第1話「銭湯だあ!」
しばらく、ご無沙汰しておりました、
『神様』とか『女神の指導員』とか、『各種族の顧問』とか……
本業である『オベール男爵家宰相』『ふるさと勇者』以外にも、
その他もろもろ……いろいろとやらされているケン・ユウキです。
……王都からジョアンナとマチルドさんが来て、ボヌール村は更に、にぎやかに、そしてとても元気にもなった。
だが、新たに村民となったのは、このふたりだけではない。
以前からの地道な広報活動も実り……
ボヌール村は、外部から来た新村民がだいぶ増えている。
まあ、地道な広報活動の中にはとんでもない企画……
オベール様とリゼット父ジョエルさんの、いかがなものか的なイラスト使用の
『ポスター企画』とかはあったのだが……
その企画は、リゼットとソフィが中心となり、俺と嫁ズ全員で完全に抹殺、
闇の中深くへ葬った。
さてさて!
「郷に入っては郷に従え」という。
どこでも通じる言葉だが、この言葉こそがボヌール村のルールである。
念の為、補足しておこう。
郷に入っては郷に従え……とは、
風俗や習慣はその土地によって違う。
新しい土地に来たら、その土地の風俗や習慣に従うべきというロジックだ。
その方が、余計なトラブルを起こさず、折り合える
また、ある組織に属したときは、その組織の規律に従うべきだという事でもある。
元々、ボヌール村にそういう風潮はあったが……
俺が村長になってからは更に徹底、現村長のリゼットにも引き継いで貰っている。
実際、新たな住民の中で極めてまれにだが、ルールを守らない者は居た。
もしもルールが悪習ならば、それはまだ納得出来るが、そうではない。
例えば酒を飲んで夜中に大声で騒いだり、所かまわずポイポイとゴミを捨てたり、注意されると逆切れして暴力を振るうとか……
終いには、犯罪まがいの行為もやらかし……
なんやかんやと屁理屈をつけ、自己を無罪だと正当化しようとする。
このような者は何度か注意し、それでもルールを守らないようなら、俺は厳しく処置した。
ボヌール村で暮らした記憶を一切消し、元の住まい近くに強制送還するのだ。
そして二度と村へ足を踏み入れないようにもさせた。
当然、全て禁断の魔法を使って。
あ、そうそう。
そういうやつらには『迷惑料』という事で、物品の弁償とか、清掃代とか、所持金からしっかり損害賠償もして貰った。
しかしこのような『外道』は滅多に居ない。
入村の際、相手の話を良く聞いた上、嘘をついているのなら、魔法で心も隅々まで調べたからだ。
プライバシーの侵害と言うなかれ。
家族や仲間の安全を確保し、守る為なら、俺はそこまで徹底する。
話が少しそれたが……
何を言いたいかといえば、各所から移住者が来て、
子供も生まれて等々で、ボヌール村の村民が倍となった。
100人余りから、200人強へ増えたのだ。
あはは、たった200人かよ? なんて言わないで。
皆さんがご存じの通り、元々、ボヌール村は極めて小さな村なのだ。
但し、人口が増えた。
ばんざーいと単純に喜んでばかりはいられない。
人口が倍になれば、今住んでいる場所が手狭になるのは、至極当然。
先述したが……
だいぶ相互のコミュニケーションが取れ、理解し合えた事……
引き続き、夢魔法や魔法水晶を駆使し、打合せを重ねている事もあり……
世界の情勢は落ち着き、俺にも余裕が出来て来た。
元々、俺はボヌール村とエモシオンの守護を務めるふるさと勇者。
考えていた事もあり……
休日の学校で開かれる週1回の村営会議の日、打合せに臨んだ俺はいくつかの提案をしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
村営会議のメンバーは、俺、リゼットを始めとした嫁ズ。
そして特別参加でタバサ。
ちなみに……
ジョアンナは、一応婚約者という立ち位置だが、8歳で幼いし、最も新参者。
他の同年代の子供達の手前もある。
なので、今回に関しては遠慮して貰った。
だけどジョアンナは、タバサ同様、大人顔負けに聡明な子。
次回の会議以降から、様子を見ながら参加させるつもりだ。
……まずは村長リゼットから、会議の開始が告げられ……
いくつかの議題が出た後……
頃合いと見て、俺はおもむろに挙手をする。
「はい、旦那様、どうぞ」
村営会議と言っても、出席者は俺と嫁ズの身内だけ。
というのは……
副村長にガストンさんが就任してはいるが、門番を含めた保安担当。
まあ、ガストンさんもレベッカ父で俺の義理父なのだが……
会議の参加をお願いしたが、あっさり断られた。
ガストンさんは、
俺達に任せた!
村の運営にはタッチしない!
と言い切るのみ。
それゆえ、いずれはアンリとか仲間の参加も視野に入れているが、現状は俺と嫁ズのみ。
さてさて、リゼットからOKが出たので、俺は話し始める。
「ジョアンナとマチルドさんも移住し、村民も増え、村の敷地が手狭となった。よってより強固で高い外柵を新設し、農地と宅地を一気に増やしたい。正門と物見やぐらも新たにしたい」
ここで俺は軽く息を吐き、話を続ける。
「資金と工事の問題だが……300m先へ新たな外柵を新設する。俺の地の魔法を使うから、工事費はほぼ無用だ。簡単な仕上げだけで済む。正門と物見やぐらは、レイモン様から頂戴した、廃棄された王国砦のものを流用する。だからこれもほぼ費用は無し。取り付けも、少しだけ手伝って貰うが俺自身がやる」
話が勢いづいて来た。
うん!
ここは一気呵成に行こう!
「そして、広げた敷地へ、農地を拡大開拓するとともに、宅地も拡大し、新築の住宅と『村民の為の施設』を作ろうと思う。
こちらだけ資金は、オベール様の援助をお願いしよう。
今度エモシオンへ伺った際、村の境界線変更とともにな」
すかさずリゼットから質問が飛ぶ。
「新築の住宅の数はいかほどに? また『村民の為の施設』とは何でしょう?」
「住宅は……拡大した敷地の割り振りによるけど、30棟前後かな。移住者へ提供するだけでなく、いくつか老朽化した住宅の村民とも相談の上、差し替えをしたい」
「成る程」
「それと、村民の為の施設とは、『公衆浴場』だ」
「こ、公衆浴場!?」
「ああ、俺は以前から考えていたんだ」
「以前からですか?」
「ああ! 公衆浴場を造りたい。ボヌール村の村民が働いて疲れた身体を清め、癒されるようにしたいんだ」
「あ~! 旦那様、分かった! それ日本の『銭湯』でしょ! うっわ! 楽しそ~~!!」
俺の提案を聞き、大きな声を上げ、笑顔となったのは……
幼なじみクミカの旧き記憶を持つ元魔王のクーガーであったのだ。
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