第68話 楽しいお土産とみやげ話
戦いを終えて、ロイたちはブロッカ地域まで戻って来た。ミネルヴァ校長と魔土術学院の生徒たちがロイたち王国騎士団が笑顔で戻ってくるのを見て歓声をあげる。周囲のブロッカ市民はまだ王都へ避難しているせいか、ノアが普段見ていたブロッカとは違う、少し寂しい静かな雰囲気になっていた。
「王国騎士だ!」
「ロイ・グリードだぞ!」
勝利の報告を聞き、学院生たちがホッとした表情でその場に座り込む。ミネルヴァ校長はあえて伝えなかったみたいだ。
「君たちもよく頑張ったね。初めての実践で身体もかなり疲れていると思うからじっくり休んで、明日からまた学院で一生懸命に魔土術を学びなさい。今日みたいに魔族に襲われても王国を守れるようにね! 今日は本当に立派だったぞ!」
英雄ロイ・グリードが自分にくれた言葉だと、感動する学院生たち。彼らはきっと王国の立派な魔土術士として成長するだろう。
「ティア!」
リリアナ王女が駆けつける。
「リリアナ! リリーキャノンすごい一撃だったね。真下から見た迫力がやばかったわ。こっちまで吹っ飛びそうだった」
「うまくいってよかったわ。ティアは怪我とかしなかった?」
二人とも無事でよかったと笑顔で抱き合う。その感動をスルーして早く工房へ戻りたいノアだったがタングス先生たちに捕まって色々と質問攻めに遭う。
兎に角、軽く見渡した限りではあるが、ブロッカエリアも無事のようだとロイは胸を撫で下ろす。王宮からはリリカより何も奇襲はなかったと連絡をもらっていた。つまりヒューマニア王国は完璧に魔王軍に勝利したのだ。
今回の作戦はロイ、ノア、ティア、ヘンリーを含む王国騎士団が前衛を、少し下がったブロッカエリアにはリリアナ王女と後から合流したミネルヴァ校長、エミール先生、タングス先生等他数名の魔土術学院教員と学院生が敵の奇襲に備えて守備を固め、さらに万が一の事態に備えて王宮にリリカとミラ王女が留まり、万全の体制で魔王軍の奇襲を警戒していた。
「それじゃあ、みんな。王宮へ戻ろうか」
* * *
王宮でミラ王女たちと合流したロイたちは王族が無事だったのだとやっと確認できた気がしてホッとしていた。そして大喜びする家臣たちを見てロイは久々に戦場へ出たんだなと実感する。
「ロイよ。ヒューマニア王国の危機を救ってくれて本当にありがとう」
国王からの感謝の言葉に王国の民、全員での勝利だと返事して二人で笑う。
「これが種族間の争いかぁ……」
ノアの言葉の意味をミラ王女はよく理解していた。
「ノアも本当にお疲れ様! ありがとうね!」
ニコッと笑ってその場を立ち去ろうとするノアの肩を掴んで離さないミラ王女。
「ところでノア。あなた王国に危機が迫っている戦いの中で、何かほざいてたわよね? コアを狙うな? あれ、どういうことかしら? まさか研究に使いたいとか、そんな個人的な欲求のためではないわよね?」
「ゲッ! いや、あれは……ちょっぴりそういう意味も無くはない程度で……」
両こめかみをゲンコツでグリグリと圧をかけられながら、ミラ王女に説教される。それを見て笑っているロイやティアたち。もう何回目だろうか。
「まぁ、でもよかった。無事に勝てたし、アレも手に入った。魔族軍長レベルのコアが2つと超級魔人のコアが5つ!」
その後、ミラ王女の追求からなんとか脱出して工房へ向かうノア。マリアが笑顔で迎えてくれた。
「ノア工房長! ゴーレムは活躍しましたか? どのような戦利品がありましたか?」
(段々とマリアがこっち側の人間になっているような気がするが……まぁいいか)
マリアが淹れてくれたお茶を飲みながら戦いの話で大盛り上がりする二人。そう、こういう話がしたかったとノアは思った。
「えぇ! 小さな石を媒体にして戦況を観ていたんですか?」
「あぁ。間違いない。鳥の身体に設置してね。あの技術は僕らも活用できるはずだ。ミネルヴァ校長は魔土術で僕たちの戦いを観ていたから、邪念専用の術式では無いことは確かだ。これはマリアへの宿題にしようか!」
「そ、そんな楽しそうな課題をいただけるんですか? 嬉しいです!」
「材料は工房のもの使っていいよ! 必要なものがあれば僕に言って。ミラ王女にお願いしたら大丈夫だから。いつも僕ばかり提案するのは面白くないでしょ? すでに実例もあるし、魔土を使って映像を遠隔でみれるような仕組みを僕たちでつくろう! そしたらさ、僕たちが冒険しているその風景が、ヒューマニアの人たちにも伝えられるんだよ!」
「いいですね! やりましょう! ノア工房長の無謀な冒険がリリカさんやミラ王女に知られちゃいますね」
「ゲゲッ! そうだ。そういう欠点もあるのか……じゃあ、オンオフ機能もつけよう。観せたくないときは映像を止めることができるようにね」
話は盛り上がり、ゴーレムの話題になる。
「いや〜やっぱりリリアナ王女の一撃はすごいですね! それに耐えた魔族にもびっくりですけど」
「そうなんだよ。邪念って相当なエネルギーなんだなと感じた。その邪念を持つ魔人の中で上級魔人を超える存在である、超級魔人のコアがなんと五つだ!」
「えぇ〜! こ、こ、これは素晴らしい!」
「待て待てマリア! 驚くのはまだ早いぞ! なんと! その超級魔人の上をいく存在の四大魔軍の軍長コアが2つだ! これはやばいぞ〜」
「ガァ〜ン!! これは参りました! もしかしてこれは超級魔人のコアで試作を作れるということですか!」
「その通りだ! 豪華過ぎる!」
「なんて楽しみな状況なんでしょう!」
キャッキャと嬉しそうに騒いでいる二人の話を工房外側の壁にもたれ掛かって聞いているミラ王女。工房へ入らずに、そのまま笑顔で王宮へ戻るため庭園を歩き始める。そして綺麗に晴れた空を見上げて改めて口にした。
「あんなに喜んでいるんだから、お説教はここまでにしておきましょう。今日は本当にありがとう、ノア」




