第80話 化石の約束
約束だ。絶対あんたを見つけ出してやんよ。
「肝に銘じ出おきます。」
連絡を終えたアーチボルトは糸には吊るされた宇佐美を見た。
「さて1つ彼は勘違いをしていますね。業とは苦しみすら愛しい存在であるということに。同情なんて必要がないただ呼吸をするようにありのままです。そう思いませんか宇佐美様。」
「私の方の仕事も終わりました。さてこの洞窟から脱出をしなくては。」
アーチボルトが背を向けたその時絡まった糸を引きちぎり裂けた腹で宇佐美は襲いかかる。
「驚きました。この状態でも動けるのですね。ですが1つ教えていない事がありました。」
「レッドラインは対象が死ぬまで有効なのです。レッドラインが使える時点で貴方が生きているのは手に取るように分かるのですよ。」
「…貴方の心も。」
アーチボルトは宇佐美の身体をまるで赤子のように優しく抱く。
「貴方は私達と同じ自らの心が他のものと違いを知る者でした。さらに貴方は答えも見つけ出していた。…もしであった場が違えば共に…いえ、結局は私は同じことを繰り返しますね。」
アーチボルトは悲しそうな顔で自重する。
「なのでせめてもの友の証しとして貴方にこちらを送りましょう。」
アーチボルトは糸を引っ張る。
すると洞窟は崩れ砂が落ちてくる。
「さようなら…最後の太古の王よ。」
そう言い残しアーチボルトは闇へ消えていく。
「ウサミン!あんた今どこいんの!前行った洞窟塞がれてんだけど!勝った?!あんた!」
「いや…完敗だったよ。何もかもね。」
「でも連絡出来んなら!生きてんしょ!すぐ行くから待ってて!」
「もういいんだ致命傷喰らったからね。それよりあの男の情報を送りたいので少しいいかな?」
宇佐美は神野に自身が持っている情報を全てわたした。
「…それで…あんたはもう死にてぇってわけ?あーしの力ならまだ…。」
「いいんですよ。…死にたくないという気持ちがないわけではありません。それでも完全敗北の致命傷です。…その上で私は化石になって死ぬことができるんです。僕にとってこれ以上ないほどの素晴らしい死に方です。」
「そっ…ならあーしは止めねぇわ。最高の人生の幕引きおめっとさん。」
「ええ。ありがとうございます。」
「なぁ…ウサミン。もし化石にたったらさ。あーしがあんたを掘り起こしていい?」
「えっ?」
神野の一言は宇佐美にとって意外な言葉で思わず間の抜けた返事を返してしまう。
「あんたは恐竜の化石見てそんなふうになったんならそこまでやった方が良くね。」
「確かにそうなれば僕の人生はようやく完成するかもしれません。…でも本当にいいんですか?」
「いいっていいって…あんたはあーしがここにきてなんもわかんねぇ時に最初に話かけてくれたじゃん?…めっちゃ変な奴だったけど。」
「仕方ないでしょ。…僕は恐竜なんですから。」
「それが変な奴なんよ。…ところで恐竜って何年くらいで化石になんの?」
「どのくらいでなるのかは正確には分かりませんが最低でも一万年は掛かるかと。」
「マジぃ?…まぁでもぜってぇに掘り起こしてやんよ!あーしは約束は何があっても守るから!それまで何がなんでも生きて生きてやっから!」
「えぇ。ありがとうございます。では一万年後にまたお会いしましょう。」
「約束だかんな!どっかでボロボロなんなよ!」
「はい。約束です。」
宇佐美の身体から鱗が生え眠るように倒れ込む。
その身体にまるで布団のように優しく彼の身体に砂が振り積もる。
遥か遠い未来。
とある研究者達が洞窟を掘っている。
「見つかりました!」
研究者の一人が声を上げる。
「それは本当かい?」
1人の老婆が研究者の元へ現れる。
「全体を掘り起こしてみます。」
数日後恐竜は完全に掘り起こされ太陽の元に姿を現す。
老婆は恋人のように恐竜の化石を優しく撫でる。
「随分と待たせちまったねぇ。」
「言ったっしょ。あーしは約束をぜってぇに守るって。」
老婆はかつての言葉遣いに戻り恐竜の前で他の研究者に気づかれることなく静かに眠った。
書きました。
先週はここまで書きたかった。




