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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第一章 ヒューマニア王国

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第49話 二人でS級ダンジョンへ 01

 ノアとエミラ(ミラ王女)は冒険者ギルドの受付に来てヒューマニア王国内のS級ダンジョンへ挑むための手続をしていた。


「これで手続きは完了しましたが、本当にお二人でS級にモグるんですか?」


 受付係のセラが心配そうに確認する。


「はい。準備は整えていますから。大丈夫です」


「おい、お前たちか! 希望のつるぎってパーティ名でダンジョンを荒らしまくってるってやつは! ガキ二人じゃねぇかよ!」


 後ろから感じ悪い男4人が絡んできた。


「少し前まで俺たち『豪傑の戦士』がここヒューマニア王国の冒険者ナンバーワンパーティーと言われていたんだよ。それを突然現れて嘘みたいにダンジョン踏破しまくっている希望の剣に追い抜かれたって周りに噂されてよぉ〜。一体どんな奴らかと気になってたんだが、まさかこんなガキだったとはな!」


 ガタイの良い中年男性がノアの目の前に立ち塞がった。


「おい、クソガキが。一体どうやってギルドを騙してきたんだ? 正直に言わねえと痛い目にあうぜ」


 国内上位ランクの冒険者パーティーがこのレベルの人間性なのかと失望するエミラ。


「やめてください、ワイルダーさん! 冒険者同士の揉め事は固く禁止しております! 希望の剣は何も騙していませんよ」


「おいおいセラ。こんなチビ二匹がA級ダンジョンをクリアできるわけねぇだろが」


「彼らは本当に強いんですよ。あなたたち()()()が相手にならないくらい……」


「え? セラさん……」


「あ……本音で話しちゃった。いつも絡みが鬱陶うっとうしかったからつい……」


「こ、この俺がこんなクソガキよりも弱いだと……い、いい加減に……しやがれ!」


 ワイルダーがノアの胸ぐらを掴んで持ち上げると、そのまま殴りかかってきた。


 パチン。


 ワイルダーの拳をノアは指を軽く弾いて跳ね返した。


「うわぁ〜。なんだこれ! いでぇぇぇ!」


 ワイルダーの右拳があらぬ方向に曲がっている。それを見て他のメンバーがノアに襲いかかる。


「テメェうちのリーダーに何しやがるんだ!」


 ノアは何も反応しない。


「死ねや!」


 と、ガシッと二人の両腕を捕まえる大男。ギルドマスターのリックだ。


「ゲ! ギルドマスター!」



 リックが怒りの形相で忠告する。



「お前ら。これ以上、希望の剣に手を出すな……まだワカらねぇのか? お前らが100人でかかってもこのノアにはかなわね。ギルドの冒険者が怪我するだけでなんの徳にもならねぇんだ。わかったら返事しろ!」


 ギロッとにらみをきかせてギルド内全ての冒険者へ脅しをかけるリック。


「いいか! お前ら! この希望の剣はお前たちよりも遥かに強い! 何なら俺よりも強いぞ。だから変なこと考えて手を出そうとするんじゃねぇ! ギルドが迷惑被るだけだからな。戦いたいなら正式に決闘を申し込んで競技場でやれ! それは王国の法律で定められているから問題ない。死にたいならそれで構わん。わかったか!」


「…………」


「わかったかと聞いているんだ!」



「は、はい!」



 リックがノアの方へ歩み寄り、笑顔で話しかける。


「ノア! お前また強くなっただろ! 参ったぜ。本当にすごい才能だな」


「リックさん、こんにちは! そうですね。多少は強くなったと思います」


 リックがノアの耳元に顔を近づけてコソコソと話し始める。


(でもよ。さすがに王女を連れて二人でS級とかやめてくれよ。こっちの気がモタねぇって。お前はなんの心配もしねぇけどよ、万が一王女の身に何かあったらどうするんだよ? ギルドも責任取れないぜ。お前がモグッた時、誰が周囲を守るんだよ。王女一人じゃねぇかよ……最低でもあと一人誰か加えろって)


(いや、ミラ王女が二人で良いって言って聞かないんですよ。他の人間を入れたくないみたいで……)


(お前……このこと国王様は知らねぇだろ?)


 ドキっとしたノアの表情を見逃さないリック。


「ダメだ! いくらノアでも二人はダメだ! ギルドが責任取れん! 俺は手続きにハンコ押さないからな!」


 仮面をかぶっていても表情がわかるくらいにエミラが怒りの圧力でリックに詰め寄る。そして小声でボソッと呟く。


(リック、言うことを聞きなさい。でないとギルドマスターの地位を剥奪します。私のことは一切心配しなくて大丈夫です。何かあってもギルドに責任が問われないようにします。だからS級の探掘を許可しなさい。モグラーギルドはすでに許可しましたよ)



(ちくしょ〜。ミラ王女、これはもはや恫喝だぜ……)



 こうして無事に手続きは完了した。



 いつものように執事のヘンドリックがコソコソついてきて、ダンジョン出入口でミラ王女を心配している。


「それじゃあ、ヘンドリック。行ってくるわ! 戻ってくるから安心して」


「ミ、ミラ様、どうかご無事で……」



 いよいよノアたち希望の剣のS級ダンジョンへの挑戦が始まる。一歩ずつ慎重に行くかと思いきや、魔土術ウォームライトを唱えただけで、あとはサクサクと進んでいくノア。暫く進んだところでエミラが確認する。


「ノア、サーチライトは唱えなくて良いの? 今までは最初に必ず唱えていたわよね?」



「あ、いや、わかるようになってきたんです。魔物の気配と低級魔土ローソイラの状態が。ここら辺はモグッても何も出てきません。もう少し奥へ進んでから使用する予定です」


「あ……そう」


 魔物を瞬殺しながらどんどん下層へ降りていくノアたち。そしてあっという間にS級魔物が出てくるエリアに到達した。



「サーチライト<スキャン>」


 唱えて状況把握した後、ノアが急に震えだした。


「どうしたの? ノア! 大丈夫?」


「エミラ、聞いてくれ……この階層…………」


「階層がどうしたの? 強い魔物が来たの?」


「全部高級魔土(ハイソイラ)でできているんだ。地面も壁も天井面も…………」


「…………は?」


「すごいよ! この場所自体がお宝なんだよ! これだけの高級魔土ハイソイラがあればすごいことになるぞ!」


 珍しく興奮しているノアだが、エミラは冷静だった。それは彼女がここの高級魔土ハイソイラを持ち帰れないことを知っていたからだ。



「行くぞ! 探掘刀<グロー刃>装着! そりゃ!」


 パキーン! 乾いた音が響き渡る。グロー刃が綺麗に折れてしまった。


「ノア、このS級ダンジョンのハイソイラの表面はね、硬化して掘ることができないのよ。過去に多くのモグラーが挑戦したらしいけど、皆諦めたそうよ。だからダンジョン探掘という点においてはA級までしか無理なのよ」


「な、なんだって! てことは…………」


「…………残念だけどね」


「つまりこのS級階層では誰一人モグッたことがないってことじゃないか!」


「へ? え、えぇ。そうよ。だって無理だから……」


 ノアがまた不敵な笑みを浮かべている。ちょっとイラッとするエミラ。


「やったぞ! これはラッキーモグラーチャンスだ!」




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