第32話 リリアナ王女の試験 02
「ライト!」
リリカがダンジョン内を明るくする。そしてリリアナ王女が人生で初めてダンジョンに入った。
「リリアナ、自信を持ってね。絶対に大丈夫だから!」
「ありがとう、ティア」
二人はゆっくりとダンジョンの奥へと進んでいく。入口で見守る大勢の人が見えなくなった。静かで不気味な雰囲気。これがダンジョンか……
そして初めての魔物が現れる。
「ドロイムよ! リリアナ落ち着いてね」
冷静に詠唱して魔土術を放つ。
「リトルウインド!」
リリアナ王女が放った魔土術がドロイムを一瞬でかき消した。リリアナ王女用に考案された最弱の風属性魔土術。しかしながらそれでもかなりの威力だ。
(周りを巻き込むほどに強力だわ……まぁ、それは良いことなんだけど)
どんどん進んでいく二人に再び魔物が現れた。今度はドブリンだ。しかも10匹と数が多過ぎる。恐怖を感じて一瞬後退りしたがなんとか撃退するリリアナ王女。
威力がすごいだけに数が多くても対応できてしまうのだ。
「リリアナ、すごいじゃない! そのペースのまま、焦らずに進んで行こう!」
暫く進んだところで、ローソイラバットが群れで襲ってきた。リリアナ王女の風属性魔土術を運良くかわした数匹がリリアナとティアに襲いかかる。
「キャァ!」
リリアナが腕を襲われて倒れこむ。
ティアは魔土術で助けるかどうかを悩んでしまう。そしてティア自身もリリアナを庇う形でソイラバットの攻撃を喰らってしまった。
それを見たリリアナ王女が混乱してしまう。
(私のせいでティアが傷を追ってしまった……)
間髪入れずに襲いかかるローソイラバットの残党に背を向けて丸まって地面に倒れこんだままのリリアナ王女。全く動かない。
ティアもフォローに入るかどうか迷っていたその時……
「ソイラ!」
詠唱を終えたリリアナがティアに回復魔土術ソイラを唱える。ティアの傷が回復した。そして再びリトルウインドを唱えてローソイラバットを全て倒した。
自分自身にもソイラを唱え、ティアに謝るリリアナ王女。
「ティアごめんね。私が勇気を出せなくて逃げてしまったからティアが攻撃されてしまった。私がもっとちゃんと攻撃していたら……」
するとティアは優しくペチンとリリアナのおでこを叩く。
「回復してくれたんだから何も気にする必要ないわ。それにまだ試験は終わってないよ! ここからしっかりと立て直して、次に出てくる魔物を倒して合格するわよ!」
「うん! そうだね! ありがとう、ティア!」
ミラ王女は驚いていた。最早この時点で試験は合格だと言っていい。
むしろ試験の評価以上にリリアナ王女がここまで自分をアピールしている姿や仲間と冒険している事実が信じられないのだ。
(これがあの臆病で何も主張して来なかったリリアナなの?)
ふと、風魔土術で魔物を吹っ飛ばした際にローソイラの壁が壊されてるのを見つけるリリアナ王女。
「あ、これって……野菜だわ」
「じゃあ、それはリリアナにとって初めての探掘だね。おめでとう!」
ティアの言葉に喜ぶリリアナ王女。自信をつけたのか更に奥へと進んでいく。
その後はリリカもミラ王女も安心して見ていられる程に、落ち着いて魔物を倒していく。
「へ?……本当に?」
目の前にダンジョン最深部の表記を見つけたリリカが思わず漏らしてしまった一言。
なんとリリアナ王女とティアはダンジョンを二人で踏破してしまった。
「やったね! リリアナ!」
「ありがとう。ティア」
「無事に戻るまでダンジョン踏破とはなりませんよ! 気を引き締めてください」
リリカが二人の気の緩みを再度キツく締め付けるように注意する。ダンジョンでは何が起こるかわからない。前回のティアのように突然成長してランクアップする場所もある。その事を思い出したティアは嬉しい気持ちを沈めて、冷静にリリアナ王女に話しかける。
「リリアナ、来た道を戻りましょ。焦らずに行こう!」
「うん。わかった」
こうして、ティアのフォローもあり、スムーズに来た道を引き返していく。途中遭遇したモンスターをあっさり倒してダンジョンの入口まで戻って来た。
「リリアナ様だ! 帰ってこられたぞ!」
「リリアナ王女! ご無事ですか」
祈るようにリリアナ王女の無事を待ち続けていた家臣たちが一斉にダンジョンから出て来たリリアナ王女のもとへ駆け寄る。そしてこれまで見せたことがないような満遍の笑みで喜び合うリリアナ王女を一歩離れたところから眺めるミラ王女の目に涙が……
「本当にやり遂げてしまうなんて……あのリリアナが……」
ずっと、自分の背中に隠れていた妹がいきなり立派な成長を姉に見せたのだ。驚きと嬉しさが一気に込み上げてきたのだろう。
試験の結果は言うまでもなかった。
* * *
後日、リリカから報告を受けた国王と王妃は目覚しいリリアナ王女の成長に思わず涙した。リリカからソレイジになるべきだと言わせる程の才能を持つ娘を前に、国王に迷いはなかった。
こうして、ティアとリリアナ王女は九歳でノアと共に魔土術学院入学試験を受けることが決まった。
そしてノア工房ではいつも通りミラ王女が遊びに来ていた。
「ノア、一応聞くけど魔土術学院の試験、問題ないわよね。筆記は結構難しいし、実技はまぁ、問題ないとは思うけど……そんなに夢中で発明ばかりしていて大丈夫なの?」
「多分大丈夫ですよ。まぁ、僕の場合は試験で落っこちてもそこまで何かに影響あるわけでもないですし、ティアやリリアナ王女はもっと勤勉ですから満点とるかもしれませんね。アハハ」
「アハハってね……まぁ、ノアのこの頭脳なら心配する方が時間の無駄か。それで今何をつくっているの?」
「この前のダンジョン探掘で高級魔土が結構取れたので、ちょっとそれを使って研究中なんです。王国騎士団の戦力アップに繋がればいいなと思っていて、今父さんと検証しながら開発しているのが属性を付与した武器と防具ですね」
「え? そんな事ができそうなの? あ、この前のロングソードの効果が正にそれか」
「はい、そうですね。 ただ、僕がつくりたいのは魔族対策の防具と武器です」




