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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第二章 魔王軍襲来

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第71話 卵 03

 王宮大会食の間で食事をする王家とロイ一家。全員が気になって仕方がないこと。それはノアが大事にスリングに入れて抱えている卵だ。ロイとリリカは見て見ぬふりをして食事を楽しんでいた。ついに息子の頭がおかしくなったと思っている。


「……ノ、ノアよ。それはなんだ?」


 国王は皆が思っている疑問を直接聞いてみた。


「はい! 国王陛下、これは卵です」


 屈託のない笑顔で答えるノアに追求しづらくなる国王。ミラ王女もあえて何も言わなかった。


「ノアはその卵を育てているのですか?」


 リリアナ王女も興味津々だ。


「そうです。これは僕の子供です。これから大切に育てようと思っていまして」


「ノアの子供……楽しみですね!」


「はい! 僕もすごく楽しみなんです! 一体()()()()()()のか」


「…………えっ? 出てくるって何?」


「いやぁ、結構マナを吸われるからすぐにお腹減っちゃうなぁ。すみません。これとこれ、おかわりください!」


(……マナが吸われる?)



 その後は誰も卵のことには触れず、食事を楽しむことにした。

 


 次の日、ノアは魔土術学院へ行ってミネルヴァ校長の図書室へと向かう。珍しく校長も図書室で本を読んでいたが、ノアが抱える卵を見てビックリする。


「ノア、それ何かしら? 魔獣……いや魔物の卵?」


「これは魔物ではないと思いますが……おそらく。僕のマナを注いでいるので違う何かが生まれてくると考えているのですが、僕にもわかりません! アハハ」


 関心を持ったミネルヴァ校長はノアから詳しく状況を聞き出した。


「魔人のコアから作り出したですって……その発想は無かったわ」


「校長なら簡単だと思いますよ。もうひとつ四大魔軍軍長のコアが残っていますが、やってみますか?」


「いや、それはやめておくわ。ずっとマナを注ぎ続けるなんて大変でしょ」


 ノアは大きく頷く。


「こいつ特にすごいんですよ。マリアの方はそこまでマナを要求しないみたいなんですが、僕の()()は『マナをくれ』ってうるさくて。油断していたらマナが枯渇しちゃいますよ」


「た、大変そうね。ウサジさんにも見せてみたら?」


「そうですね! この前魔王軍のこともウサ爺が教えてくれたし、お礼も兼ねてちょっと行ってみます」


 読みたかった書籍を一冊読み終えて、ノアはウサ爺がいるからの間へ向かった。



「ウサ爺。いる?」


「いるぞい。また今回は面白いものを抱えておるな」


「あ、さすがウサ爺。早くもこの子の面白さがわかっちゃった?」


「ふむふむ。どれどれ」


 ウサ爺がペタペタ歩み寄って卵にそっと手を触れる。ウサ爺に反応するかのように卵が光を放つ。


「ウサ爺、卵割っちゃダメだよ。注意してね。僕の子供だから」


「ヒョッヒョッヒョ! 分かっておるわい」


 ウサ爺は光る卵を読み取っているのだろうか。うんうんと頷いて手を離した。



「ノアよ。後一ヶ月ほどじゃ。これまでと同じように大切にマナを注ぎ続けるのじゃぞ」


「えぇ! 一ヶ月も?」


 笑っているウサ爺だが嘘をついていないのはノアもわかっている。そしてウサ爺が話を続ける。



「きっとお主の味方になってくれるぞい。大切にするんじゃぞい」


「うん! わかったよ!」


「……あと一年で旅立つつもりじゃな?」


 ウサ爺が話を変えた。ノアの卵に触れて、ノア自身のことも知ったのだろうか。


「うん。僕自身の準備もあるけど、ヒューマニア王国を魔族から守れるだけの力がついた時かな。僕がいなくても大丈夫だと思えるような、そんな王国騎士団になった時だね。そんなに遠い話ではないと思うからウサ爺が言うように一年くらいかもしれないね!」


「ガイアの大地ではテレポートを使えぬから気をつけるのじゃぞい。ハイソイラ以上の魔素で満たされた場所でしか移動できぬのじゃからな」


 笑って頷くノア。そして魔王軍の知らせをくれたことにお礼を言って空の間を後にした。



 * * *



 それから暫くの間、ノアとマリアはスリングを欠かさずに身につけて卵を意識しながら生活した。魔土術学院で実習のときも王宮の工房で作業するときも寝るときも常にマナに愛情を込めて注ぎ続けた。


 そして二週間が過ぎ、王宮の工房でマリアの卵についに変化が訪れる。


 ピキッ! 


