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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第二章 魔王軍襲来

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第74話 孵化しない卵

「ねぇ、ノア。その卵どんどん大きくなっていない?」


 ミラ王女の指摘に笑顔で頷く。


「そうなんですよ。ここ最近マナを吸い込む量がまた増えまして」


「まだまだ孵化する気は無いのかしら? あれから一ヶ月以上経っているわよ」


「多分、この子はすごい幻獣なんですよ。楽しみで毎日熟睡できません。ただそろそろ僕も訓練をしっかりこなしたいので生まれて欲しいのですが」


 そこへ、マリアとティアとリリアナ王女がマリリンと空の散歩を終えて戻ってきた。


「マリア! マリリンとの初散歩。どうだった?」


「はい! とても素晴らしいガイアの景色を観れました。マリリンもマナを流しながら意思疎通できるみたいです。これなら命令も簡単にできるかと思います」


「クアアア〜!」


 マリリンの首元を撫でるマリア。気持ちよさそうに目を瞑るマリリン。


「それにしても、段々とマリリンって感じじゃなくなってきたわね。強さと名前のギャップが激しすぎるわね」


「ミラお姉様! マリリンの背中はとてもいい乗り心地でした!」


「リリアナもすっかりマリリンが大好きになってしまったわね。(あの内気で弱虫だった頃のリリアナの面影は一切見えないわね……)」



「クア!」



 マリリンがノアの卵に気づいて近寄ってきた。卵を鋭い目つきで観察するマリリン。本能が知らせているのだ。コイツは大物だと。


「マリリンが少しおびえているようですね。どうしたのかしら」


「卵の存在があまりに怖いんじゃない?」


「え? た、卵がですか?」


「確かにミラ王女の言う通りかも。だってここ一ヶ月半くらいずっとお兄ちゃんのマナを吸い続けているからね。きっと化け物が生まれるわよ」


 ティアがマリアを脅して笑っている。


「ティアの言っていることが正しい気がするわ……私のこういう予感って当たるのよね……」



 そこからさらに一週間が過ぎ、ノアはついに特性リュックをマリアに作ってもらい、卵を背負い始めた。そう、卵の成長はまだ止まっていないのだ。そしてノアもロイたちと訓練に参加する。


「ノア、本当にいいの? 間違って卵に当たっても知らないよ!」


「大丈夫! ヘンリーは僕にも卵にも攻撃して構わないから! いくよ!」



 久々に俊敏に動いている。背負った卵はそのノアの軽快な動きに共鳴するかのように若干光を帯びている。


「ウインドソード! そこだ!」


 カキィーン!


 乾いた音が王宮訓練場全体に響く。ロイも思わず振り返って様子を見るほどだ。

 ヘンリーの渾身の一撃が卵に直撃した。



「う、嘘でしょ? 無傷ってどういうこと?」


「隙あり! エッグアタック!」


「グヘェッ!」


 単に卵をぶつけられただけだが、妙に動きが鈍るヘンリー。


「あれ……なんだろ……マナが吸われたような……」


「そうなんだ。コイツ欲張りだからいろんな人のマナを吸い取っちゃうんだよ」


 ヘンリーは卵がマナを吸い取るという事実よりも、ノアに驚いていた。


(僕は一瞬ぶつかっただけで身体がよろけてしまうほど、マナを持っていかれたのに、ずっと背負っているノアはこの量のマナをずっと注ぎ続けているということなの?)



 呆然としているヘンリーの代わりと言わんばかりにロイが出てきた。



「よ〜し! じゃあ次は俺の一撃を喰らわせてみるか! ノア、その卵で守ってみろ」


「ちょ、ちょっと! 父さんはダメだって! 卵が割れる! クソ、本気で撃ってくる気だ!」


 マナの左手から渾身の一撃が繰り出された!



