第34話 王都魔土術学院入学試験 02
巨大竜巻が上流貴族ヘタレカを襲う。こんなところでいきなりリリアナ王女の強大なオリジナル魔土術が解放されてしまった。
「やるしかない! ぶっつけ本番だ!」
ノアがバリアを張ったティアとヘタレカを庇うように襲い来る竜巻の前に飛び出す。そして竜巻に向かって両手を伸ばして光魔土術を唱える。
「ミラー<反射>!」
ノアの両手から広大な光の面が一気に広がってゆく。そこに竜巻が激突……いや、跳ね返った。なんと竜巻が空へと進路を変えて突き進み、遥か上空へ消えていった。
「はぁ、はぁ、はぁ……できた……今のはちょっとヤバかったなぁ」
「お兄ちゃん大丈夫?」
ヘタレカを放置してティアがノアのもとへ駆け寄る。そして倒れるリリアナ王女をミラ王女が抱きかかえる。
ミラ王女とヘンドリックはパニックになった学院の広場を漠然と眺めながらつぶやく。
「こんなに大勢の前でやってしまった……」
そしてリリアナ王女が目覚める。まだ何が起こったのか本人もわかっていないようだ。とりあえず、逃げるようにその場を後にしてノア達は試験会場へ向かった。
それを学院塔の上層から一部始終を観ていた校長と数名の教員たち。
「エミール先生! 観ました? これは何とも楽しみな逸材が入ってきましたね! ここ十数年、ずっとくだらないお馬鹿貴族を相手にする学院生活だったから余計にワクワクしてきました」
「ミネルヴァ校長、立場上そういったコメントは控えた方が……」
「いいのよ! エルフの一生は長いから十数年くらいどうって事ないわ!」
「いや、そういうことではなくて……」
「あの子達なら特別ルールを設けても良さそうね……丁度いいわ。お馬鹿貴族の欲望と権力に利用され続けて失墜した魔土術学院の威厳をここで復活させましょう! 久々に私もやる気が出てきた! あ〜楽しくなってきたわ!」
嫌な予感がする教員達。
「あの……ミネルヴァ校長。何をなさるおつもりですか?」
「そうね……とりあえず、テストの内容を丸ごと変更! それから貴族と癒着している教員全員を解任! 」
「「「……え? い、今から?」」」
* * *
試験会場に着いたノア達。そこには大勢の貴族と平民が集まっていた。試験が始まる前とは思えないほど騒ついている。そして貴族受験生のほとんどが余裕の表情を浮かべて談笑している。なぜなら彼らは試験問題を知っているからだ。ごく一部、真面目に勉強している貴族もいるようだが……
一方平民はというと探掘調査士になるために必死の中年男性や、憧れの魔土術士や魔土戦士になるため必死に勉強してきた若者もいる。勿論、運任せで来た者もいたりと事情は様々だ。
ミラ王女は会場の中に入れないので、リリアナ王女にアドバイスを送る。
「リリアナ。さっきのことは一旦忘れて。というか、覚えていないかもしれないけど、すべて終わった後に話しましょう。今は試験に集中するのよ! 頑張って!」
「はい! よくわからないけど、わかりました!」
そして全員が席に着き、試験開始15分前となったときに、ミネルヴァ校長が魔土術によって会場天井からすり抜けて降りてきた。おそらく本人を投影した何かだろう。
唖然とする受験生達を前に、校長が語り始める。
「皆さん、初めまして。王都魔土術学院の校長を務めるミネルヴァです」
騒つく試験会場を見てクスッと笑うミネルヴァ校長。
「まずはご報告から。本日より学院の試験内容及び、学院制度を一新しました。これまでの試験内容とはレベルが全く異なるものとなっておりますので、お楽しみに」
「何だと! どういうことだ!」
「なぜ試験内容が突然変わるんだ! マルク先生やジュラ先生を出せ!」
「いきなり出てきて勝手なことを喋るな! 貴族の言う通りにしろ!」
貴族の受験生から猛烈なクレームを浴びる校長。不意に小さなステッキをクイッと回して魔土術を唱える。するとギャーギャーうるさかった貴族達の声がかき消された。
「貴族と繋がりのあった先生は皆クビにしました。努力もしない才能もない、そんなお馬鹿貴族が来る様な場所ではありません。さっさと荷物をまとめて帰りなさい」
静まり返る会場。
「これから行う試験は魔土術士、魔土戦士、探掘調査士の適性を調べる三種類の筆記試験です。ここで適正が無いと判断された場合は実技試験を受けることができません。逆に適性が一つでも有ると判断された場合はその実技を受けることができます」
「何だって……じゃあ、なりたい職業の適性がなかったら諦めるしかないって言うのか!」
一人男性が怒りのまま反論する。
「しっかりと知識や技術を磨いてから次回、再びチャレンジしてください。この試験の判定は正確ですから、努力された方の数値は必ず上がります」
(この試験の判定? 何か含みのある言い方だなぁ)
「時間となりました。それでは皆さん、答案用紙を配ります」
教壇に置かれた答案用紙が受験生の元へそれぞれ飛んでいく。ノアの机の上にも一枚白紙の紙がフワッと置かれた。
「それでは王都魔土術学院、入学試験スタート!」
ミネルヴァ校長の掛け声と共に答案用紙上部に文字が浮かび上がってきた。
《右掌を広げて答案用紙中央に触れ、マナを流し続けなさい》
「え? 問題じゃなくて、指示?」
「おい! なんだこれ! ふざけるなよ!」
当然騒つく試験会場だが、校長はピーピーうるさい貴族受験生を次々外へ放り出す。
一方、リリアナ王女とティアは指示通り答案用紙にマナを流し続ける。すると瞬間的に文字が表示された。
《リリアナ・ヴァン・クライトン 魔土術士22、魔土戦士5、探掘調査士5》
《ティア・グリード 魔土術士19、魔土戦士17、探掘調査士10》
「何かしら? 私のマナの数値ってこと? 高いのか低いのか全くわからないわ……」
そして、十分も経たずに終了のチャイムがなる。
「皆さん、お疲れ様でした。手元の答案用紙に現れた3つの項目、魔土術士、魔土戦士、探掘調査士。どの項目でも構いません。数値『10』以上が1つでもあれば一次試験合格です」
この衝撃的なコメントで会場内が動揺と罵声で騒がしくなる。ミネルヴァ校長もそれを予想していたのであろう、不合格となった受験生を全て魔土術で会場外へ追い出した。
「さて! 皆さん! 改めて一次試験合格おめでとうございます!」
この時、校長だけは全ての受験生の適正結果を把握していた。実は数値が10を超えた場合、その職業の能力値がかなり高いことを意味していた。20なんて数値は最早天才級と言え、まさにミネルヴァ校長が求めている逸材であった。
そんな中、校長の想像を遥かに超える数値を叩き出した者がいた。
《ノア・グリード 魔土術士45、魔土戦士42、探掘調査士50》




