第35話 王都魔土術学院入学試験 03
300人程いたはずの受験生は20人に減った。如何に一次試験が厳しかったかを物語っている。リリアナ王女は周囲を見渡し、ノアとティアが残っていることを確認してホッとした表情を浮かべる。
それから十分後、二次試験が始まった。
やっと普通の筆記試験が行われ………………なかった。
魔土術士の科目から始まり、白紙の用紙に問題が浮き上がってきてそれを解く。解いたらその解答が正解かどうかは関係なく、また白紙に戻り問題が浮き上がって来る。ひたすらこの繰り返しだった。そして1時間でどれだけ解けたかを評価する形式である。
終わった後、受験生は休憩無しで魔土戦士、探掘調査士と計3種類の科目を3時間ぶっ通しで解き続けた。そして試験終了のチャイムが鳴る。
「あ〜疲れた〜! リリアナ〜」
ティアの集中力が限界を超えた様だ。そしてリリアナ王女もかなり疲れている。
仕方無い。二人ともまだ9歳だ。ここで試験を受けている時点で可笑しい話なわけで……
外でミラ王女とヘンドリックが待ってくれていた。5人は学院内の食堂でランチを摂ることにした。
「ねぇ、ティアは一次試験の3つの数値どれくらいだった?」
「ん? 何それ? リリアナ、3つの数値って何?」
リリアナ王女が試験の変更があったことをミラ王女に話す。するとミラ王女も3人の数値が気になってきた。
「私は魔土術士19、魔土戦士17、探掘調査士10よ。リリアナは?」
「私は魔土術士22、魔土戦士5、探掘調査士5だった。ギリギリで二次試験に残れたって感じかな」
「いやいや、22ってすごいじゃない! やっぱり魔土術士の才能があるのよ! よかったわね!」
「ティアは3つの職業全ての才能があるのね! 本当にすごいわ!」
「えへへ……ありがとう」
「「「…………」」」
沈黙が暫く続いて、ミラ王女がいよいよあの神童の結果に触れてみることに。
「ノア、あなたはどうだったのよ?」
パクパク料理を食べていたノアが、ん?っと顔をあげて答える。
「えっと確か……45、42、50です」
「「「…………」」」
やはり、実技試験が終わるまで触れるべきではなかったと女性3人は後悔した。
* * *
お昼休憩を終えて、二次試験合格者が発表された。ノア、ティア、リリアナ王女を含めた15名が見事通過し、実技試験へと進むことに。十代後半から二十代後半までがほとんどで、30十代が1人いる。そして最年少は9歳だ。
ちなみにここまでの最高得点が10歳だということは、まだミネルヴァ校長しか知らない。ある意味ティアとリリアナはわかっているが。
「今から魔土術士の実技試験を開始します。30m、50m、80m、120m先に的があります。あの的を狙って皆さん各々が得意とする魔土術を放ってください」
受験生が再び動揺する。80mなんて当てられるわけがない。運良く当たって50mが限界だ……普通なら、だが。
「魔土術のスピード、威力、命中率などを計測して得点化します。それぞれの的に一度しか魔土術は放てませんのでしっかりと狙ってください。ただ、スタートの合図から的に当たるまでの時間も計測して評価に加わるので、時間をかけ過ぎると得点になりませんからご注意ください」
受験番号順に試験が始まるが、やはり50mに当てるのは難しい。ほとんどが50mを当てられずに試技を終える。
「次、リリアナ・ヴァン・クライトン! 前へ!」
「はい!」
「リリアナ、頑張って!」
ティアの言葉がしっかりとリリアナ王女に届く。頷いてゆっくりと歩いて詠唱台の上に立つ。大丈夫、今のリリアナ王女は冷静だ。
「始め!」
試験教官の声と共に詠唱を始めるリリアナ王女。
「リトルウインド!」
突風が30m先の的を吹き飛ばす。続いて50mもアッサリクリアした。
(いよいよ80m………………いくわ!)
「リトルウインド!」
狙いは良かったが、僅かに外れて的に当てることが出来なかった。
「あっ…………」
悔しそうにするリリアナ王女。それを見てミラ王女は嬉しくなった。
「リリアナもあんな顔するんだ……」
「次、ティア・グリード! 前へ!」
ティアの試技が始まった。30m、50m、80mと水魔土術で当てるが、120mは外してしまった。しかし、十分な成果だ。実際、試験教官は80mが当たることを想定していなかったのだから。
「あの子、すごいぞ。80mを当てるなんて」
「まだ9歳だってよ」
周囲の上級生も集まって新入生の実技試験を観ていたが、ティアの能力に相当ビビっていた。
それもそのはず。在学中の二年生、三年生のほとんどが50m先の的に当てることすらできないのだから。それだけ現在のヒューマニア王国の魔土術士のレベルが低いということでもあり、ミラ王女はこの嘆かわしい状況に頭を抱えていた。
そしていよいよ魔族襲来以上に恐ろしいクライマックスを迎える。
「次、最後の試技です。ノア・グリード! 前へ!」
「はい」
いよいよ神童の登場だ。
「エミール先生。あの子の試技は観ておいたほうがいいわよ」
「はい。さっき、あの古代魔土術、ミラーを唱えた子ですね」
ミネルヴァ校長とエミール先生が注目する中、ノアが詠唱台に立つ。
「それでは魔土術士、実技試験始め!」
シュバン! シュバン! シュバン! シュバーン!
軽快な音が4回、乾いた空気を切り裂くように周囲に響き渡った。
「終わりました」
ノアが詠唱台を降りてティアたちのもとへ。
「え? 的が倒れていない? じゃあ、あの音は一体……」
試験官が困惑する。
周囲の学院生は外れたと思って大笑いしている。
「何んだアイツ! 何も魔土術を唱えていないじゃないか!」
「できないなら最初から言えよ。バカじゃねぇか!」
しかし、大笑いする学院生たちの声が届かないほど、動揺する試験官。
(いや、あの子は確かに何かを放った。だが……詠唱が無かった……まさか無詠唱で? そんな馬鹿な……)
ティアたち3人と校長以外は状況を把握できていなかった。
「……あ、当たっています! 全ての的に当たっています!」
的を調べに行った教員が大声で伝えて、周囲が一気に静まり返る。
4つの的全ての中央に1センチ程の小さな穴が空いていた。




