第63話 ミラリア起動!
「ちょっと、パパ。私も前線で戦うわ!」
「いや、ティア。聞いてくれ。俺もそうしたいところなんだが、王宮には鉄壁の魔土術士が最低2名必要だ。魔土術学院の先生は生徒をフォローする必要があるし、王女さまは二人ともゴーレム操作で身動き取れないからな。最初はリリカとティアと3人で王宮で待機だ」
「ん? 3人ってどういうこと? ミラ王女のこと?」
笑って首を振るロイ。
「ノアだ。ノアも最初は王宮に待機だ」
周囲がざわめくがロイには考えがあった。
「おそらく魔王軍は正面突破だけではない。何かを仕掛けてくるだろう。その何かに対応するためにお前たちは王宮に待機だ」
「何かを見つけたら僕がテレポートで移動すればいいんだね?」
「そうだ。ノア、前線のブロッカエリアでは俺とヘンリーがマナフォンを持っている。コンクーリ地域では所持者がいないからミネルヴァ先生に一つ渡してくれ。これですぐ状況を共有できる」
「マナフォン? それはなんですか?」
ミネルヴァ校長が興味を示す。ノアが一つ校長に渡した。
「これが最後のマナフォンです。身体のどこかに触れるようにつけてください。そしてマナを流してみてください。今はエリアを広げてブロッカ地域まで余裕で皆と会話できますから」
試してみたミネルヴァ校長が喜んでいる。相当気に入ったようだ。
「それでは今から解散とし、格部隊で人員の確認を行いましょう。特に学院生は有志で募りますよね? どれくらい集まるかわかりませんし。配置に関しては明日最終決定としましょう」
今日の会議は終わった。ノアは早速ミラ王女に確認し、コンクーリの街にプレートを埋めこむことを相談する。当然、国王も許可を出し、早速工房で製作にかかった。次の日の早朝、ノアとマリアとミラ王女とヘンドリックの4人でコンクーリに結界プレートを仕込んでいく。
「よし! これで六箇所全て埋め込み完了だ! 王都に戻っていよいよ結界設置だ!」
「皆、手を繋いで。マナが繋がった状態で。行きますよ、テレポート!」
一瞬で景色が王宮の庭園に切り替わる。
「本当にすごいわね。さすが古代魔土術だわ」
ヒューマニア王国で使えるのはノアとミネルヴァ校長だけだ。相当なマナコントロールが要求されるため、リリカですら使用するのをためらっている。
「早速始めますよ! 魔族がいつ攻めて来るかわかりませんからね」
ノアが結界ユニットを持ち出して、ふと考え込む。
「どうしたの? 何か問題?」
「…………このユニットの名前を考えないと」
「なんでもいいわよ! 早く決めなさい」
目の前にミラ王女とマリアが並んでいる。
「じゃあ、結界ユニット『ミラリア』にします」
「ミラリア……悪くないわね」
ミラ王女が結構気に入ったようだ。名前が決まってスッキリした表情のノアがいよいよミラリアを起動する。
「よし! それじゃあ、今回もやっぱりミラ王女。最初のマナ注入をお願いします」
緊張した面持ちで見守るマリア。ミラ王女がミラリアに手を触れてマナを流す。
ミラリアから光が空へ放たれてそこから一気に王都全体を覆うように結界が構築されていく。
「そのまま行け〜!」
「お願い! 最後しっかりと掴んで!」
マリアの祈りが届いたのか、結界はしっかりと地面に設置したプレートと連結されて王都リトルガイアを包み込む結界がついに完成した。
《皆さん! ついに結界が完成しました。これで魔族は王都へは近寄れません!》
ミラ王女が嬉しそうにマナフォンで伝えた。
歓喜の声を上げるロイやリリアナ王女。そしてノアはホッとしたのか庭園に大の字で倒れこみ、空と被ってはっきりと見える結界を眺めていた。
「うん。完璧だ。これは破られない」
* * *
その頃、ノエビラ魔王国では魔人軍長グルテナスと魔獣軍長ポリフェス、そして超級魔人200人と魔獣軍2000頭が邪念術でテレポートする準備を整えていた。
「ミネーラさん、我々はいつでも出陣できます」
グルテナスの言葉に笑ってOKと返事する魔妖軍長ミネーラ。
「それじゃあ、飛ばすわよ。王宮の入り口あたりに。あっさり終わらせて来なさい」
「勿論です。期待していてくださいよ」
ミネーラが詠唱し、杖を振り上げる。
「邪念術、テレポート!」
パッと消えた二千もの軍勢、しかしその後すぐにパッと現れてしまった。
「んん? どうして?」
「おい、ミネーラ! さっさと送り込め!」
ポリフェスが煽っているが、ミネーラは理解できていない。ノアがほんの10分ほど早く結界を張ったことを。
「おかしいわねぇ……もう一度行くわよ!」
パッと消えて再びパッと現れた。
「おい! 何をやっているんだ!」
「この人数結構疲れるのよ……二回も弾かれたってことはもう間違いないわね」
「ミネーラさん、どうされたのですか? 何かトラブルでも?」
「ヒューマニア王国に結界が張られたわ。私達魔族は中に入れないわ」
「な、なんですって? そんな馬鹿な……あのちっぽけなゴミ魔土術士たちが王宮を包み込むような結界を張るなんて……何かの間違いでしょう」
「わからないわね……グルテナス、王都もほとんどが高級魔土で作られているのかしら?」
「一部の上級貴族の屋敷などはそうですね」
「それじゃあ、一旦そっちに飛ばすわ。 ちょっと荒っぽいけど……テレポート!」
パッと消えて再びパッと現れた。同じことの繰り返しだ。苛立つポリフェスと混乱するグルテナス。大規模の移動邪念術を使ってかなり疲れているミネーラ。
もう一度王都内でやってみたが、やはり同じことだった。
「これで確定ね。ヒューマニア王国の王都リトルガイアは現在結界を張っている。しかもかなり頑丈な結界を」
「な、な、なんだと〜!」
頭を抱えるグルテナスを見ながらミネーラは感じていた。
(この戦い、そんな簡単なものではなさそうだわ)




