
「ふふん!どう?お兄ちゃん!」
「スイルやったなぁ!!父ちゃん嬉しいぞぉ!!」
「パパ!スイル強いの?すごい魔法使いになれる?」
「あぁ!必ずなる!なんて言ったって"伝説の魔法使い"になる使命があるからな!」
ソイルはスイルを持ち上げ、自慢の娘と言わんばかりに目を輝かす。
続いて俺に視線を向ける。
眩しすぎる視線に少し目を背けたくなる。
転生の中間地点、"狭間"でのステータスは"#N/A"
しかも、スキルは"異名コレクター"。
転生してから何度か使用してみたが、なにも変わらない。
"異名"……
確かに"デーモンズクエスト"では、
第2のスキルになる程の強力な要素だ。
だが、"異名"は物語の終盤で追加される要素。
おそらく俺のレベルや年齢的に、今は物語序盤。
まだ、意味を持たないゴミスキルである。
「では、次はマオくん!こちらまで……」
「は、はい!」
「お兄ちゃん!頑張って!」
スイルと入れ替わり俺が石板の前に立つ。
スイルの応援は、むしろ俺のプレッシャーを加速させる。
転生してから7年も経っているんだ。
しかも、父ちゃんにも負けないパワーがある。
#N/Aだけはやめてくれ……
石板が光り、文字が刻まれる。
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Lv.#N/A
名前:マオ・ノクス
種族:!@#?
HP:#N/A
MP:#N/A
筋力(STR):#N/A
耐久(VIT):#N/A
敏捷(AGI):#N/A
器用(DEX):#N/A
知力(INT):#N/A
運(LUK):#N/A
スキル:異名コレクター
異名:
使命:勇者殺し
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「…………」
現場が凍りつくのがわかる。
この空気感に関しては、受け止めざるを得ない。
"狭間"の時とステータス変わらずかよ……
しかも、今回は種族が文字化けしてるよ。
俺種族なんだっけ……
てか、そもそも#N/Aて強いのか?
同年代より確実にパワーがあることは、父ちゃんとの練習で自覚している。
カンストしてるってことか?
だとしても俺自身、全ステータスカンストの感覚は無い。
「お、おい、マオ……お前……」
父ちゃんが言葉を失うのも無理はない。
しかも、なんだよ俺の使命……
その時、7年前の記憶がフラッシュバックする。
"狭間"で出会ったとんがり帽子を被った、紫髪の少女。
天使どもに捕らえられたにも関わらず、俺に訴えてきた言葉。
「勇者を殺せ……」
俺が勇者を殺す。
まぁ、俺にこの第2の人生をくれた、人生の恩人だ。
叶えてやりたいが、勇者の居場所も分からない。
「マオ……お前の使命……」
父ちゃんが石板から、俺に目線を切り替える。
目を見開き、驚嘆の顔。
少しの怒りが混じっているのが分かった。
司祭の話を遮った時のオーラに似ている。
「と、父ちゃん……俺もなぜだか——」
——ドーーーーーン!!
途端に、ものすごい爆発音が聞こえた。
爆風と、地鳴りがする。
今にも崩れそうだった教会は、トドメを刺されたのか崩れだす。
瓦礫や岩が俺たちを襲う。
「な、なんだ!?」
「爆発……?」
柱は倒れ、天井の屋根が迫る。
「おい!スイル、マオ!こっちに来い!」
俺に自身を防ぐ術はない。
俺はソイルの言葉通り、駆け寄る。
「おい!スイルー!!スイルはどこだ!!」
「パパー!助けてぇー!!」
スイルの声がする方向に目線をやる。
そこには、スイルと司祭がいた。
司祭はスイルの首に腕をかけ、強引に拘束している。
その様は、人質をとった強盗と呼ぶのが似合っていた。
「おい!司祭!お前なにしてる!!」
「す、すみません、ソイル様……
私にはこうすることしか……」
「スイルゥゥゥゥー!!!」
「パパァァァァ!!」
司祭はスイルを強引に連れて行き、教会の裏口へ向かう。
それを阻止しようと走り出すが、とうとう屋根が俺たち目掛け突進する。
やべぇー!これじゃ生き埋めだぞ!
——ドゴゴォー!
教会は完全に崩れ、視界が真っ暗になる。
なぜか、身体は心地よい暖かい空気に包まれている。
あぁ、死んだ……
転生してから7年。
早いよな……まだ、冒険にも出てないぞ?
