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魔物に転生したので憧れのエルフになろうと思います  作者: Momamo
第1章

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10/10

第1節 10.ルポの木



「ロト、ルプ、それにリュン。今日はありがとう!また来てもいいかな?」


「「「ぜひお待ちしておりますっ!」」」



こうして私たちは三人の少女に別れを告げ、帰路についた。



お店の外に出ると日が落ちかけていて、辺りは薄暗くなってきていた。

大通りなのにもかかわらず人通りもまばらになっていて、なんだか少し寂しい印象があった。



「最近治安が悪いって言っていたし、ちょっと早歩きで帰ろうか。」


「うん、そうだね。」



アズの言葉に同意した私は、アズと手をつないで少し早歩きで宿を目指し始めた。

ルナはアズに抱きかかえられたまま少しうとうととしていた。

おそらくアクセサリーをたくさん見て、少し疲れてしまったんだろう。


微笑ましく思っていた時。

いやに耳障りな男の声が聞こえてきた。



「おい、見ろよ。あの子供…エルフだ。しかも、青髪にオッドアイだ。珍しすぎる。高値になるぞ…………しかも、隣の男が抱えている鳥、ありゃエシガの突然変異か何かじゃないか?あいつらを闇オークションにかけたらいったいいくらになるのか……」

「しっ、おい、やめとけ。男の腕を見てみろ、ありゃ竜種だ、鱗がある。竜は怒らせないに限る……どんな災いが降ってくるかわからん。」

「ほんとだな。あ~、残念だな……」



私とルナをオークションにかけたいというあまりに恐ろしい内容に、思わず私は青ざめる。

アズは男たちを睨みつけていた。

アズが睨んでいることに気が付いた男たちは気まずそうにその場から離れていった。



「ノイ。大丈夫、僕がいるから。絶対に僕から離れないでね。」


「うん、ありがとうアズ。絶対一人で行動しないから、大丈夫だよ。」



そうして固く繋ぎなおした手をそのままに宿の中に入った。



———・・・



「おや、おかえり!食事にするかい?」


「あぁ、うん、頼もうかな。どこに座ればいい?」


「好きなところでいいわよ。少し待っててね。」


「ああ、そうだ。ルナ・・・ペットの分の食事だけど、僕たちと同じものを食べやすい大きさにしてくれないかい?」


「あら、同じでいいの?わかったわ。」



宿に入るとすぐに宿屋の女性が話しかけてくれた。

それに少しほっとしながら、私たちは端の机に場所を決めて座った。


ルナは食堂のいいにおいを嗅いですでに目は覚めている。



「それにしても、あんな人間がこの国にいるなんて・・・」


[どうしたんだい?何かあったのかい・・・?]


「ああ、いや、なんでもないよ。ちょっと怪しい人間を見つけただけだから。」


[そうかい・・・?それよりもおいら、ご飯が楽しみだよっ!なにがでてくるんだろう・・・!]



ご飯のことしか考えてないルナに笑みがこぼれた。

ルナは、このまま純粋無垢でいてほしいな。




暫く待つと女性が料理を運んできてくれた。



「ありがとうございます!えっと・・・」


「あっ、そういえばバタバタしていて自己紹介もまだだったわね、ごめんなさいね。ここはルポの木。宿屋と食事処をしているわ。私はグレイ。旦那はグレン。名前が似てるからわかりにくかったらごめんなさいね。」


「わかりました、グレイさんですね!そうだ、これは何の料理ですか?」


「鶏肉のクリーム煮とロールパンよ。あっ、大丈夫。鳥って言っても食用のニワトリだから。じゃ、食べ終わったらあそこに食器置くところがあるからそこに置いておいて!」



そう言うとあわただしく店の奥に戻っていくグレイさん。


私はちらっとルナを見たが特に気にしてなさそうなのでほっとした。



「じゃあ食べようか?」


「うん、そうだね!じゃあ・・・」


「「[いただきます!]」」



一口クリーム煮を口に入れると濃厚ながらまろやかな味わいが口の中に広がった。



「んっ、美味しい!!ちゃんとした料理食べるの久しぶりだから嬉しいな。」


「うん、美味しいね。これは門番さんに感謝をしないとだね。」


[・・・・・・・・・。]



ルナは無言でひたすら食べることに集中していた。

その様子がかわいくて、つい微笑んでしまう。


「・・・?どうしたんだい、ノイ・・・あぁ、なるほどね。かわいいねこれは。」


「ふふっ、でしょう?しかも、こうして私たちが話してても気づかないところもかわいいの。」


「そうだね。でも、ノイもほら、冷める前に食べないともったいないよ?」


「確かに。じゃあ私も食べることに集中するね。」



そうして三人ひたすら無言でご飯を食べた。




「ふう・・・ごちそうさま!」


「[ごちそうさま!]」


「美味しかった~。明日の朝ご飯も楽しみだね。」


「そうだね。」


[二人に出会ってから毎日こんなにおいしいもの食べれて、おいら、本当に幸せだよ!]


