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謎が解けなきゃ、被害者は私だ。  作者: 吉川緑
終章_市白の事件
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終章_市白の事件

 同窓会で起こった事件。

 それは遠い過去と思っても、当人にとっては消え去らない記憶が起こした。


(小学生なんてのに逃げ場は限られる。ひろしは辛かったのだろうとは、思うよ)


 『虐められた』側の復讐。同情的な気持ちにはなる。しかし、だからといって、解決しない事件もないのだ。


(死なないで生き残れたから、『私』としては喜びたいのだけどね)


 しかし、後味は悪い。おまけに今回の事件は、私の知らないシナリオだったという事実が、ぬるい茶に変な混ぜ物を加えたような嫌な感覚を残していた。


(私のゲームへ召喚した『何か』の仕業だとして、悪意が増してる気がする)


 相変わらず、理由もわからないし、どうしたら元に戻れるのかもわからないのだ。そんな状況で与えられた配役は『白猫』のげんちゃんだった。


 確かに、ゲームのシナリオでは、ひろしの毒で死んでいたと記憶している。してはいるが、被害者かと言えば微妙だ。


(猫は人じゃないだろ。獣だぞ)


 理不尽に慣れつつあるので頭の頭痛が痛いが、いい加減意図を聞きたいところだった。



◇◆◇



 白で統一された清潔な部屋。白衣に身を包んだ女性も今はいないが、ナースコールで呼んだので、そのうち来るだろう。ここは、病室でちょうど、『服部 瞳(はっとり ひとみ)』が目を覚ましたところだ。


 私は白猫として鳩山(はとやま)に抱かれている。ただ、服部の無事も確認できたので、そろそろ次のシナリオへと進んで、人間の身体を取り戻したいと考えていた。


『ばかね。あんたの姉さんに、追い返されたわよ』


 服部の台詞に眉をひそめる。猫に眉があるのかは知らないが。

このやり取りには既視感がある。私も知っている『シナリオ』と同じだ。


(そろそろこのシナリオも終わりかな)


 そんなことを思ったその時、私の目の前は白一色へと転換した。



◇◆◇



 目の前にいるのは、初めて見る姿の女。背丈は少し私より高い。体格からすれば十代中ごろだろうか。

 彼女が『何か』か? 私は訝しみながら、様子を伺う。


「次が、あなたにとって最後の試練になります」

「試練?」

「えぇ。私たちで交わした約束。あなたはやり直すために、ここまで来た」

「約束? やり直す? 一体、何のこと?」


 身に覚えのない話だ。私は『何か』によって、自分がゲームの中に召喚された、ただそれだけしかわからない。


「あなたは賭けに乗ったんです」


 目の前にいる女は続ける。逆光のせいか顔は見えない。女が手をかざすと、虚空からテーブルが現れ、私の前に置かれた。


 丸いテーブルには二つの置物と五つの駒がある。置物は船と線路。二又に分かれた線路に向かって、船が走っていくような不思議な物だ。駒は四方に鳥、亀、虎、龍。そして、中央の駒は何だろうか。


(馬かな、これは?)


 訝しみながらテーブルを見つめる。その表面は滑らかで鏡の様だった。しかし、そこには本来映り込むべきものが映っていない。


(『私』の姿は映らないのか)


 違和感に気づく。『私』の姿もそうだが、それ以外にも。思えば、私には『ここがゲームの中であること』以外の記憶がどこにもなかった。


 『ゲームの中に召喚された』それはつまり、どこかに自分の居場所があったことを意味している。元の居場所、自宅や家族、職業、それらの記憶はどこへ行ったのか。


 まるで自分が空っぽの人形だったような気がしてくる。思い出そうとすればするほど、ぎりぎりと頭が痛くなってきた。


(私は、一体何なんだ?)


 思い出そうとして無理に記憶を辿ろうとする。しかし、それは無慈悲な声によって遮られる。


『あなたの記憶は封印されています。管理者の許可が出るまで解放できません』


 何度も聞いた無機質な声。記憶の封印。許可。訳がわからなくなってきた。


「ねえ、これはどういう状況? あなたは誰なの?」

「すべてに答えることはできません」


 他人の姿にばかりさせられてきた自分は一体何か。その答えを少しでも探そうと、目を凝らして女の姿を見つめる。その姿は、どこかで見たような、見ていないような。


「でも、名前なら……私は『兎本 葉(うもと よう)』」

「は?」


 間抜けな声が出た。聞き間違えだろうか?『兎本 翔(うもと しょう)』なら知っている。私をコテージで殺そうとした、連続殺人鬼だ。


「思い出せなくて当然です。でも、信じて。私とあなたには、あの人と交わした約束がある」


 ちょっと待って、と手を伸ばす。でも、届かない。少しずつ、私と『兎本 葉』のシルエットが崩れて消えていく。まだ何もわからない。


「忘れないで、四人の御心を。それから、五人目を止めて」


 頭の中で、無機質な声が響く。


『白虎の制限を解除します。次の役割は、探偵と被害者の二つです』


 疑問がありすぎて、どれから質問すればいいかもわからない。

 私は一体何者か? 『何か』の存在とは? それに試練って?


 消えていく景色の最後に、女の声が聞こえた。


「勝ち取って。未来を」


 そこで、私は目覚めた。ここは、ありえるはずのない。過去のシナリオ。


 私の配役は『鳩山 市白(はとやま いちきよ)

 名探偵『鳩山 二(はとやま じん)』の双子の姉にして、ゲーム開始時点では故人の役だった。


年跨ぎになってしまいましたが、少しずつ進めています。

直しに手間取っているものの、何とか早めには出したいところです

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