転生しても俺の人生なんて……
その時、頭上に一筋の光が入りその隙間から空が見える。
「おい!マオ!無事か!?」
ソイルの声が聞こえる。
言葉と共に、視界は満点の青空へと変わる。
「と、父ちゃん!?」
「マオ、怪我はないか?」
「う、うん……なんともない……」
瓦礫の生き埋めになったのにも関わらず、俺は傷一つなかった。
確実に死んだと思った……
父ちゃんが守ってくれたのか?
ソイルの身体も確認するが俺と同様、傷一つ無い。
「無事でよかった!とりあえず、外に出よう!」
安堵の表情を浮かべ俺の頭を撫でる。
ソイルが瓦礫を押し除け、俺とソイルは瓦礫の外に這い出る。
「はっはっはっはぁー!!よぉーソイル!
相変わらずお前は硬ぇな!」
悪意を含んだ笑い声が響き渡る。
声の方角には、スイルを拘束している司祭。
その一歩前には金の甲冑を身に纏った、白髪の男が立っていた。
声の正体は、この男であることは分かる。
「パパァァァ!助けて!パパっ!」
「おいおい!うるっせぇーな!
おい、お前こいつ黙らせろ!」
「は、はい!勇者様っ!」
「お、お前は…………なんで……
スイル……ちょっと待ってろよ。俺が今助けるからな……」
泣き喚くスイルの声、ソイルの拳は強く握られ震えている。
その手からは血が滲む。
勇者様……?
あいつが例の勇者なのか……
勇者にしては、悪いオーラしか感じない。
「おーい!ソイル!お前の小娘、伝説の魔法使いだって?」
「だったらなんだよ!お前に関係ねぇーだろ!
良いからスイルを返せ!」
「いや、ダメだね!こいつは返さねぇよ!
こいつは、俺のレベ上げに必要なんだよ」
「レベ上げ……?
まだそんなものにこだわってんのか!!
魔王はもう死んだんだぞ!」
「だからだよ!魔王を殺しちまったからだよ!」
ソイルの顔は、怒りでひしゃげている。
2人の会話は中々、俺の理解できるまで噛み砕かれない。
何かを隠すかのような、曖昧な言い回しである。
勇者と父ちゃんは知り合いっぽいな……
いや、知り合いってよりかは、親友だったかのような口ぶりだ。
一体どんな関係なんだこの2人は……
確認しようと隣のソイルに目をやる。
そこにソイルの姿が無く、勇者めがけて飛び出していた。
「どうしても返さねえって言うんなら、
力づくで取り返してやるよ!」
ソイルは地面を蹴り飛ばし、勇者に急接近する。
拳を握った右腕を大きく引き、最大限のパンチを出す構えであった。
は、速い……!
こんな父ちゃん初めてだ……
「歯ぁ食いしばれよ!!"盾にして矛と成す"!!」
ソイルを覆うように発動した、シールドが瞬時に手に集中する。
脚力で生み出した慣性とスキルで強化した超硬質の拳が勇者の顔面を捉える。
勇者は顔面を先頭に吹き飛ぶ。
え、えぇ!
え、なにあの威力……。
父ちゃんってこんな強いの?
初めて出会った時から凄そうとは思ってたけど、強すぎない?
相手、勇者だよ?
「ふぅー……
おい、司祭……うちのスイルを返してくれねぇーか?」
「は、はい!
お返しします!だから命だけはぁ!」
司祭は怯えたように、尻餅をつき後退りする。
司祭から解放されたスイルは、泣きながらソイルに擦り寄る。
「パパァー!怖かったよぉ〜……」
「怖い思いさせてすまなかった!
スイル!怪我はないか?」
「う、うん……パパ、ありがとう……」
「無事でよかった!!もう心配いらな……グッ!」
スイルを救出し抱きしめるソイル。
感動の再会は束の間、ソイルの右脇腹から血が滲む。
背後には勇者の姿。
ソイルの背中目掛けて剣を突き刺していた。
「はっはっはっはー!あんな硬いだけのパンチで俺を倒せたと思ったのか?脳筋野郎!」
「娘との……感動の……再会なんだ……グッ!
邪魔……すんな……!はぁ……はぁ……」
「パパァァー!!血が!血が!!」
「父ちゃん!!」
———
【あとがき】
本作を手に取っていただき、本当にありがとうございます。
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これからも物語を大切に紡いでいきます。
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