「ふふっ、よかった!」



私たちは食器が乗ったトレーを指定された場所に置き、部屋に戻った。



一階から様々な音が聞こえてくるが雰囲気は静かな部屋は、なぜか居心地がよく、落ちつけた。




「さて・・・じゃあ、ルナのアクセサリーのお披露目でもしようか。」



私たちはベッドに腰掛けながら話をする。



「うん!どんなのを買ったの?」


「まずは最初に見せたリングからかな。ルナ・・・———」

[おいらが一番に選んだんだ!見て、この宝石、二人の髪色みたいでしょ?とってもきらきらで、おいら、絶対これがいいって思ったんだ!]


「ほんとに綺麗だね。とっても素敵だし、ルナによく似合ってる!」


[へへ、でしょ?次はね、リボンを買ったんだ!アズ、着けておくれ!]


「わかったよ。・・・これでよし、かな。」



頭のてっぺんにエメラルド色できらきらとしたリボンがつけられた。

リボンの大きさは大きすぎず小さすぎず、程よいバランスでルナの頭に乗っていた。



「わっ、かわいい~~!!ルナ、リボン似合うね。」


「そうでしょ?これはアズが選んでくれたんだ!おいらの瞳みたいって言ってくれて、おいらも気に入ったからこれにしたんだ!最後は・・・]


「これだね。」



アズはルナについていたリボンを外すと新しいリボンを私から見て顔の左側に着けた。

深い青の生地に白金の糸で模様が描かれていて、ガラスのようなものがまるで水滴のように細かく散らされている。



「わっ・・・すっごく綺麗。これ、もしかして三人の色が入ってる・・・?」


[うん、そうなんだ。二人の青に、おいらの白金。これも、一目見て気に入っちゃって、買うことにしたんだっ!]


「いいね!私も好きだなそのリボン。そうだ、アズも何かリボン買ってなかった?」


「うん、買ったよ。僕のはこれ、ルナのリボンとお揃いの、色が逆のものだね。髪の毛を縛るのに使おうと思って。」



そう言って取り出されたリボンは白金の生地に青い糸で模様が描かれていて、ガラスのようなものが散りばめられているものだった。



「ノイは今髪を縛ってないから、使うかわからなかったんだけど・・・実は君の分も買ったんだ。」



そう言って取り出された全く同じリボン。



「え、いいの?!使う、使うよ!ありがとう、とっても嬉しい!!」



私は丁寧にリボンを受け取ると、左側の前髪を編み込んで、そこにリボンを括り付けた。



「どうかな、似合う?」


「うん、とっても似合ってる。やっぱりノイの分も買ってよかった。」


「ふふっ、ありがとう、アズ!」


「じゃあ、次は君のアクセサリーのお披露目だね、ノイ。」


「うん!まずはね・・・———」



そうして私は自分で選んだピアスを着けて見せて、二人が選んでくれたものも組み合わせて着けたり単体で着けたりした。


ピアスホールはどうしたのかって?そんなものは体を作り替えればいくらでも開けて閉じることができるから問題はない!



「———・・・うん、どれもいいね。ノイもルナもアクセサリーが似合うね。」


[そうなのかな?おいら、アクセサリーを着けたの初めてだからよくわかってないんだ。]


「似合うって言ってくれてありがとう。ルナも、きらきらにふさわしい見た目ってことだと思えばわかるんじゃないかな。」


[きらきらにふさわしい?!ほんとかい?!それはうれしいな・・・!]



そうやってルナと笑いあっていると、アズが懐からリングのようなものを取り出した。



「ノイ。よければこれ、受け取ってくれないかい?ルナのリングと同じデザインのもので、三人で着けたいなって思って別で買ってたんだ。」


そう言って渡されたリングは、宝石はついてないけれど確かにルナのリングと同じものだった。



「え・・・ちょっとまってアズ。」


「ん?どうしたんだい・・・?」



私は収納魔法の中からアクセサリーを二つ取り出した。



「私も、私の買ったピアスと同じデザインのピアスとネックレスを二人用に買ってたんだ・・・!!!」



私とアズは顔を見合わせると、ぷっとふきだした。



「同じこと考えてたなんて・・・!」


「そうだね。まさかノイも買ってるとは思わなかったよ。」


[お、おいらにもあるのかい・・・?]



ルナは、予想外の嬉しいことが起きたという顔をして驚いていた。



「うん。ルナはネックレスだよ。紛失防止の魔法がかけられてるらしいから、簡単には無くさないと思うよ。」


[わぁ!ありがとう、ノイ!!]


