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海の覇者  作者: リック
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第16話 元帥

今回は土曜に上げれましたよ


「異界からの訪問者」、婦人は確かにそう言った。

彼女は自分が異世界から来た人間であることを知っている?


「…元帥?何をおっしゃっているんですか?」


優香さんが尋ねる。やはりこの人が元帥の様だ。

元帥は優香さんの質問に答えず、こちらに視線を向けた状態のままの何も喋らない、こちらの返答を待っているのだろうか?

元帥である婦人は切れ目、髪は基本黒だが少し茶も交じっており、後ろでお団子にしている。

軍服を着ており基本は優香さんと同じだが袖や肩、胸に付けている階級章や勲章が優香さんのより豪華だったり多い。


元帥と目を合わせているが彼女の眼力は鋭い。さすが海軍のトップを務めていることはある。

しかしそんなトップが「異界からの訪問者」などと言うだろうか。ま、今言っていたが…。

もしかしたらかまをかけているのかもしれないのでここはとぼけた方がいいだろう。


「何のことですか?」


すると元帥の目はさらに鋭くなり。


「とぼけても無駄ですよ?あなたが違う世界から来ていることは分かっているのですから」


ドクン……と、優香さんの時とは比べ物にならない位の心臓の音が聴こえ、冷や汗が噴き出す。

コノヒトハ、シッテイル

元帥が言い終わると同時に御影に搭載されている機銃や高角砲が動き出し元帥に照準を合わせる。アウラが動かしたらしい。

これには元帥そして優香さんは驚き身構える。

砲口を向けられている元帥はこちらを睨む。


「どういうつもりですか?」


「どうもこうも、見ての通りでしょう」


「脅すつもりで?」


「脅されているのはこちら側だと思うのですが?それに自分が指示したわけではありません」


自分はそう言いながらブランケットから腕を出し、あらかじめ持っていた拳銃を出す。それを見た瞬間周りの空気は張り詰めた。

自分はそんな空気に構わず拳銃を自分の頭へ向け引き金に指をかける。

当たり前だが二人は驚いて固まっていが、すぐに元帥は立ち直った。


「そんなことをして何の意味があるのですか?」


「まぁ牽制でしょうか」


「牽制?」


「えぇ。どうもあなたの他に隠れている方々がいらっしゃるようなので、自分を人質にした牽制?です」


このドックに入港した時から反応はあり、すぐにアウラが潜んでいる場所を見つけ、教えてくれていた。多分自分を捕縛する為か御影を制圧するために潜ませているのだろう。

彼女達の目的は御影。御影を手に入れるため持ち主である自分を捕縛などをして利用するつもりなのだろう。

だから自分は、自分自身を人質として拳銃を自分に向け、御影に戻ろうとした。

後ろには優香さんがいるが、まぁ彼女はあまり知らないみたいだし逃がしてくれるだろう。逃がしてくれるといいなぁ。


すると、ここで初めて元帥の表情が変わった。

目を少し見開いたが、すぐに先程より鋭い目になりこちらを見る。


「何人?」


「十人ほどでしょう?」


「場所は?」


何故か元帥が潜んでいる場所を尋ねてきたので素直に話す。


「優香!!」「承知!」


説明し終わると同時に元帥は優香さんの名前を呼ぶ。

取り押さえると思い、引き金を引こうとすると何かが通り過ぎる風を感じたと同時に「大丈夫」と声が聞こえたと思ったら、その後、何か苦しむような声が先程自分が言った場所辺から聞こえてくる。

一分もしないうちに元帥の後ろから優香さんが戻ってきた。


「ご苦労様」


「別にいいんだけど、説明してくれる?母様?」


「母…様?」


優香さんに母様と呼ばれる元帥…えっ?そういう関係?

