第14話「風呂職人、号泣!」
テランスさんと話したその夜……
ボヌール村の村民殆どが眠りについている時刻。
お願いした予定通り、夜更かしなどせずに就寝してくれたらしく、
俺の夢の中に、テランスさんは居た。
明らかにいつもとは違う夢の中……
違和感ありありなのだろう。
テランスさんは戸惑い、周囲を不安そうに見回し、きょどっていた。
俺は、そんなテランスさんへ挨拶。
「テランスさん、こんばんは。ようこそ俺の夢へ」
初めて俺の夢に来た者は、大抵が驚愕する。
テランスさんも例に漏れない。
「うっわあああっっっ!!??」
テランスさんは言葉にならない大声を発し、
立っていられなくて、「ぺたん」と座り込んでしまった。
そんなテランスさんへ、
「「「「「「こんばんはあ!」」」」」」
と、ウチの嫁ズ12人、そして婚約者のジョアンナが、夜のご挨拶。
そして、リゼットの忠告に従い、
ウチの子供達3人も呼んでおいた。
タバサ、レオ、イーサンも、元気に挨拶する。
俺がカミングアウトした3人である。
「「「こんばんはあ!」」」
そして驚いているのは、こちらの6人も一緒、
「うわあああ!!!」
アンリとエマ夫婦、アベル、アレクシ、アンセルムのデュプレ3兄弟に、ジョアンナの元御付きのマチルドさんも「あわあわ」言っていた。
そして俺達の前に広がっているのは、敷地を1km四方に拡張し、
頑丈な岩壁の防護柵を造ったボヌール村の現在の風景。
ここで改めて言おう。
皆さんはご存じだろうが、俺の魔法で見せる夢の光景はひどくリアルである。
寒暖は勿論、風もしっかりと感じるからだ。
そんなこんなで、ようやく落ち着いたテランスさんへ、俺は問う。
「どうですか? テランスさん、俺の見せる夢の世界は?」
「いや、ケン様。本当にこれは夢……なのですか? 夢ってもっと曖昧じゃないですか? これじゃあ、まるで現実のリアルな世界に居るようです……」
「ははは、それが俺が見せる夢の特徴なんですよ。……テランスさん、昼間に俺と交わした約束を憶えていますか? 言ってみてください」
「秘密は必ず守ると……約束しました。創世神様に誓って……もしも破ったらどんな罰でも受けると」
「宜しい! 申し訳ないですが、もしも破ったら……テランスさん、俺は貴方の記憶を消し、ボヌール村から王都へ戻します。貴方とボヌール村は一切かかわりがなくなる」
「わ、分かりました」
「ご安心を、テランスさん。貴方が約束を守る限り、貴方は自分の人生を華々しくリスタート出来ますから」
「は、はい」
「という事で超スペシャルゲストのご登場です」
「超スペシャルゲスト? そ、そう言えば、おっしゃっていましたね」
「です! ではご登場!」
俺が指をピン!と鳴らせば、俺達の目の前に突如、7人の人物が現れた。
7人とは……
領主のオベール様夫妻、妖精王オベロン、ティターニア様夫妻、アールヴ族の長イルマリ様、そして宰相レイモン様とキングスレー商会のマルコさんだ。
「ど、どなたですか!? こ、この方々は!?」
「はい! 順不同という事で失礼します。エモシオンとボヌール村のご領主、オベール男爵様ご夫妻、妖精王オベロン様とティターニア様ご夫妻、アールヴ族の長イルマリ様、そして王国宰相レイモン様とキングスレー商会幹部のマルコさんです」
「な、な、な、何ですって!!??」
と、またまた大驚愕のテランスさん。
まずは、オベール様とイザベルさんが進み出る。
「お偉い方々を差し置いて申しわけないが、一番に挨拶させて貰おう。私がエモシオンとボヌール村を治める男爵のクロード・オベールだ。我が息子で当家宰相のケンから、風呂職人である貴方の力が必要不可欠だと聞いた。宜しく頼むぞ!」
「オベールの妻、イザベルです。宜しくお願い致しますね」
続いて、オベロン様とティターニア様。
「私が妖精王オベロンだ。今夜は我が弟ケンから新たな風呂を見せると聞きやって来た。宜しく頼む」
「うふふ、テランスさん、私とは既に会っているでしょ? ボヌール村で暮らしているアヴァロン商会の『ティファナ』ことティターニアで~す」
続いて、アールヴ族の長、ソウェルのイルマリ様。
「アールヴのソウェル、イルマリだ。オベロン様と同じく、我が弟ケンから新たな風呂とやらを見に来いと言われ、来た。宜しくな!」
そして、レイモン様とキングスレー商会のマルコさん。
「私がヴァレンタイン王国宰相、レイモン・ヴァレンタインだ。我が弟ケンから新たな風呂――銭湯を見せて貰い、王都の公衆浴場事情を改革したいと考えている。宜しく頼むぞ」
「レイモン閣下に付き従い参りました。キングスレー商会のマルコ・フォンティです。閣下にご協力し、王都……いや、世界の風呂事情を変えたいと考えております。宜しくお願い致します!」
「あ、あわわわわわわわわわ……テ、テ、テ、テランス・バ、バイエですううう!!よ、よ、よ、宜しくお願い致しますうう!!」
と、大驚愕3連発のテランスさんだったが……
俺が鎮静の魔法をかけ、どうにかこうにか落ち着き……
再現された『昭和の銭湯』を見ると、
「お、おおおおっっ!!?? し、し、渋いっ!! こんな風呂は見た事がないっ!!!!」
と、大いに感嘆し、次に『スーパー銭湯』を見ると、
「おお、何とモダンな!! す、素晴らしい風呂なのだあつ!!』
と驚愕。
更に!
前世の俺が持つ旧い記憶……今は亡き母、
そして、もしかしたら……
既に亡くなったかもしれぬ祖父母と、『スーパー銭湯』へ子供の俺が出かけ、
楽しそうに一家団欒するのを見て……
「おおおおおおおおおっっっっ!!!!! こ、こ、これですっ!!!! お、お、俺が求めていた風呂とはこれなんですっっ!!!! うおおおおおんんんん!!!!」
大いに感動し、遂に号泣したのである。
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