「はい、アズはピアス。これも紛失防止がかかってるよ。アズも小さいピアスホールくらいなら自分で作れるでしょ?」


「はは、そうだね。早速着けてみようか。」


「私も、リング着けたい!」



そうして私たちはそれぞれ貰ったアクセサリーを着けて、お互いに笑いあった。




———・・・




「それじゃあ、明日の予定を確認しようか。」


「うん、そうだね。」



私たちは今付けるもの以外のアクセサリーを私の収納魔法にしまって再び向かい合った。


現在、私とアズはピアスとリングとリボン、ルナは顔の左側のリボンにリング、ネックレスを着けている。



「まずは、聞き取りかな?」


「そうだね。これは門番みたいな職の方に聞けたら一番だろうけど、おそらく彼らも忙しい。その次は噂話が流れてくる場所・・・食事どころか酒場かな。」


「なるほど、わかった。じゃあ最初に、朝起きたらグレイさんに聞いてみよう。そのあとこの国の酒場や食事処を聞いて、そこに聞き込み調査かな?」


「うん、それでいいと思う。酒場は、子供の姿のノイには厳しいかもしれないけど・・・離れると僕が心配になってしまうから、一緒に行こう。もちろん、ルナも一緒に・・・———」


[ぐう・・・ぐう・・・]



私に抱えられたまま寝てしまっているルナを見て、アズと顔を見合わせて小さく笑う。


ベッドにルナを寝かせて、布団をかけてあげる。



「今日も色々あったから疲れちゃったんだね。」


「そうだね。じゃあ話はここまでにしとこうか。・・・そういえば、門番が服屋も場所を描いたって言っていたけど、ノイ、行きたいかい?」


「えっ、うーん、そうだな・・・この世界の服はちょっと気になるかも。でも、情報収集しないとだし・・・」


「よし、じゃあ明日は酒場が開くまでの時間に服屋にも行こうか。」


「いいの?」


「うん。急いだって、すぐに母様の場所にたどり着けるわけでもないし、こういう寄り道で思わぬ収穫が手に入ったりもするものさ。」


「そっか・・・ありがとう、アズ。」



私はアズにお礼を言って、ふと指に着けられたリングを見た。



「そういえば・・・アズ、知ってる?私の故郷では、指輪を贈るのはプロポーズの意味があるんだよ。」


「ぶっ?!」



アズは飲んでいた水をふきだして盛大にむせる。



「ごほっ、ごほっ・・・ノイ、君、それ仕返しだろう?最初に出会った頃の・・・」


「えへ、ばれた?でも、本当だよ。これで私たち、お互いにプロポーズしたことになるね。」


「もう・・・冗談は置いといて、明日のためにも休むよ。君は・・・そうだ、ルナがベッドを使っているから休む場所がないのか。どうしようかな・・・」


「大丈夫だよ。いつも通り魔力トレーニングするから。もし横になってみたくなったらルナと一緒に寝るよ。」


「それは・・・大丈夫なのかい?多分、だいぶ蹴られたりとかすると思うけれど・・・」


「あはは、さすがに怪我するレベルじゃないと思うから大丈夫だよ!」


「そうかい?わかった。じゃあ、僕は先に休むね。おやすみ、ノイ。」


「うん。おやすみ、アズ。いい夢見てね!」



そうしてアズはベッドに入り、私はいつものように魔力トレーニングをすることにしたのだった。




———・・・




それにしても、宿に帰ってくるまでに居た男たち。

妙なことを言っていた気がする。


”青髪のエルフ”。

もしかして、この世界に青髪のエルフはいないのだろうか。

エルフといえば金髪・・・それがこの世界でも当てはまるなら、私の存在はどうしても浮いてしまう。


でも、憧れを捨てるにはまだ情報がなさすぎる。


髪を染めることができる世界なのであれば染めてますとも言えるが、染めない世界なのであれば異質でしかなくなる。


それに、ルナのことにも興味を示していた。

私だけであれば最悪なんとかなるけど、ルナの毛色や大きさを変えるのは難しい。


隠す方法を探すか、男たちをどうにかするか。




私はもちろん後者を選びたい。




私の大切な大切な仲間。

それに手を出そうとするなら容赦はしたくない。



だけどおそらく、あんな感じの人間はまだまだいる。

一人一人対応していたらきりがないと思う。



つまり、隠すしかないということだ。



私は創造魔法で隠蔽魔法を作れるか試してみる。


隠したいものを隠し、見せたいものに変化させる。

特定の生き物にはいつもの姿で、それ以外には偽りの姿を。





・・・・・・できた。



だいぶ疲弊はしたけど、多分できていると感じる。


この魔法をまず試しに私がつけているリングに付与できるか試す。

魔力を流し、そこに先ほどできた隠蔽魔法を混ぜて、リングに溶け込ませる。



多分、できた。

そう感じたので、寝ているルナのリングにも同じ魔法を付与する。



アズの分は、明日起きてからやろうと思う。

多分今やろうとしたら眠りを妨げてしまうと思ったからだ。



少し疲れたな。


そう思った私はルナがいるベッドに潜り込む。

寝ているルナを抱きかかえて目を閉じた。



眠ることはできないけれど、こうしているだけでだいぶ癒され・・・——————




どごんっっっ




衝撃と共に宙に浮く感覚がした。


何が起きたのか確認するために目を開くと、ルナが足を突き上げているのが見えた。

そして私はベッドの外にはじき出されていた。



思ったより小さな音で着地できたからかアズも目を覚ますことはなく、私はただ一人呆然としていた。


こんな・・・私より小さいはずのルナに蹴飛ばされたという事実を噛みしめながら・・・———




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