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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第三章 ガイアの大地

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第76話 改めて、呼び名

 フルーゲは勢いよくヒューマニア王国を飛び出して一時間程経過した。もうヒューマニア王国は肉眼では見えないほどに小さくなっている。リリアナ王女は王国の方を向いて少し寂しげな表情を浮かべている。


「来ない方がよかったと思ってる?」


 ティアではなく、ミラ王女がストレートに聞いた。そんな姉の言葉の意味を理解してか、もしくは本心からなのか、首を振って笑顔で答える。


「いいえ! 何がなんでもお姉様たちと一緒に旅をすると決めていました! 今、王国に暫しのお別れをしただけです。必ず戻ってきますと」


 全員がニカッと笑顔になった。フルーゲは天空塔へ向かってまっすぐ飛んでいる。


「あのさ、ノア。簡単でいいからフルーゲのこと教えてほしいんだけどさ」


 ヘンリーがノアの隣で話しかける。とても嬉しそうにノアが目を大きく開ける。


「えっと……どうしてフルーゲはここまでの高度を出して飛べるの? ガイアの低級魔土ローソイラの魔素では無理だよね? 仮に低空飛行でもこれだけの馬力を出すのは厳しいと思うんだけど……」


「それはね。実は簡単なことでさ。フルーゲの底面に超級魔土レアラを敷き詰めていて、そこから風と火の魔土術を放出して飛んでいるんだ。だからガイアの大地とは関係がないというか、切り離して考えていて」


「え? ちょっと待って。それじゃあ、ノアは魔土術まとじゅつを放ちながら操縦しているってこと?」


 ヘンリーがいい質問をしているのだろう。嬉しそうにニヤついて話し始める。


「実は魔王軍と戦う前のフルーゲはそうだったんだけど、そこから長距離の旅を想定して改良したんだ。今は詠唱プレートを敷いてそこにマナを流しているだけ。それで動かせるようになったんだ」


「すごいね……ちなみに両手は操縦で使っていてどうやってマナを流しているの?」


()()()()。シートから直接吸い取ってもらっている。ちなみに、黄金の卵は大きめの胸ポケットに入れてマナを注入し続けているから、胸とお尻からマナが抜け出ているんだよね〜」


「……き、器用だね……お尻からマナを流すとか僕には出来ないや」


「お兄ちゃん……なんかちょっと……キモいわ」


 ガ〜ン! という表情でティアを見て訴えかけるノア。技術としては素晴らしいようだが、女性陣にはウケが悪い仕組みのようだ。


「操縦しながらなんだから仕方ないでしょ」


「いやその前に……足からマナを流すという選択肢はなかったのですか?」


 恥ずかしそうにリリアナ王女から鋭い指摘を受ける。何も言い返せないノアと大ウケするミラ王女。


「話のついでに伝えておくと、僕のマナが無くなったら皆にお願いするからね。別にお尻からじゃなくてもいいけど。シートに手を触れてくれても、足からでも大丈夫」


「「「は〜い!」」」


 ふと、ティアが何かを見つけたようだ。指さして笑っている。


「ほら見て! リリアナライン!」


「まだ残っていたんだ!」


「えぇ! 皆さん、ちょっとその名前やめましょうよ」


 そう、これは一番最初にゴーレムを動かしてみたときにリリアナ王女が風魔土術をぶっ放して形成されたガイアの大地をえぐった痕だった。見事にまっすぐ南へと一本の線を描いている。


「ちょうどいい目印だね。ここから先は本当に未知の領域ってことだね!」


 顔を赤くして恥ずかしそうなリリアナ王女だが、このリリアナラインは今後のヒューマニア王国の中で、語り継がれるエピソードになるのであった。



「ところで、ミラ王女。呼び名はどうしますか?」


 ノアがまともな質問をして、驚くミラ王女。


「そうね……このパーティーは希望の剣だからやはり偽名でいくわ。私は『エミラ』で通すわ。だから皆もそれに合わせて敬語もやめてね」


「え! それはちょっと……」


 ヘンリーが一番気まずい表情をしている。さすが王国騎士だけあって、王女にタメ口なんて考えられなかった。


「大丈夫だよヘンリー。あの人はエミラだから。もう、王女じゃないからね。普通にエミラさんでもいいと思うし、エミラって呼び捨てでもいいと思うよ。僕はパーティーリーダーだから呼び捨てにしてた」


「そうなんだけど、ノア。あなたはもう少し私をうやまいなさい。なんかムカつくわ」


「えぇ? 意味がわからないから却下」


(スゲー。もうタメ口だ……王宮内なら処罰レベルだよ)


 そしてティアが割って入る。


「じゃあさ。リリアナはどうする? 何か名前決めたの?」


「……特に何も決めてないわ。パーティの名前か……ノアに名前つけてほしいな」


 怪訝そうな顔つきでミラ王女が言う。


「やめたほうがいいわよ。変な名前になっちゃうから」


「エミラ。それ普通に失礼だよ。僕のネーミングセンスを疑っているなぁ?」


 ノアが悪い顔をしている。ミラ王女とティアにしかわからない悪ガキの顔だ。

 しかし、ノアの口からは意外にまともな提案が出てきた。


「リリーでどうかな? 魔土術学院入学時にプッツンきたときとか、ゴーレムの大砲の術も<リリー>だったよね。僕は響がとてもいいと思うよ」


 顔を赤くしてリリアナ王女が何度も頷く。ミラ王女も文句はない。妹が喜んでいるのだから。しかし、ちょっと気がかりなのは顔が赤くなったリリアナ王女のリアクション……


(まさかね……)


「それじゃあ改めまして。エミラ、ヘンリー、ティア、リリー! これから始まる僕ら『希望のつるぎ』のワクワクする冒険、一緒に楽しんでいこう!」


「「「オォ〜!」」」


 ノアが右手を握って突き出す。メンバーも同じように突き出す。自然と掛け声が出るほどに気持ちは前を向いていた。



 そう。遥か先に見えるグランサンクチュアの天空の塔へ。





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