第4話 ヴァンパイアの贈り物Ⅰ
私は悩んでいた。
彼女がオマケだといってくれたクッキー。
それは私のために作ってくれたのかほかのものより『想い』がこっもっていた。
何かをもらったからにはお返しをしなければならない。
それが人間達の決まりだと聞いたことがある。
しかし、長い間生きていた私にとって誰かに何かを上げるなど、なかったこと。
『契約』の際に『対価』として与えることはあったが、それは相手から望まれたものだった。
自分から誰かにあげるものを考えたことなどない。
生まれてから何百年。
こんなに悩んだことはかつてなかったこと思う。
「アル、人間への贈り物とは何がいいんだ?」
自分では思いつかなかった私は自分の使い魔へと質問した。
使い魔のアルマイトこと通称アル。
俺と契約したドラゴンだ。
こいつとの契約の際には『対価』として俺の血を与えた気がする。
普通、『契約』の際には『対価』として自身の魔力が宿った部分の一部を与えるが一般的だ。
ヴァンパイアである俺の魔力は血に宿っているのだ
なにぶん昔のことで覚えてないが。
普段、10歳くらいの少年のなりをしているアルは実は100歳くらいだったはず。
俺よりも彼女に年が近いこいつなら何か思いつくのではないか思う。
「主が人間になんてどうしたんですか!?
天変地異の前触れでしょうか!?」
自分の使い魔ながらずいぶんと失礼な言い分だ。
ま、確かに人間を嫌っている俺があの言動は珍しいかもしれないが。
天変地異の前触れは言いすぎじゃないか?
「……お前は私を何だと思ってるんだ?」
「え?人間嫌いだけど地味に優しい、めんどくさがりやだけどかなり強い主だと思っていますよ」
……褒められているのか貶されているのか良くわからない。
私が無言でいるとアルは微妙に引きつった顔で言った。
「冗談ですよ、主?
で、人間に贈り物でしたか?詳しい理由は聞きませんが、『人間』って言われたってわかりませんよ」
「あぁ、そうだな。悪い。
年は…………10代くらいか?人間の年は良くわからんが。女で小さい村で店をやってんだ」
「そうですか……。う~ん……その年頃で女性なら、宝石とかがいいんじゃないですか?ブレスレットとかネックレスとか」
宝石か…………。
それはいいかもしれない。
魔物の女も宝飾をごてごてつけているものは多い。
それならよろこんでもらえるかもしれない。
「そうだな……。どんなのがいいだろうか……?」
「そればっかりは人それぞれで好みがありますからね、どうしようもありません。
あ、でも、その人間が気に入っているのなら、防衛に魔石とかどうですか?
あれ、主が作ればかなり綺麗なのになると思いますし。」
『魔石』とは魔力が固まってできた石だ。
色などは作ったものに依存している。
魔力が高いほど、濁りが少なく、綺麗な純度の高いものができる。
主にただの魔力だが、それに魔法をかけて自動で攻撃や防御できるようにすることもできる。
結界だけでは不安だし、それがいいかもしれない。
「そうだな、それにしよう。
アル、お前もたまには役に立つな」
「やだな~主。俺はいつも役に立ってるでしょう?」
そんな軽口をたたいて部屋に戻った。
早速魔石を作らなければ。
なるべく純度の高い最高級のものを。
遅くなってしまってゴメンナサイ><