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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第二章 魔王軍襲来

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第59話 結界を張る方法

 ノアとミラ王女とマリアは魔族襲撃対策として壮大な計画を練っていた。

 それは王都リトルガイアを包み込むように聖属性魔土術(まとじゅつ)で結界を張ることだった。


「前回の王室での一件、あれは魔族が邪念術の移動系を唱えたんじゃないかと思うんだ。僕らで言うところのテレポートだね。王都内に簡単に侵入されるのを防ぐために結界魔土術を永続的に張れないかな?」


「どうやってそんな巨大な結界を張るつもりなの? しかも永続的って……」


「いやいや、それを考えるために、こうして工房に3人集まっているんですよ」


「すみません……私は聖属性魔土術を使えなくて」


「マリア、知恵を出し合おう。細かいことは気にしないで大丈夫 」


 ノアはテレポートがものすごくマナを消費してしかも移動の際の出発地点と到着地点にハイソイラ以上の魔素を含んだ魔土ソイラが必要という点に着目した。邪念術と種類が違っても原理は同じではないかと。魔土ソイラの魔素を利用できない魔族でも魔土ソイラが持つ魔素のパワーを移動対象にして唱えているのではないかと。


「結界を張れたら少なくとも王都内への侵入や外部からの邪念術の攻撃をある程度防ぐことができる」


「それはそうだけど、絶対に無理よノア。規模が大きすぎるわ」


「それに長期間維持するなんて人族が放つ魔土術では不可能かと……マナも使い切ってしまうでしょうし」


「…………」



「ねぇノア。あなた何かアイデアがあるんでしょ? そろそろ教えなさいよ」


 ミラ王女から突っつかれたが流石に今回はノアでも完成イメージが簡単にはわいてこない。しかしアイデアはあった。



 ノアは魔土ソイラ製テーブルの天板にゴリゴリ棒でスケッチを描き始めた。

 3枚の正方形プレートが立体的に上下3層揃って描かれている。一番下に人族が一層目のプレートに手を伸ばしているように見える。


「……なにこれ。謎の暗号?」


「あははは。確かにある意味、暗号かもしれません」


 笑って説明を始めるノア。最初に人族の手から矢印を1枚目のプレートへ引っ張る。


「ここにマナを注入します」


 1枚目のプレートの横に《古代魔土術バイスキル》と書く。そして2枚目のプレートに向かって矢印をしてプレート横に《聖属性魔土術結界》と書く。さらに矢印を引いて3枚目のプレートへ。《放出調整プレート》と書いた。


「……なるほど。詠唱を刻印するということですね」


「そう! さすがノア工房の助手だけあるね」


「ちょ、ちょっと待ってノア。この古代魔法ってどういうこと? 誰が使えるのよ」


「僕が使えます。これは魔土術学院のミネルヴァ校長から許可をもらって校長私用の魔土術図書室に入って本を読んでいたんです。その中の一冊に書かれていたもので、大体構造がわかったから詠唱式に置き換えて試したらできました。魔土術の威力を数倍に高めてくれる補助系魔土術の大技ですね」


「…………」


 ちょっとイラつくミラ王女。マリアは興味をかなり示している。



「刻印とは素晴らしいアイデアですね。確かにこれなら誰でもマナを注ぐだけで結界を張れるということになりますね。実現できればですけど」


「ポイントはこの3枚の刻印プレートの関係だ。今回は人族が直接放つ魔土術とは構成が違う。つまり補助系魔土術でバフをかけてもらってから魔土術を唱えて放つという流れができない」


「あぁ〜なるほど。なんとかして、結界の魔土術とバイスキルによる効果倍増の魔土術を同時にかけるようなイメージで構成しないとダメなんですね」


「そうそう。そして最後に放出板につなげて空へ向かってパァッと広げるんだ。それで王都を包み込む結界の完成。うまくいけばだけど」


 真剣に話を聞いていたミラ王女が確認する。


「ねぇ、この装置がすごいことはわかったわ。それがノアのイメージ通り使えるとした場合、マナを注ぎ込むのはどれくらい必要なの? それをどれくらいの頻度で?」


「鋭いですね。おそらく王宮騎士団の平均マナ量で考えると、1日あたり1人分のマナ消費という想定です。その日マナを注入した兵士は戦えないくらいにヘロヘロになりますけど」


