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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第二章 魔王軍襲来

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第72話 庶民から上級貴族へ

 マリリンが誕生してから王宮の雰囲気がガラッと変わった。国王も王妃もマリリンを可愛がり、リリアナ王女とティアは毎日欠かさず一緒に遊んでいる。


 何故ミラ王女が敏感に体裁を整えようとしたのか。何故王宮の雰囲気が明るくなるのか。それはヒューマニア王国が人族国家であることが大きな理由だった。現存する王国内の移動用の馬や豚などの家畜はもともと獣族国家のビースタニア王国との国交によって譲ってもらった最下級の話す事が出来ない獣である。

 それら家畜用獣を王国管理のもと、一部分の民に分け与えているというのが現状であった。つまり基本的にはヒューマニア王国に獣が生まれることはないのだ。


「私たちはそれもガイアの大地が定めし摂理と理解しているのよ……」


 ミラ王女は工房でノアとマリアにその思いを打ち明ける。


「大丈夫ですよ。ミラ王女。僕らに不満はありません。獣を手に入れた人族と噂になれば、マリアとマリアの家族にも危険が及ぶかもしれませんし。冷静な判断だったと思いますよ」


 ノアの言葉に頷くマリア。


「ところでマリア。あの雛鳥……マリリンは何を食べるの? やはりあなたのマナをエネルギーにして成長するのかしら?」


「そうですね。今の所は体に触れてマナを与えています。もう少し成長して安定してきたら食べ物を与えてみるのも良いかと思っています」


「家族には説明できたの?」


「ものすごく喜んでいました。父からはでかしたと褒められました。王宮に招かれたことが嬉しかったみたいです」


 笑って安心するミラ王女。そして相変わらず大切にスリングに入れて愛情持って温めているノアを見る。


「ノアは……変わりなさそうね」


「はい。マリリンを見て。僕も俄然この子に対して愛情が湧いてきましたよ!」


 11歳にして早くも父親みたいなことを……


「それにしてもあのマリリン……どこかで見たような……」


 するとノアが笑顔で答える。


「多分王女が見たというのは王宮の図書の間の幻獣図鑑じゃないですかね?」


「ちょっと……それどいうこと?」


「いや、最初は僕もまさかなぁとは思ったんですけど、数日経って毛も生え始めた様子をみて僕の中では確信に変わりました……あれは幻獣グリフォンですよ」


 ノアがマリリンを観ながら楽しそうに話したその一言でミラ王女は凍りついた。


「嘘でしょ?」


「いや、だって観てくださいよ。そもそも脚が4本ありますよ。あんなに立派な羽があるのに。今は可愛い顔してますけど、多分二週間もしたらミラ王女の身長も超えると思いますよ。いやぁ〜楽しみですね! どこまでマナで成長するのかなぁ……どこまで強くなるんだろう……」


「……げ、幻獣を飼うですって……大変だわ。ノア、王宮で緊急会議よ!」





 こうして国王もロイたちそしてミネルヴァ校長までもいきなり呼び出されて戸惑う中、ミラ王女が深刻な顔をして全員を席につかせる。マリアとマリリンも同席している。


 ヘンドリックが出してくれたお茶を飲みながら、ロイが尋ねる。


「あの……ミラ王女。一体どうなさったのですか? 国王までお呼びになったということは何か大きな問題でも?」


「余も全くわからんし、身に覚えがない。ミラよ、突然呼び出すなんて、何かあったのか?」


「はい。早急に対応の仕方を考えるべきかという案件がつい先ほどノアの一言で発生しました」


(またお前か〜)


 お茶を飲んで落ち着くロイたち。やはりトラブルか?


「ノアの推測によると、マリアによって育てられているこの雛鳥は……幻獣グリフォンです」



 ブハァー!!



 ロイとリリカと国王がお茶をテーブルにぶちまけるほど驚いてマリリンを凝視する。ティアたちは何のことかわかっていない。 


「嘘だろ?」


「私たちもグランサンクチュアで一度しか遭遇していないからちょっと記憶が曖昧だけど……確かにそんな面影が……」


 リリカが動揺しながらマリリンを観ている。マリリンはリリアナ王女に抱かれて気持ち良さそうに寝ている。


「確かにこうして父さんと母さんに観てもらうのが一番ですね。僕は本でしか観たことがないので」


「いや、俺たちも雛の段階で判断できないって……いや、でもよく観ると脚……4本だもんな……」


「ロイ、リリカ。どうじゃ。余は全く判断できぬが……グリフォンなら大ごとだぞ。人族が獣を……しかも幻獣を飼うなんてガイアの歴史上ありえぬことだからな」


 国王の言葉を聞いて改めてマリリンに近づいてじっくり観察する。


「キュイー! キュイー!」


 嬉しそうに反応するマリリン。


「あと、一週間ほど経てばはっきりするとは思いますが、恐らくはグリフォンだと思います。似たような魔物や魔獣がいるとは思いますが、邪気が全く無くてマナで溢れているなんて……グリフォンでもここまでじゃなかったような……」


「そうよね。むしろ幻獣は種族からまつられる存在。こうやって人の手で抱かれて飼われる存在だなんてありえないわ」


 国王が頷く。


「ノアはどう思う?」



「そうですね…………おそらくマリリンは……メスですね」


 真剣な顔で答えるノアに、ミラ王女とリリカから鉄拳が飛ぶ。吹っ飛んでハイソイラの壁に突き刺さったノアを放置してミラ王女が進める。


「ミネルヴァ校長はどう思われますか?」


「間違いなくグリフォンですね。こんなに可愛い雛の状態で見るのは私も初めて! とても嬉しいわ。マリアの優しくて繊細なマナの影響を受けているので、人族に危害を加えることは無いでしょう。その点はご安心なさって良いかと」


「ミネルヴァよ。それはつまりこのグリフォンは完全にマリアを親だと認識しているということなのか?」


「はい、国王陛下。その点は間違いないでしょう。今後のマリアの育て方でこのグリフォンがどう成長していくかが決まります。幻獣といっても獣であることに変わりはなく、深い愛情を持って接していれば素直に答えてくれると思いますよ」



 ミネルヴァ校長の話を聞いて国王が一つ決断をする。


「マリアよ。お主は今、王宮のノアの工房で手伝いをしているという話じゃったな? 現在は雛が成長するまで王宮で生活していると聞いているが」


「は、はい! 国宝陛下! そ、その通りでございます!」


 マリアが国王と初めて直接会話を交わす。当然緊張している。


「……ミラよ。マリアの家族に上級貴族の称号を与えよ」


「わかりました」


 驚くマリアに国王は続ける。


「マリアよ。幻獣の主としてグリフォンを立派に育て上げ、ここ王宮の守り神とするのだ。戦地に行かせるのはお主としても嫌であろう? 母親としてな」


「あ、ありがとうございます! 国王陛下! 必ずマリリンを立派に育て上げます」


 笑顔でマリアに話しかける国王。その粋な計らいにマリアは深く心を打たれたのだった。



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