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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第一章 ヒューマニア王国

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第26話 王家との食事 03

「ふむ。ミラよ。お主はティアの能力を知っているのか?」


「いえ、私も詳しくは……しかし、先日のあの一件で、ティアは勇敢にも王妃とリリアナを魔族から守るべく、魔土術まとじゅつファイアを連発して撃退しておりました。相当な腕であることは間違いありません」


「なんと! こんな小さくて可愛い娘にも、余と余の家族は守られていたのか! ティアよ。改めて礼を言うぞ」



 王の言葉にティアは嬉しさを隠しきれない。今までノアの影に隠れていたせいで評価されてこなかったが、実際ティアの実力も相当なレベルなのだ。


 そして、それを他でもない兄であるノアが認めてくれていたことを知り、特別な喜びを感じるティア。


 その様子をそばから見ていたロイとリリカは改めて気付かされる。ノアがわざと国王にティアの存在を認識させるために出した要求であることを。学院に行かせるかどうかが重要ではなく、ロイ一家のティアもまた、すごい逸材だということを知らせたかったのだ。



「ティアよ。ならばお主も兄のノアと一緒に学院に入学してみるか?」



「えぇ! 国王、ティアはまだ9歳ですよ。確かに学院は年齢制限なく3年間学ぶ場所。おおよそ15歳以上の若者から老人まで学院生がいるかとは思いますが、ここまで幼い場合どうでしょうか?」


 ロイが心配そうに親として正しい意見を言う。


「それに兄のノアが仮に1年足らずで特例卒業してしまったら、ティアが友人もつくれず一人になってしまうことも…… 母親としてそれも心配です。確かにティアの力であれば学院に入学する基準は十分に満たしているのですが」



 リリカもロイに同調し、否定的な意見だ。そして当然国王も二人の考えをよくわかっている。


「お主らの主張は正しい。まず、本人に聞こうではないか。ティアよ。お主はどうしたい? 今すぐ魔土術学院に入って学びたいか? それとも、もう2、3年待った後が良いか?」



 国王は敢えて9歳のティア本人に直接確認する。



「……国王様、ティアは……今、魔土術学院に入学したいです!」



「ティア! ちょっと待つんだ。学院に入るということはそんな簡単なことではないんだよ」


「そうよ。お母さんもまだ早いと思うわ。もう少し待ってからの方がいいわ」



 ティアはうつむく。しっかりと考えて自分の本当の思いをしっかり伝えようとしている。その姿を隣に座っていたリリアナ王女が見つめている。



「ティアは……もしもお父さんとお母さんが今学院に入学するのをやめてほしいと望むなら、言うことを聞きます」



 その言葉を聞いて、思ってもいなかった角度からズバッと刺された感覚になるロイとリリカ。


「でも、ティアの望みはお兄ちゃんと一緒に入学することです。その後、お兄ちゃんはきっと、どんどん前に進んで行くと思うけど、ティアはティアが出来る事をやりたい」


 ザクザクと胸に何かが突き刺さるロイとリリカ。そして隣に座っていたリリアナ王女も何か自身に心境の変化がある事を感じる。



「ハッハッハ。 なんと素晴らしい。これがロイとリリカの娘か! 二人とも、これでも入学は時期早々か?」


 国王の問いに言い返すことができないロイとリリカ。二人ともティアの立派な言葉を聞いて同じように思えてしまったのだろう。


 そして……意外なところから声が上がる。



「こ、国王様……あの……リリアナもティアと一緒に魔土術学院へ入学したいです」


「「「えぇぇ〜!」」」


 その場にいた全員が驚いてリリアナ王女の顔を凝視する。本当にあのリリアナ王女が言ったことなのか? それくらい臆病で人見知りで何にも興味を示さなかった第二王女が示した初めての興味。それが魔土術学院に行くこととは……


「おいおい、リリアナよ。今魔土術学院に行きたいと申したか? 学院に入るということはそんな簡単なことではないのだぞ。」


「国王陛下、先ほど私もティアに同じことを申しあげましたが……」


 ロイの仕返しとばかりの指摘に笑うしかない国王。周囲がザワついている。


「ハッハッハ。確かにそうじゃな。だがロイよ。ティアと違ってリリアナには魔土術の素質の有無を明確にする必要がある。余も王妃もリリアナの魔土術を見たことが無いぞ。ミラは知っているのか?」


「いいえ。私もリリアナの魔土術を見たことはありません。ただ勉強は熱心にしております。興味があることは間違いないようですが……」


 国王の問いに残念そうに答えるミラ王女。リリアナの助けになってあげたいが、嘘をつくわけにもいかない。


 俯いて悲しそうな表情を浮かべるリリアナ王女。そんな表情を見て、ノアが進言する。


「それでは国王陛下。 一度リリアナ王女にチャンスを与えてみてはいかがでしょうか? せっかくリリアナ王女が初めて口にした望みですしね」


「ほう、ノアよ。何故そこまでわかった? まぁ、それは良いとして、何かお主に考えがあるのか?」


「例えば、魔土術を母のリリカより一ヶ月指導を受けてその潜在能力の有無で判断されてはいかがでしょうか? リリカはS級の魔土術士ソレイジであり、ティアをずっと育てて来た師匠でもあります。リリアナ王女にどれほどの資質が備わっているかをティアと比較して評価できるかと思います。何れにしても我々ロイ一家は暫く王宮に滞在することが決まっているわけですからね」


 ノアがチラッとロイたちの方の様子を伺う。リリカは微妙な表情だ。これ以上要らんことを言うなとでも言いたそうだ。そして国王が問う。



「リリカよ。頼まれてくれるか? 一ヶ月後、お主の率直な意見を余に聞かせてくれ」



「し、承知しました。国王陛下」


 喜ぶリリアナ王女。ノアの方を見てありがとうと言っているような澄んだ笑顔を見せる。そして席の隣からリリカの怒りのオーラを感じとり、食事に集中するふりをするノア。


 そして、食事を終えて、国王は早速王宮に務めている護衛騎士を集めて修練場で模擬訓練を行うことにした。


 ロイに対しては憧れが強い王国騎士。模擬戦とはいえ、非常に名誉な対戦とあって希望者が多数現れた。それら一人一人に丁寧に対応し、圧倒的な強さを見せつけるロイ。当然だと言わんばかりにため息をつくミラ王女。


「この国の戦力がこんなに低いなんて。今のままでは魔族に勝てない」


 そしてノアが修練場に立った。兵士全員が唖然としている。


「次は私が皆さんのお相手を務めます。どうぞよろしくお願いします」


 ノアの言葉に笑って流す騎士たち。


「ロイ様のお坊ちゃんとはいえ、流石に騎士を相手に模擬戦は無理ですよ」


 全員が笑っている。王女とヘンドリックだけがため息をついている。相手の実力すらわからない騎士たちに怒りすら覚えてしまう。



「よし! お前たちの誰か一人でもこのノアに勝てたら、俺が責任を持って国王へ騎士団のリーダーに推薦してやる。どうだ?」



「「俺が先だ!」」


「どけよ。俺だろ!」



 一気にやる気を出した騎士たちだったが、結果はノアの圧勝だった。


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