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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第一章 ヒューマニア王国

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第45話 空の存在を知る

「よし! これでどうだ!」


 ノアが低級魔土ローソイラを掌にのせてマナを注ぎ込む。手応えとしては完璧なのだがウサ爺は首を振る。


「だめじゃ。まだ隙間がたくさん空いておるぞい」


 ウサ爺がノアの手元のローソイラをヒョイと自身の目の先に浮かせて移動させる。そしてじっくりとローソイラを眺めて……


(あれ? ウサ爺ローソイラを見ていないぞ。目を瞑っている……)


「ふむふむ。なるほどな。全然ダメじゃ」



 ウサ爺が出した、低級真土ローソイラブロックが壊れないようにマナを注入してマナポーラスを満たすという課題に取り組んで、3時間が経過していた。ウサ爺はからの間に一つだけ造られた大きな窓から外の景色を眺めている。そしてノアは必死でマナ注入に取り組んでいるかと思いきや、腕を組んでローソイラブロックの前であぐらをかいて考え込んでいた。


「あの時、ウサ爺はブロックを見ようとせずに感じようとしたんだな……そして僕は触れて感じ取れる、見てわかる隙間にだけマナを注ぎ込もうとしていた……」



 考え込んでいるノアを見て楽しそうに笑っているウサ爺。久々の来客とあって嬉しいのかもしれない。



「これらローソイラブロックはそれぞれ既存魔素の量が違う。魔素の種類も違う。水属性が多く含まれているブロックもあれば火属性のものもある。当然、ブロック内部の空いているマナポーラスの容量もちが…………うん?」



 何か……今、引っかかったぞ……



「……全ての魔素を使い切って白くなる空の魔土(エンプティラ)にマナを注ぎ込むこと、それは全てのマナポーラスにマナを注ぐだけでいい。比較的簡単だ。ダンジョンをサーチするときのように後ろから前に光を通す。それと同様にエンプティラに掌が触れている底面から徐々にマナを充填してやれば…………ん?」



 また、何か重要な部分に触れたような感覚……



「そういえば……最初にウサ爺はサーチの魔土術は禁止と言っていたな……簡単にできてしまうから? なぜ?」



(ほう……良い視点じゃ。どうやら気づいたようじゃぞい)



 ノアが何かに気づいたような表情を浮かべた。



「スキャンして立体的に物を捉えることができるサーチを使うことはダメなんだ。つまりどこにマナポーラスがあるかわかってしまうからだ。壊れないように優しくマナを注いで壊れるギリギリまで意識して注ぐことは正確にマナポーラスに注いでいる事には繋がらない。魔素が無い空隙がどこにあるかを瞬時に見極めてそこだけにマナを注ぎ込む、それがこの課題の意図だ!」



 ウサ爺は何も言わないが、ノアはもはやウサ爺の存在を忘れているのかもしれない。それくらい集中してこの課題に取り組んでいる。



魔土術まとじゅつを使わずに瞬時にローソイラブロック内部のからになった箇所を把握してマナを注ぐ…………ん? から? そう言えば、ここもからの間だったな」


 ウサ爺がマナを充填したローソイラブロックを見つめるノア。とても美しいバランスが取れているように感じる。



「やはりそうだ……意識するべきなのは物質では無くて空隙のほうなのか! でもどうやって何もないからを感じるんだ?……いや違う。何もないと感じたかどうかが大事なんだ!」


 あれから更に数時間が経過して、ノアがやっとローソイラを掌に置いた。ウサ爺も見守る。


(マナが僕に伝えるローソイラから受けた感覚にもっと素直になって……)


「うん! わかるぞ! これだ!」


 そしてノアが今までとは比較にならない程の速さでマナを注いだ。



「フゥ〜。ウサ爺! これでどうかな?」



 ウサ爺がニコッと笑って言った。


「うむ。合格じゃぞい」



「よっしゃ〜! いや〜これ結構大変だったなぁ」



 ウサ爺がペタペタと歩いてきた。そしてノアのローソイラブロックを見つめながら話し始める。



「今、ノアがおこなったことはからの概念の初歩じゃ。我々、ガイアで生きる者は皆、魔土ソイラという神の恵のおかげで生きていられる。そのソイラを活用して生まれた術が魔土術まとじゅつじゃ」


 うんうんと頷いて真剣にウサ爺の話を聞くノア。


「ノアよ。なぜ人は魔土術でそらを自由に飛ぶことができないかわかるか?」



「うん。ガイアから……魔土ソイラの魔素を活用して唱える魔土術、その魔土ソイラが周囲に存在しないそらでは術を唱えることができないからだよね?」



「そうじゃ。この塔内を飛ぶことはできる。ハイソイラでできた塔の壁が魔素を供給してくれるからじゃ。そしてお前が発明したその飾りもまた同じじゃぞい。効力を失っては何もできない。魔族以外の種族は魔土ソイラ無しでは生きてはいけぬのじゃ。わかるな?」


 頷いてわかると答える。



「そんな魔土ソイラの活用の仕方を工夫することでその効果や威力を変えることができる。その基礎となる概念、それが『から』じゃぞい」


「空……無とは違うんだね。からが有ってからになるってことか」


「…………うむ、ちょっと表現がややこしくなっておるが……まぁ、その通りじゃ。無とは異なる。魔土ソイラにおけるからとはつまりマナポーラスという殻が有って生まれる空間じゃな」



「ウサ爺。空という概念を理解して唱える魔土術と理解しないで唱える魔土術の違いで消費するマナの量が変わりそうだとは僕も理解できるんだ。効率よく必要なマナだけを注いで術を放つことができるしね。でもそれ以外に何か術そのものに変化があるの?」



「ヒョッヒョッヒョッ。お主自身で確かめてみればよい。ホレ。このローソイラを使ってファイアを放ってみよ。バリアするからどこへ向かって撃っても構わんぞい」



 不思議そうな顔をしているノアにローソイラを渡すウサ爺。そしてしぶしぶ正面の窓の外に向かって無詠唱でファイアを放った。



 ゴォー!!!!!




「…………へ? なんで? ラ・ファイアぐらい強くなってる。どうして?」



「ここへ来る前のノアと空の概念を得た後とではマナ自体の質と流れが変わったのじゃぞい」



 ウサ爺が話を続ける。



「コップに水を入れる時、勢いがあり過ぎると水は勢い余ってこぼれてしまうし、コップ以上の容積を超えて水を注ぐと当然溢れてしまう。何事にも適度な技量が大切なんじゃぞい。その時の魔土ソイラの状態を深く理解した者が放つ術と力任せの術とでは放たれる術の質が変わるのは必然じゃ」



 ノアが感動している。その視点からの発想はなかったとでも言いたそうだ。まだ10歳のくせに。


「ノアよ。お主が注ぐマナの質にも変化があったことを忘れるでないぞい。表面的な強さの向上ではあのグランサンクチュアには登れんぞ」



「ウサ爺、本当に僕の全てを覗いたんだね。全部バレちゃったみたい。あはは。

 その魔土術、サーチよりすごいや! 僕にも教えて!」




「……ダメじゃ。お主……要らんことに使いそうじゃぞい」





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