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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第一章 ヒューマニア王国

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第53話 S級ダンジョン探掘報告会 02

 ミラ王女はダンジョン攻略の詳細を語り始めた。静かに聞いていた聴衆にどよめきが起こったのはS級層に到着後、ノアによって高級魔土ハイソイラの地面と壁をモグる事に成功したエピソードだった。


「なんと……あの高級魔土ハイソイラの硬い地盤を掘り進めたというのか……」


 モグラーギルドのギルドマスター、ボイドも感嘆の声をあげる。不思議なことに誰も疑うような声を上げない。なぜならここにいる者は皆知っている。ノア・グリードならやりかねないと。


「どのように掘ったかはノア・グリードより説明致します」


 そしてノアが楽しそうに三代目探掘刀の話とモグッた時に感じたことを詳しく説明する。驚きはするものの、やはりこの話、ボイドくらいしか興味を持っていない……いや、よく見るとマリアがものすごく目を輝かせてノアの話を聞いて頷いている。


(やっぱりマリアは興味があったんだな。思った通りだ……)


 ミラ王女のダンジョン攻略の話に驚かされる点はやはりそのパーティーの人数だ。たった2名での踏破は前代未聞。リックを始め、ダンジョンに入った経験のある者は皆驚きを隠さない。


「ま、魔物はどうやって倒したのですか?」


「お答えします。主にノア・グリードがオリジナル魔土術で一掃し、残った魔物を私が炎系魔土術で焼き払うというスタイルが基本でした。様々な魔土術を試したいというパーティーリーダーノアの無謀な要望で、S級魔物の群れを相手に楽しんで撃ち込む場面もありました」


「ちょっ、ちょっとミラ王女! 言い方! 言い方」


 焦るノアと、やはりなとばかりに額に手を当てるロイとリリカ。


「ハッハッハッ! それは誠か! さすがノアじゃな!」


 国王が笑ってくれてホッとするノア。


 しかし、クライマックスのゴーレムエピソードを聞いて謁見の間全体が静かになる。


「は? おい、ノア……お前ハイソイラゴーレムを持ち帰ったって本当か?」


「はい。後ほど獲得した全てをお見せしますが、そこにゴーレムも入っております」


 騒ついている。明らかに場が騒ついている。ミネルヴァ校長が大笑いしている。


「それでは今から探掘した品々を報告致します! 後ろにいらっしゃる方々、お手数ですが両側に移動してください」


 なぜ、移動させる必要がある? 全員がそう思ったがその数秒後に納得する。



「まずはハイソイラです! 数量は数えておりません!」


 ミラ王女の一声に合わせてノアがアイテム袋から一斉にハイソイラを出し続ける。それは謁見の間の中央部分を全て占領するほどの面積をとり、高さも3メートルを優に超えている。とんでもない数量だった。



「……嘘だろ? ノア……………………モグり過ぎ」


 ロイとリリカは何かを諦めた。もうどうにでもなれと思っている。

 しっかりとルールに反していないことをミラ王女が説明したがそこでは無かった。


「ノ、ノアよ。お主、これを一人で掘ったと申すのか?」


「はい。国王陛下。おっしゃる通りでございます。私が丁寧に地面と壁を探掘し続けました」


「ボイドよ。お主はこの量のハイソイラを掘ることができるか?」


「国王陛下、私には不可能です。たとえノアの探掘刀を持ってしても不可能です。彼にはモグラーとしての才能が有り過ぎて、我々の想像を軽く超えてきます。ざっと計算してモグラーギルドの優秀なモグラーを50人手配して可能かどうかという数量です。しかも探掘の精度が高い。良質な状態です。参りました」



 歓声が湧き上がる。マリアが感動して泣いて、ティアは大笑い、リリアナ王女は目を輝かせている。ヘンリーは……始まる前からすでに放心状態だ。



「続きまして、レアラ少々、超聖水、完全回復薬エリクサー、ハイソイラの防具、ハイソイラの剣、希少食材などその他多種類。数量は数えておりません。大量です」


 ノアが袋から出し続ける状況に口があいて塞がらない。次々と出し続けるノアに誰かがアイテム袋の指摘をした。


「どうしてそんなにアイテム袋の中に入れることができるんですか?」


 ミラ王女が代わりに説明する。



「なんと、レアラを素材としてオリジナルのアイテム袋を作ったじゃと?」


 ボイドが再び唸る。ミラ王女は止まらない。いよいよ回収した魔物の死骸お披露目だ。


「ソイラグリズリー19頭」


「ギャァー!!」


 出てきた熊の死骸にパニックになる聴衆。こんな巨体のS級魔物をたった二人で?

 ミネルヴァ校長は大興奮だ。


「国王陛下! 私から一つ進言がございます!」


「ん? なんだミラ。言ってみよ」


「このグリズリーの死骸を数体魔土術学院に寄付し、剥製を製作して魔土術を放つ訓練や魔土戦士ソレイヤーの打ち込み訓練で活用するのはいかがでしょうか?」


「うむ。その意図を述べよ」


「はい。現在私が見た限りですが、学院生は実践経験が乏しく、魔物に怯えて本来の力を発揮できない状況です。そこで講義の場で、このS級の大きな魔物に目を慣れさせることにより、多少の恐怖心を取り除けると考えております」


「うむ。なるほど。ミネルヴァよ、お主はどう思う」


「是非、お受けしたいと思います」


 国王の許可も得て、無事に事を進めていくミラ王女。これもノアの助言だった。

 更に報告は進み、いよいよゴーレムを取り出す。



「うわ! これがハイソイラゴーレムか……動かないよな?」


「腕が伸びるらしいぞ」


「どうするつもりかしら」


 騒ついた空気をミラ王女がピシャリと沈める。


「国王陛下、このハイソイラゴーレムですが、ノア・グリードが所有したいと申し出ております。なにやら改良を加えて王国のために活用したいとのことです」


「ノアよ、そんなことが本当に可能なのか?」


「はい。理論上可能です。ただ、検証と改良の時間が必要となります」


「ふむ。ボイドよ。お主はこのゴーレムをどうにかする技術を持っておるのか?」


「申し訳ございません。我々モグラーギルドの技術ではどうしようもございません。ノアに一任するのが懸命かと」


「ミネルヴァよ。お主はどうじゃ? これは魔土術類の技術か?」


「いえ、国王陛下。これは魔土術よりも科学的な技術が施されているように思います。私がお預かりしても、そこまで大きな成果を出せるとは思えません」



「うむ。それではノアよ。そなたにこのゴーレムに関する改良と管理を委ねる事にする」


「は! ありがとうございます! (やったぞ!)」



 そして最後にミラ王女が発見したティアラを慎重に取り出した。

 一部の家臣がざわつき、国王陛下と王妃がかなり驚いているように見える。


「同じくS級の階層で偶然ですが別の部屋へと繋がる通路を発見しました。その部屋は明らかに王宮のものが造り上げたようなほどこしで、中央にこのティアラがまつられておりました」


「な、なんということじゃ……ミラよ。そのティアラを余の元へ」


「はい。ただいま」



 じっくりとティアラを見つめる王妃。そして王妃の目から涙が流れたところで国王が告げる。



「報告会はここまでとする! ミラとノアよ。誠に大儀であった!」


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