「ウオォォー! こんなでかいのをここで放つの無しでしょ!」


 ノアが必死でマナバリアを張って耐えているがこれ以上はたえられない。


「どうしたノア! 卵に当たっちまうぞ!」


 と、その時卵が光を放ってノアのバリアをより強靭なものにかえる。


「ハァ? どういうことだ! 卵が魔土術まとじゅつだと! ありえんだろ!」



「いやいや、その前に息子が大切に育てている卵に全力の一撃放つ父さんの方があり得ないでしょ! 本気で割ろうとしたよね!」



「細かいことは気にするなって! ガハハ!」


 こうして親子ゲンカ模擬戦が始まり、その後二時間以上本気の死闘が続いた。




 * * *



「ウサ爺! 遊びに来たよ!」


 からの間に大きくなった卵を持参したノア。



「ノアか。元気そうじゃな。ん? これまた元気に育っておるぞい」


「いや〜そのことでウサ爺に相談したくて来たんだ。卵がもう僕の体よりも大きくなっちゃってさ。背負うのもデカ過ぎて大変なんだよ」


「ヒョッヒョッヒョ。良いではないか。もう暫くかかりそうじゃな」


「ウサ爺この前一ヶ月くらいって言ってたよね? もう二ヶ月経っているんだけど……」


 ウサ爺があごひげを触りながら笑って答える。


「わしの想像も超えておっただけのことじゃ。兎に角お主は卵にマナを流し続けるのじゃぞい。それから卵はもうヒューマニアの人間ではロイ・グリード以外で傷をつけられるものはおらんじゃろうからそこまで気をつけることもないぞい」


「それどころかこの前魔土術を使ったんだ。バリアを張ったんだよ。卵が! ウサ爺信じてくれる?」



「勿論じゃ。卵は今、お主からいろいろなことを学んでいる。お主もできるだけいろんな術や技を見せるのじゃぞい。そうすれば卵はより大きく成長する」



「わ、わかったよ……そうか、お前は今勉強中なんだな」


 卵をさすって笑っているノア。気のせいか卵もそれに応えているような……


「ノアよ。お主最近鍛錬をサボっておるな? 卵は言い訳にはできんぞい。もっと精進せんといかんぞい」


「あ、はい。さすがウサ爺。すぐにわかっちゃうんだね」




 空の間をでて、学院の食堂でご飯を食べているノアを周囲の学院生がザワつきながら眺めている。まず、巨大な卵を背負っていること、そして学食五人分をパクパク食べていることが奇妙過ぎて気になるからだ。


「よ〜し。講義のあと、久々にタングス先生に模擬戦の相手してもらおう!」




 そしてさらに二週間が過ぎる。卵は更に大きくなりノアも移動に支障をきたすほどになっていた。


「うぐぉ〜、お、重過ぎるだろ……お前まだ孵化しないのか? こんなにでかくなって」


 とうとうノアの身体の2倍ほどに膨れ上がっていた。フラフラの足で庭園を歩くノアにミラ王女が声をかける。



「わっ!!!」



 驚いたノアが卵に潰されて下敷きになる。それを見て笑っているミラ王女。この人が時々見せるイタズラ好きな性格、これが本来のミラ王女なのだろう。


「ごめんごめん。ついやってみたくて」


「ひどいですよ〜。こいつ結構重いんですからね。他の人だったら死んじゃいますからね!」


「なんか大変そうよね。流石にこの大きさは……赤ちゃんとも思えないわ。まさか巨人族の赤ちゃんとかじゃないでしょうね?」


「何なのかは僕にもわかりませんから。お答えしかねますね。一つ言えることはまだまだマナが吸い足りないようです。いまだにガンガン吸って――」



 コンコンとノアがノックする感じで軽く叩く。


 ピシッ! ピシピシッ!



 卵に亀裂が入った!




「ついに来たか!!!」




 パリパリパリ……バリン!



 割れた卵の殻を覗き見るノア。その中には手のひらサイズの小さな黄金の卵が入っていた」




「「卵の中に卵?」」





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