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離れる温度と言葉の行方

みなさんこんにちは!春咲菜花です!私の最新作、「その日が来るまで」を見に来ていただいて本当にありがとうございます!!活動報告でもお話ししたとおり、この作品は何度かエッセイで登場している真夏の体験と、私の体験を交えています!私と真夏はかなり似ていて、今は同じような目線で物事を見ています。少し前はしんどいことも多かったですが、今ではそれぞれ助けてもらって、楽しく過ごせています。少し重いかもしれませんが、同じような思いをしている方に届けられたらいいなと思います。と言うことで、最新作「その日が来るまで」スタートです!

昔から、いや、中学生の時から、私は小さな我慢をずっとしていた。

誰かに言えるわけでもない、小さな我慢と小さな嘘。

頑張ってたけど……。

すごく頑張ってたけど……。

でもね……。

もう、少しだけ疲れちゃった。

いつからこんなことしてるんだったっけな……。


◇◆◇

ーー中学一年生春


「まーつり!一緒に帰らない?」


私は笑顔で別のクラスの小学校の時からの友人に言った。

部活が終わり、わらわらと人が帰っていく体育館の近くで待っていた。


「花奏(かなで)、また待ってたの?」

「うん!茉莉(まつり)と帰りたくて!」


茉莉とはずっと仲良しで、私は茉莉が大好きだった。

ほぼ毎日私は部活が終わってから体育館の近くで茉莉を待って、一緒に帰っていた。


「……いいよ、帰ろ」


茉莉は少し考えてからそう言った。

帰り道を並んで一緒に歩く。

何気ない会話をしながら歩く時間は本当に楽しい。

私はこの時間が大好きだ。

でも、こんな日々は永遠に続くことはなかった。


◆◇◆


私はいつも通り茉莉を体育館前で待っていた。

茉莉が出てきた時、笑顔で私は駆け寄った。


「花奏、ごめん。今日は用事あるから」

「そうなの?急いでるなら合わせるよ?」

「ううん、大丈夫。花奏はゆっくり帰りな。じゃあね」


そう言って茉莉は早足で帰っていった。

翌日も、その翌日も、茉莉は何かと理由をつけて私との下校を断るようになった。

最初は仕方ないと思っていた。

茉莉にも予定がある。

私以外の友達と帰りたい日だってある。

ある日のことだった。

体育館から出てきた茉莉が、私のいるところとは反対側へ歩いていった。


「あ、まつ――」


声をかけようとして止まった。

茉莉の隣には同じクラスの女の子がいた。

二人は楽しそうに話していた。


「それでさー!」

「え、なにそれ!」

「あははは!」


笑い声が聞こえる。

茉莉が、あんなふうに笑っている。

私と帰っていた時と同じように。

……いや。

もしかしたら、私といる時より楽しそうに。


「……」

私は声をかけるのをやめた。

二人の背中がどんどん遠くなっていく。

私はその場に一人で立っていた。

少しだけ胸が痛かった。


「……そっか。今日はあの子と帰るんだ」


誰に言うでもなく呟いて、私は一人で帰った


◇◆◇


「花奏、最近茉莉と帰らないね」


部活の友達が言った。

いつも茉莉を待つために体育館に向かっていたのを知っていたから、尚更違和感だったのだろう。


「え?」

「ほら、前は毎日待ってたじゃん」

「あー……」


私は少しだけ言葉に詰まった。


「最近はちょっと用事があってさー。今日はないから行こうかな」

「そうなんだ」


この時、少しだけ強がっていた。

本当は断られるのが怖いし、避けられているのもなんとなくわかっていた。

なのに図々しくもまだ茉莉にしがみついている私が、どうしても嫌だった。

部活が終わったあと、いつものように体育館へ向かった。

茉莉を待って。

一緒に帰れたらいいなって。

会いたかった。

でも、自分から声をかける勇気はなかった。

もしまた断られたら。

もし迷惑そうな顔をされたら。

そう考えると怖かった。


「あれ、花奏」

「ま、茉莉……」

「どうしたの?」

「えっと……」


言葉が出てこなかった。

どうしてここにいるか

茉莉と帰りたかった。

それだけ。

でも、それをそのまま言うのはなんだか恥ずかしかった。


「……ちょっと先生に用事があって」

「先生?」

「うん。ほら、明日の授業のことで聞きたいことあってさ」


咄嗟に出てきた嘘だった。


「そっか」


茉莉はそれ以上聞かなかった。

「じゃあ、私もう帰るね」

「あ……うん!」


茉莉が歩き出す。

私はその背中を見つめた。


「……茉莉」


私は茉莉を呼び止めた。

茉莉は私を不思議そうな顔で見ている。

一緒に帰ろう。

そう言えばいいだけなのに。


「……またね!」

「うん」


そのまま、茉莉は行ってしまった。

私は一人、体育館の前に残った。

さっきまで「会いたかった」と思っていたはずなのに。

会えたら会えたで、何も言えなかった。


「……何してるんだろ、私」


自分で自分が嫌になった。

本当は茉莉と帰りたかった。

本当は前みたいに一緒に笑いたかった。

いつからだろう。




「一緒に帰ろう」この一言がこんなに遠くなってしまったのは。

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