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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第二章 魔王軍襲来

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第69話 卵 01

 ノアが魔土術まとじゅつ学院の講義に向かうといつも以上に多くの受講生がノアを拍手で迎えてくれた。


「ノア先生、ヒューマニア王国を守ってくれてありがとう!」


「私たちも魔土術の勉強をもっと頑張ります!」


 あぁ、なるほど。と理解して教壇に立ち、得意の嘘くさい鼓舞で学院生のやる気を高めるノア先生。


 そしてこの頃からオコール・アングリーは上級貴族のプライドを捨てて必死に努力し始める。彼は有志の集いで魔人との戦いに参加し、あの戦地に赴いていた。しかし、初めて見る魔人や魔獣に対して腰が引けてしまい、弱々しい魔土術を数発撃って終わっていた。


 そんなオコールの目に映ったのは戦地前線で超魔人相手に必死で戦って勝ち続けるヘンリーの姿だった。魔土術学院の実習講義で既にオコールはわかっていた。自分がヘンリーには勝てないということを。ヘンリーが自分の存在など眼中にないということを。


 既にわかっているつもりだったが、戦地で実際に見た彼の勇気と技術の高さ、そして腰が引けて何もできない情けない自分を比べてしまい全てが真っ白になってしまった。


「馬鹿だったのは俺の方だ。あいつはちゃんと努力していたんだ。これからも差は開いていくだろう。でもせめて俺ができることをやらないと!」


 自主退学したミスバッカやヘッポコットとは違う。必死で自分を変えようとする上級貴族オコール・アングリー。今回の戦いが心に強く響いて努力と成長を誓うオコールのような貴族学院生は実は少なくなかった。


 このことが王都魔土術学院の学院生のレベルを大きく変えていくことに繋がっていく。



 王宮図書の間の書籍全てを読破したノアは最近魔土術学院のミネルヴァ校長個人の図書室へ入り浸っている。いちいち鍵を借りに来られるのも面倒だからと合鍵を渡されるくらいだ。


 そこでノアは『魔族誕生』という書籍を見つける。ペラペラとページをめくりながら魔族に対する自身の認識がどれくらい正しいかを再確認していた。


「ふむふむ。大体僕の理解と書籍の内容は同じかなぁ…………ん?」


 邪念に関する表記で気になる箇所を見つける。


《邪念とは魔族へ変貌する前の生命体に大きな負荷が掛かった際に生じる負のエネルギーであり、正のエネルギーであるマナとは相反する関係にあるがその原理は同じと言われている……そしてマナエネルギーを多く持つものが魔族になった場合、邪念の器も大きな魔族となるため……》


「なるほど。ここまではっきりした構成だったんだな。マナと邪念は同じか……これはいいことを知れたぞ」



 早速得られた知識を学院の食堂でマリアと共有する。



「そういうことなんですね……逆に考えれば、あのコアをマナが動力となるように改良できればいいんですかね? 真逆の効果を与えればいいとか」


「そう! 僕もそう思うんだよ。マナコアを持った種族が邪念を持ち魔族へ姿を変えるときに邪念コアが形成されるわけだよね。つまり邪念コアはもともとマナコアだったんじゃないかな?」


「なるほど……でもノア工房長、マナコアは物質ではなく概念的なものですよね? あんな風に物質として私たちの手元にある状態って……」


「うん、マリアの言う通りだ。おそらく邪念コアへと変わる際に物質化されるんだろうね」



 ノアとマリアのコアに対する考察がどんどん白熱する。食堂にいた周囲の学院生たちはその異様な雰囲気から本能的に離れてしまうほどに。


「多分、僕たちがやることは魔人コアにマナを注ぎ続けることだと思う」


「マナを注ぐわけですから再び魔人に戻ることはありませんからね。安全ですね」


「うん、そのはずだ。そして僕がマナを注いで、そのコアが無事に成長したとしても()()()()()()ことは考えられない。人族の生命とマナは別物だしね。マナから身体構造を再現できるわけないから」


「私たちは存在しえない物質化されたマナコアを生み出すってことなんですね」


「そう、つまり……やはり魔物だろうね」


 マリアが動揺する。この手で恐ろしい魔物を生み出す? そんなことはできない。


「マリア、魔物は魔土ソイラの魔素を吸って生み出されると言われているよね?」


「……はい。低級魔土ローソイラ層には弱い魔物が、高級魔土ハイソイラには強い魔物が生まれると考えられていますしね」


「まず僕が立てている仮説なんだけど、種族が持つマナと魔土ソイラに含まれる魔素は厳密には何かが違う。マナはより神聖力を持っているというか、魔物を生み出す要素がないというか」


 うんうんと感覚ではわかるという反応のマリア。


「つまり、このコアにもしも魔土ソイラの魔素を注いだら多分魔物が生まれると思う。だけどマナを注いだらそれは魔物ではなく、種族でもない、別の何かが生まれると思うんだ」


「確かに! これまでマナから生命が生まれる事例はありませんよね? もしも実現できたらガイアの歴史上、初めてのことかも知れませんよ!」


「うん。こういう未知なる研究、新しい発明、本当にたまらないよね〜」


「……ノア工房長、時々思うんですがとても11歳とは思えないです。思考も話し方も」


「昔からみんなにそう言われているよ。アハハ」



 魔土学院から王宮に戻りノアたちは早速超級魔人のコアを取り出して実験を開始する。


「それじゃあ、始めるよ」


 ノアがマナを注入し始める。するとコアの色が灰色から徐々に白色に変化し始めた。


「お! いいぞ、これはきっとマナコアへと変わろうとする段階――」


 ピキ……ピキピキ……バリン!


 コアが割れてしまった。


「あ……」


「…………」


「割れちゃいましたね」


 割れたコアの破片をじっくり観察するノア。


「この割れ方……うん。間違いない。マナを拒絶したんじゃないぞ。一度に大量のマナを注入し過ぎて割れたんだ! これはいける!」


 色々と議論を重ねて、もう一度チャレンジ。今度はマリアとノアがそれぞれ一つコアを手にとって再びマナをゆっくりと注入する。


 マナが完全に白くなり、淡い光をまとい始める。ピシッとマリアのコアにヒビが入ってしまった。


「え? すごく繊細にやっていたつもりなのに……」


「マリア、コアの修復箇所を優先してマナを送り込むイメージだ」


「え? 修復箇所とかわかるんですか?」


「この前教えたサーチライトスキャンをかけるイメージでコアを覗いてみたらわかるよ」


 ノアは空の概念を活用し、必要なマナの量を必要な箇所へ流している。光はどんどん強くなったが、やがて徐々に消えていく。その代わりにコアを覆うように何かが形成されていく。


「ノア工房長。こ、これはまさか……」



「……卵だ」




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