自分が混乱していると、元帥…優香さんの母親は苦笑いをしながら自己紹介をした。


「改めて。初めまして、異界からの訪問者。私は神護弥恵佳(やえか)。優香の母親です」


頭の中がただいま混乱中です。少々お待ちください。

そして導き出した答えは…

自分は溜息をつき、アウラに砲口を向けるのをやめさせ、拳銃を下ろセイフティをロックし元帥の方へ床を滑らせるように捨て、手を上げる。降伏ですよ。


「降伏するのですか?」


「ええ、まぁ。優香さんには敵いそうもないですし。あと話を聞いてからでも遅くはないかな、と」


「無理やり拘束するとは思わないので?」


「そりゃ考えましたよ、周りに潜んでいたので。でもあなたの味方という訳でもなさそうでしたし、優香さんだけでも出来そうですしね。…自分に出来る事は如何に早く自害できるかでしょう。でも自分はまだ死にたくはなので、ここで話し合いをしようかと。で、どこで話します?」


「…そう、それはありがたいです。そうですね……貴方の船でもよろしいですか?」


「………わかりました」


弥恵佳さんは「ごめんなさいね」と苦笑いをしながら謝る。自分の顔を見て心情を読んだのだろう。

今、自分の顔は苦虫を噛み潰したような顔になているはずだ。

なぜ自分が異世界から来ているのかを知っている人間をホイホイと自分の家ともいえる船に招き入れなければならん。

普通、このドックか他の部屋に彼女が案内するべきだろうが、彼女がそんなことに気付かないわけがない。多分落ち着いて話が出来る場所が無いのだろう、だから御影で話させてほしいと言ってきたのだ。



というわけで二人を御影へ招き入れる。


中に入ると弥恵佳さんは驚いている様子で後ろから付いて来ており、優香さんは「わかるわ~」なんて言いながら頷いて弥恵佳さんの後ろから付いて来ていた。。

二人を司令部公室へと案内し、自分は飲み物とお茶請けとして暇な時に作ったレアチーズケーキを持って行く。

お茶請けが出てくるとは思わなかったのか平静だった弥恵佳さんは少し眉を動かし、優香さんはお茶請けに目が釘づけになって涎を垂らしている。そんな状態の自分の娘を弥恵佳さんは叩いた。


二人は窓側の席に座っており、自分から見て左に優香さん、右に弥恵佳さん、で座っており、自分は二人の間くらいの正面に座る。


「どうぞ」


お茶請けを薦めると、優香さんは何の戸惑いも無く食べる。

弥恵佳さんは戸惑いも、遠慮せずに食べ始める自分の娘の姿を見て溜息をついて食べ始めた。


彼女達が食べ始めたので自分も一口食べる。特に変わらない普通のレアチーズケーキだ。クリームチーズとヨーグルトの酸味、レモンが馴染んでいておいしい。一番いい時に出せたようだ。

ムーも欲しがったので残りをあげる。今回は味わって食べるみたいでゆっくりと食べている。


「…そのキュピルはかなり貴方に懐いているようですね」


話を切り出してきた弥恵佳さん。タイミングを見計らっていたらしい。


「ええ、珍しいですか?」


アウラからキュピルが人に懐かないことは知っている。だがここでそれを言ってしまえば最終的にアウラの事を話さなければならなくなるかもしれない。もしかしたら地球(こちら)にもキュピルがいたと思われるかもしれないが期待しない方がいいだろう。襤褸が出そうだし。


「ええ。普通なら懐かないものです」


「そうなんですか」


「…」


「…」


ここで会話が途切れてしまう。今度はこちらから話すべきだろう。


「訊いてもよろしいですか?」


「何ですか?」


「何故自分が、異世界から来た人間だとわかっているのですか?」


「…」


弥恵佳さんはコーヒーを一口飲み、口を開く。


「…予知夢です」


「予知夢?」


「ええ、あるお方が三年ほど前から同じ夢を見るようになられました。巨大な戦艦、真っ白な毛玉、そして必ずある人物が出てくる夢を。…その人物が貴方というわけです」


予知夢、夢で未来の出来事を抽象的にだが見ることのできる超能力の一つ。

本当にこの世界には超能力があるようだ。…そういえば優香さんも使っていたような…


「…なるほど。巨大な戦艦に乗り、真っ白なキュピルを連れている自分は、その夢で出てくる人物と共通するものが多いですね。しかし、それだけで自分が異世界から来た人間と決めつけるには不十分では?」