「あ! ノア工房長! ヒ、ヒビが! 卵にヒビが入りました!」


「ウオォ! 落ち着いてマリア! まずは庭園に出よう! 広い方がいい」


 そしてノアはマナフォンでロイたちを呼んだ。万が一も無いとは思うが暴れるような魔獣が出てきた場合は……


「マリア! どうなったの? 大丈夫?」


 ティアとリリアナ王女も駆けて、その後ミラ王女も到着した。全員が卵を中心に囲い込んでドキドキしながら卵を見守っている。


 ピキピキピキッ……ヒビが大きくなって広がっていく。


「マリア、そろそろ庭園に卵を降ろしたほうがいいわ。攻撃されるかもしれない」


 リリカのアドバイスを受け入れてゆっくりと卵を地面に置いて二、三歩下がる。


「「「…………」」」



 バリッ! 殻を突き破って頭が飛び出てきた。


「ピピィ〜! ピピィ!」


「なんだこれ? 鳥か?」


「「「か、可愛い!」」」


 どうやら雛鳥が出てきたようだ。ロイは危険な存在では無いと判断し、警戒を解く。女性たちは雛鳥にメロメロのようだ。


 ノアはコアから初めて生まれた生命に感動している。


「すごい! 本当にすごいよマリア! ついにやったね!」


 まるで自分のことのように喜ぶノア。そう、この苦労は二人にしかわからない。


「ロイ、リリカ。あなたたちに聞きたいんだけど、この獣は王国の民を襲ったりはしないかしら? あ、マリアごめんね。これは必要な確認なの。気を悪くしないで」


 ミラ王女の意図は理解できる。ノアもマリアも頷いてロイたちの意見を聞くことに。


「雛の段階ではどんな獣かもわからないし、なんとも言えません。ただ、魔族や魔物から感じる特有の気配が全くありません。邪気だったり、魔素だったり」


「うん。俺も直感ですが、暫くは問題ないと思います。ただ、問題は他にあります。マリアが自宅のある第2ブロッカエリアから王都に入って王宮までの道をこの雛と一緒に行動するとなると、ちょっとトラブルが起こりそうな気が……」


「確かにそれはありますね。しかもこの雛はあの超級魔人からの生まれ変わり。悪気が無くても万が一民に怪我を負わせてしまった場合は面倒ですからね……」


 ミラ王女はリリアナ王女とティアが抱き上げて可愛がっている雛鳥を見て決断する。


「マリア・セリーヌ。あなたとあなたの家族に王都リトルガイアの王宮付近へ居を構えることを命じます。そして少なくとも雛鳥が成長するまでマリアは王宮で常に雛鳥とともに生活すること。また、雛鳥が成長した後は王宮の管理下に置くものとします」


「……ミラ王女、私の……我がセリーヌ家は庶民で……裕福では無く、とても居を移す余裕がございません。しかも王宮付近なんて一等地にはとてもじゃないけれど――」


 ニコッと笑ってミラ王女が補足説明する。


「大丈夫よ。マリア。必要な資金は全て王宮から用意します。それから、あの可愛い雛鳥は今の私たちにとって、まだ未知の存在だということを理解して欲しいの。だからこそ、王宮内でマリアとノアを中心にしっかりと育てて欲しい。王宮管理と言っても体裁を整えているだけでマリアが育てることに変わりはないわ」


 ノアもマリアも異論はない。そしてティアたちも雛鳥に夢中だった。


「ねぇ、マリア。この子の名前はもう決めたの?」


 リリアナ王女の問いに、頷いて笑顔で答えるマリア。



「マリリンです!」



 掌サイズの雛鳥が嬉しそうにピピィと鳴いた。





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