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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第二章 魔王軍襲来

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第70話 卵 02

 ノエビラ王国では魔妖軍まようぐん軍長ダークエルフのミネーラが魔王ビタミナスにヒューマニア王国侵攻の詳細を報告していた。パリンとグラスを落として割るほどに動揺を隠しきれないビタミナス。


「ぜ、全滅だと? 我が魔王軍があの最()種族の人族に全滅だと!」


「……はい。間違いありません。私がビジョンで観ておりました。数は我が軍が圧倒しておりました。しかし戦術、魔術、戦闘力と全てにおいてヒューマニア王国が上回っており……完敗でした」


「魔人軍三千の軍勢はどこへ行ったのだ? なぜこの戦いに現れなかった?」



「テレポートする以前に壊滅したものと思われます。テレポート先も想定していた王都周辺ではなく、王国から少し離れたガイアの大地でした。しかも窪地に集められ転送された瞬間に魔土術まとじゅつの集中砲火を浴びて……」


「つまり……王宮と王都にはなんらかの方法で強い結界を張られ、テレポート用に邪念晶を運んだ魔鳥はまんまと操られて窪地に追いやられた。全てめられたというわけか?」


「……はい。おっしゃる通りです」


 怒りがおさまらないビタミナス。優秀な部下を失ってしまった。ミネーラを睨みつけながら震える声で迫る。


「グルテナスとポリフェスをやったのは誰だ!」



「は、はい! 黄金の大地の英雄ロイ・グリードとノア・グリードと名乗る者です!」



「ロイ・グリードか……今でも人族最強ということだな……それからもう一人の名は初めて聞くな。ノア、()()()()だと?」



「お、おそらくロイの息子かと……」


 ドゴン!


 巨大テーブルが叩き折られた。怒りに震えるビタミナスに恐怖する魔族。


「ミネーラ! 四大魔軍軍長が小さなガキにやられたというのか? ロイの息子なら10歳程度のガキではないか! いい加減な報告をするな!」


「いえ! まさにその通りなのです! 10〜12歳の子供に見えました。しかし、そのものの戦いは最早ロイと同等の強さのように感じました」


「な、なんだとぉ〜」


 言葉を無くす魔王と側近たち。最弱の人族の子供にやられてしまったという衝撃的な事実。しかし、この時本当にノア・グリードの恐ろしさを理解していたのはミネーラ一人だけだった。


 ミネーラは直感でロイよりもノアの方が脅威となる存在だと気づいたのだ。だがそれをこの場で説明しても誰も理解してくれないということもわかっていた。



「このままでは終わらさんぞ……ロイ・グリード。そしてノア・グリードよ。必ずお前たちはこの魔王軍が始末してやるからな」





 * * *




 朝早くマリアがワクワクしながら工房の扉を開ける。


「えぇ! 卵が割れてる……ん?」


 足元をよく見るとノアがショックのあまり倒れている。きっと楽しみで早朝から工房へやってきたんだろう。


「クッソ〜。どうしてだ……完璧にマナは注いだし、卵になったじゃないか!」


 状況に納得していないノア。試せる超級魔人のコアはあと2つ。二人は再び状況を整理することに。


「卵になったところまではいいと思うんだよ。あとは孵化ふかするのを待つだけだと思ったのに……」


「そうですね……私、昨日の夜ずっとマナを注ぐ訓練をしていたんですよ。今日楽しみにしてきたんですけどね。これじゃぁ卵にできても割れるだけですね……」


「卵に結界でも張ったらいいのかな?」


「えぇ? でも敵が来るわけでもありませんし……」


 そこへミラ王女がやってきた。


「ノア、マリア〜おはよう! ん? なんか元気ないわね?」


「ミラ王女。おはようございます。実は……」


 マリアがミラ王女に状況を話す。難しそうな顔をする二人にミラ王女がサラッと一言。


「それって孵化するまで温めないとダメなんじゃない?」


 ぽかんと口を開けてミラ王女をみる二人に呆れるミラ王女。


「あなたたちとてもすごいけど、やっぱり頭のネジがどこか抜けているわね……マナとはいえ、生命を宿すなら愛情もって育てる意識がないとダメよ」


「なんてことだ……も、盲点だった…………」


「だからノアがおかしいだけだって」


 早速試そうとするノアにマリアが静止する。


「ノア工房長! ちょっと待ってください。ここは焦らずに進めましょう。本当に温めるだけなのでしょうか? もしかして、卵になった後もずっとマナを流し続ける必要があるのでは?」


「……確かに! 素晴らしい指摘だマリア!」


(…………この光景も、大分見慣れたわね)


 そしてノアとマリアは超級魔人のコアにマナを慎重に注ぎ込んだ。そして今度は二人とも無事にコアが卵へと姿を変えた。



「やったね! マリア!」


「はい! やりました! よ〜し、今から温めますよ!」



 初めて卵に変わった状況を目にしたミラ王女も興奮してノアの卵に触れようと手を伸ばす。


「へえ〜、すごいね! 本当にコアが卵に変わるなんて。ちょっと触らして……」


 ピシピシ!…………パリン!


「あぁ!!」


 ミラ王女としては優しく撫でたつもりだったが、割れてしまった……少し卵が敏感過ぎる気もするが……


「えぇっ! ごめん! 割れちゃった。ノア本当にごめん」


「ミラ王女〜、ひどい! 超級魔人のコア、もうなくなっちゃった……」


 ミラ王女から卵を遠ざけて守ろうとするマリア。もはや顔が母親になっている。


「ちょ、ちょっと……マリアまで。今のはたまたまよ!」


 落ち込んで卵の残骸を片付けるノア。暗く重たい空気が工房内を漂う。


「わ、わかったわよ! 今度王宮に保管してある超級魔土レアラをいくつか工房に無償でおろしてあげるからそれで許して。ね?」


 ノアの耳がピクピクッと動いて即座にミラ王女の両手を握る。


「ありがとうございます。お優しいミラ王女は僕にとって無くてはならない存在です。それではご厚意に甘えて、遠慮なく超級魔土レアラを10ほど、よろしくお願いします!」


 握った両手をブンブン振ってキラキラした目でミラ王女を見つめるノア。


「よ〜し! じゃあ僕は魔軍軍長のコアを使って卵を育てるぞ!」



(こいつ……他にもコアがあったのか……完全に騙された……)



「うわ〜これはすごい! やっぱり軍長のコアは構成から違うわ! いくぞ……マナ注入だ!」



 マリアはもう自分の卵のことで頭がいっぱいだった。自作のスリングを取り出して片方の肩にかけて卵を大事に入れる。そして満遍の笑みでマナを注ぎ続けていた。


「…………」



「あともう少し……これは手強いぞ……頼む、なんとか卵に……」


 そしてノアの手元に新しい卵が形成された。


「やったぞ! 無事に卵になった!」



「ノア工房長。このスリングをお使いください! これはスリングにマナを流すことができますから卵にマナを注入し続けるのが楽ですよ!」


「わかった! ありがとう! 使わせてもらうよ。よくこんなスリングを事前に作ってたね? なんのためか知らないけど」


「いやぁ、私もここで役に立つとは思いませんでした!」



(……こいつら、同じだ……同じソイラマニアだ。ついにマリアもこうなってしまった)



 工房を覗きに来ただけで、どっと疲れが溜まってしまうミラ王女だった。



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