「そうですね。確かにそれだけでの理由で貴方を異世界から来た人間であると決めつけるには不十分です。でも…」


弥恵佳さんは言葉を途中で切り、再びコーヒーを飲む。


「…何か、あるんですか?」


「はい、それは…」


「それは…?」ゴクリ


「私の勘です」


「………は?」


弥恵佳さんはドヤ顔で言う。

さすが優香さんの母親、そのドヤ顔は優香さんとそっくり、いや優香さんがそっくりなのだ。


「勘です」


また言った。自分は頭が痛くなってきたのを感じつつ尋ねる。


「…勘、とは?」


「貴方が異世界から来たのではないかという直感です」


本格的に痛くなってきた頭を無視して話を続ける。


「…勘だけで…自分が異世界から来たと判断したのですか?」


自分の声は知らないうちに怒気が含まれていた。


「い、一応いちおう根拠はあるのですよ?異世界の事は極秘ではありますが一応いちおう確認されているのです。過去に異世界の風景や文化、食べ物や動物、人、様々な物を見たという人物がいましたし、過去には異世界へ渡り帰ってきている人物もいました」


「それは詐欺師かなんかじゃないんですか?」


「それは誰もが思いました。ですがその中にこの世界には無い技術をあちらから持ってきたり、見た物を真似て成功したりした人がいるのです。その者達は皆、何かしらの見る力や移動する力がありました」


どうやら異世界のことは昔から知られているらしい。

この世界の文化などが地球の国々に似ているのも、真似たり、持ち帰った技術を改良などをして発展してきたからなのだろう。


「それに何処のデーターベースにも貴方の事は登録されていません…ですので」


まぁ、登録されておらず、異世界の存在が秘密裏にだが確認され、移動できると分かっているのなら異世界から来たと思われるのも仕方ないかもしれない。


「……もしかしたらそうかな~、そうだといいな~、と。最近は異世界物が流行っていますので」


…ここまで来たら断言してほしかった。

というか弥恵佳さんがそういったことを知っていることが意外だ。どうやら流行も地球(むこう)と似ているらしい。

てか最初に会った時のキリッとした元帥の姿は何処に行ったんだよ。シリアスブレイクしてんじゃん、結構前からだけど…。


「…それで異世界から来たと思われた…と」


「ええ、ですが先程の反応を見る限り間違いないようですね。私の勘もまだまだ錆び付いてはいないようです」


…洞察力は本物みたい。

確かに、自分は自身が異世界から来たことを言葉では認めていないが、反応で認めてしまった感じだろう。

しかし、異世界から来ている、と確信しているその根拠というか理由がなんとも釈然としない。

何だかどうでもよくなり、全身の力が抜けていく。


「…ハァ~。ええ、弥恵佳さんのおっしゃる通り自分はこことは違う世界から来ました」


「やはりそうですか。それでは、貴方の事を話してくださるのですね?」


「もう一つ、隠れていた連中は何ですか?弥恵佳さん達の味方というわけでは無いようですが?」


「ああ、あれですか。申し訳ありませんが、今はお答えできません。現在確認中ですので。ですが、もし貴方がすべてを話し、こちらの提案に乗るのであれば、予測ではありますがお話しいたします。」


「わかりました。それじゃあ話させてもらいます。あちらにいた時から話しましょう」


そして自分は、自身の事を話し始めた。

最近、書き方が変わってきている気がする。

あと5話ほどは大丈夫だけど、そこから先は変わっているかもしれません。


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