「……なるほど。それなら維持できそうね。わかったわ! この装置の開発に必要な費用は王国から出すように国王に進言しておきます。ノアとマリアはなんとか実現させるように頑張って!」


「「了解です!」」



 その後、ノアとマリアは刻印プレートのサンプルを製作してみた。高級魔土ハイソイラ製の結界術を施したものだ。刻印はマリアが丁寧に詠唱文字を掘って完成させた試作品。ノアはまず、このアイデアをウサ爺に見せるため空の間に向かった。

 魔土ソイラによる刻印プレートをどう作成するかで装置の威力が変わってくるからこの過程は雑にできない。


「ウサ爺なら何かアドバイスをくれるかも知れない。この刻印版の精度はできるだけ高めないと」




 * * *





 一方リリアナ王女とティアはリリカとガイアの大地で魔土術の訓練をしていた。王宮の訓練場では周囲を破壊してしまうため、渋るノアから強引にフルーゲを借りて、王国から少し離れたところまで移動していた。



「この辺の魔物も全て倒したわね。それじゃあ、二人で模擬戦よ。私が二人に防御系魔土術をかけるから遠慮なく打ち込んで」



「「はい!」」


 ティアが無詠唱でいきなりリリアナ王女に向かってラ・ファイアを打ち込む。リリアナ王女オリジナル風の防御系魔土術が身体を中心に円柱形状の竜巻を起こして炎を寄せ付けずに吹き上げてしまう。


「あなたその防御魔土術を無詠唱で? コソコソ訓練してたでしょ?」


「うん! ティアの無詠唱見てたからね。今度はこっちの番よ!」


「ウインド!」


 一般の風属性魔土術の何倍だろうか。大きな風を受けてティアが後方へ吹っ飛んだ。しかし、ティアが風をかわすように空を飛ぶ。


「え! 飛んでる?」


 いや、風魔土術を自身にかけて器用に身体を飛ばしているようだ。このマナコントロールはリリアナ王女にはできない。



「お兄ちゃんオリジナル魔土術<火炎弾>」


 ティアの指先から圧縮された炎の弾丸がリリアナ王女の防御を突き抜ける。


「うわっ!」


 リリカのバフのおかけでダメージは少ないがそれでも衝撃は重い。ガイアの大地に着地したティアがリリアナ王女に迫る。



「ウインドウォール!」


「アガッ!! 何これ! 進めないわ」



 負けじとリリアナ王女も風を圧縮して一瞬だが壁を作り出す。ティアが怯んだ隙をついて渾身の風魔土術を放つ。


「ウインドアロー!」


 風の矢がティアを射抜く直前にその向きを変えて通り抜けてしまった。


「えぇ! どうして?」



「はい! そこまで!」


 そしてリリカが模擬戦を止める。


「勝者はティアです。リリアナ王女、とても素晴らしかったですよ!」


「あ、あのどうして勝者が決まったのですか? 確かに攻撃はティアにかわされましたが――」


 リリカが首を振ってリリアナ王女が立っていた場所の足元を指差す。


「ガイアの地面から水が少し出ているのがわかりますか? あれはティアが仕込んでいた水属性の魔土術です。私が止めていなければ防御を張った風の中から突然水が吹き出して王女へ……」


「嘘……そんなところに水を仕込んでいたの? あの状況で?」


「結構焦ったよ。リリアナの風がやばすぎてね」


「あのたくさんの風の矢が急に方向を変えてしまったのはなぜ?」


「あぁ、すべての矢に私も風の魔土術で応戦したのよ。ものすごく風を圧縮したものを飛ばして矢に当てたの」


「……あのすべての矢を? あの一瞬で?」


「うん。ほら、お兄ちゃんの授業でさ、私だけ小さい炎出せって言われたでしょ? しかも狙う箇所を決められて。あれを数ヶ月やらされたから」



「す、すごいわ! さすがティアね!」



 本当は二人ともすごいと思うリリカだったがそれは言わないでおいた。まだまだ上達しなければならない。魔族から王国を守るために。







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