第13話「ジョンソン・ジェームス殺害事件」
「ジョンソン……くん……」
シーカはジョンソンの首元に手を置く。
数秒間、目を瞑る。
目を開き、結果を報告する。
「死んでいる……」
その言葉が一気に現場の空気を重くした。
1番に口を開き始めたのはカフラであった。
「ジョンソンが死んだのか……?
なんで……?つい、さっきまで元気だったじゃないか!」
「シ、シャドウだ……
怪盗シャドウがやったんだ!!
現にローズジェムも無くなっている!!」
トスティはローズジェムを展示していたガラス張りのボックスを指差す。
シーカの目は少し潤っていた。
目元の筋肉は震えている。
「か、怪盗シャドウ……
ジョンソンくんが殺された……?」
マオはこの事件の不可解な点に気がついた。
ジョンソンが怪盗シャドウに殺された?
あの一瞬で……?
ローズジェムを盗んだのならジョンソンを殺す必要はあったのか?
そもそも、どうやって……?
「ね、ねぇ、シーカ。
確か魔力の匂いを嗅ぎ分けれるんだよね?」
シーカは目を見開き動かない。
「シーカ?どうしたんだ?」
声が届いたのか我に返ったようにマオに視線を向ける。
「あ、あぁ……マオ……
どうしたんだ……?」
目からは一筋の涙が流れていた。
「シーカ……」
マオはシーカの涙にこれ以上言葉が出なかった。
硬直した現場を動かすようにトスティが話を進める。
「怪盗シャドウめ……
シーカちゃん、ここは私に任せてお家に戻ろう?ね?」
トスティはシーカの背中を押し帰宅を促す。
そんなトスティを見て疑問をぶつけるカフラ。
「なぁ、まだその怪盗シャドウってやつが殺したって分かんなくないか?
宝石を奪えたんだったらジョンソンを殺す必要はないだろ?
なぁ、シーカ。
前みたいに推理ってやつで犯人を見つけてくれよ!」
カフラの目はまっすぐシーカを向いていた。
シーカは帽子を深く被り直し、パイプを咥える。
ポワポワとシャボン玉が宙を舞う。
「確かに……
さすが、私の助手だ……カフラくん!」
シーカは顔をあげ、シャボン玉を吹かした。
そして、帽子の唾を持ち宣言する。
「この事件、名探偵"シーカ・ホームズ"がズバリっ!解明してやろう!」
意図したのかは分からないがカフラの一言でシーカは名探偵として復活した。
「【ディテクティブスキルcase.1: |三理合わさりて真理となる《クルード》】!!」
シーカはメガネをくいっとあげ、スキルを詠唱した。
「まず……
殺害場所はここ、ブリッシュミュージアム内のローズジェム展示室。」
シーカの説明と同時に一枚のカードが出現した。
そこには、展示室のイラストとその下に"ローズジェム展示室"と記載されている。
構わず推理を続けるシーカ。
「肝心の殺害方法だが……
"ジョンソン・ジェームス"の身体に目立った外傷は見られない。
つまり、スキルによる殺害か魔法による殺害。
この部屋に入ってから現在まで魔力の匂いはしていない……
つまり……これか……」
シーカは1枚のカードを手に取る。
「そして、この部屋にいたのは、私とジョンソンくん、マオとカフラくん、そして、トスティさんと警備員の2名……
先ほどカフラくんが言った通り、怪盗シャドウがリスクを冒してまで殺人をする可能性は極めて低い。
ズバリっ!この6人の中に、"ジョンソン・ジェームス"を殺害した犯人がいる!」
シーカの前に6枚のカードが出現した。
カードにはこの現場にいる6人の顔写真と名前が記載されている。
「だ、だれがそんなこと……」
トスティは分かりやすく驚く。
シーカは続けて推理を続ける。
「マオは異名コレクター、カフラくんは錬成術、トスティさんは交渉術……
今、この3名のスキルを私は把握済みだ。
この3名の中で外傷のない殺害が可能な人物はいない。
つまり、犯人は警備員の"アレク・ペトロ"さん、"ルーラン・シロフ"さんあなた方、2名の可能性が高い!」
警備員のアレクとルーランは顔を歪め反論する。
「お、俺たちはなにもしてないぞ……!」
「そ、そうだ……
怪盗シャドウから宝石を守るために警備をしていただけだ!」
シーカはニヤリと笑みを浮かべる。
メガネをクイっとあげ、アレクの手を指差す。
「では、その手袋を取っていただいてもいいですか?」
「い、いいけど何にも無いぞ……?」
アレクはすんなり手袋を取り手のひらを見せる。
「な、なぁ?なにも無いだろ?」
「待ってください……そのままで……」
アレクはすぐさま手袋をつけようとするとシーカが制止する。
シーカはパイプを咥え、アレク目がけて大量のシャボン玉を吹き出す。
「お、おいなにするんだ!?」
アレクは大量のシャボン玉を手で振り払う。
その様を見て、異様なシャボン玉の挙動にマオが気づく。
「な、なんだあれ……
あの人が触れた瞬間にシャボン玉が消えていく……
割れたというより、消滅した……?」
「そう、その通りだマオ。
"アレク・ペトロ"さん……
あなたのスキルは触れたモノの圧力を変化させるスキル……
違いますか?」
「そ、そうだ……!
だけど、どうやって殺害なんかできるってんだ!」
シーカはニヤリと笑いメガネをあげる。
「"真空"なら作れますよね?」
「なんだ?その、しんくう?てやつは」
カフラは聞き慣れない単語に質問する。
「"真空"とは低い圧力の気体で満たされた空間のこと……
シャボン玉の挙動から"アレク・ペトロ"さんの手は、今まさにその"真空"になっている。
そして、その手で人間の呼吸器に触れると……」
「外傷がなく殺害できる……」
マオは理解が追いついたようだ。
アレクが必死に弁明をする。
「そ、そんな……
殺されたあの男と俺じゃ少し距離があるだろ?
部屋が暗くなった一瞬で殺害できるわけ……」
「それができるんだよ……
"ローラン・シロフ"さん、あなたのスキルを使えばね……
そろそろ、種明かしとしようか……この事件のカラクリをね。」
シーカはカードを3枚手に持ち、ニヤリと笑った。
「犯人は日が沈み、街全体の街灯が点灯するほんの数秒で犯行を行なった。
殺害方法はスキルによる窒息死。
犯人は2人、1人はスキルで真空を作り出し"ジョンソン・ジェームス"を殺害。
もう1人は、身体能力を向上させるスキルを使い数秒での犯行を可能にした……
ズバリっ!
犯人は"アレク・ペトロ"さん、"ローラン・シロフ"さん……あなたたちだ!!」
シーカが宣言すると同時に3枚のカードが光り出す。
それぞれカードにはアレクとローラン、"窒息死"が書かれていた。




