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ポナの季節  作者: 大橋むつお
90/92

90『ちょっと大輔くん!』     


ポナの季節・90

『ちょっと大輔くん!』     





 白い花が一面に咲いている。


 花畑……と思ったが、地面まで白い。よく見ると地面は土ではなくシルクのようにきめ細やかにさざ波だっていて地平線のかなたまで続いている。

――いい香り……この先に何があるんだろう……――

 ミツバチは地面すれすれをドローンのように飛んでいる。


 さざ波は、いつか無限に続くレースのヒダになり、白い花たちともにそびえていって壁のようになった。

 ミツバチは壁に沿って上昇していく。上昇するにしたがって、いい香りはますます強くなっていく。

――この香り……どこかで……――

 記憶をまさぐろうとしたら、白い壁は反り返ってミツバチに迫ってきた。

――ぶつかる……!――

 海老ぞりになって反り返りをかわす。それから横ざまになって壁にぶつからないように飛ぶ。壁は丘を横倒しにしたような丸みになっている。丸みの頂点まで来ると、その向こうにもう一つ丘があり、二つの丘はゆっくりと隆起と沈降を繰り返していることに気づく。

 ミツバチは二つの丘の間の谷間を上昇、香りはますます強くなってくる。

――お、これは……――

 一叢の花々を超えると唐突にペールオレンジの艶やかな壁に変わった。壁はしっとりとした潤いと熱気に溢れていて、ミツバチは上昇を止めホバリングした。

――花畑は、このペールオレンジを隠していたんだ――

 見下ろすと、白い丘は二つのペールオレンジの丘を包んでいるにすぎないことが分かる。眼下に丘の谷間、いい香りはそこから匂い立っている。

――あそこに行きたい……!――

 ミツバチがダイブの姿勢をとったところで声がかかった。


「ちょっと、大輔くん!」


「あ、ポナ…………」

「見とれてくれるのはいいけど、もうじき式だからね」

 ウェディングドレスのポナが頬を染めて言った。

「え……式って?」

「しっかりしてよ、今日は……あたしたちの結婚式じゃないの」

「そうなんだ……ポナ、とってもきれいだ」

「えへへ(〃´∪`〃)ゞ大輔くんだって、タキシード……とっても似合ってるよ」

「え、俺タキシード?」

「そうよ……あ、ネクタイ曲がってる」

 ポナが頬を染めたまま大輔に近寄った。目の下にポナの胸が迫って、さっきの香りが立ち上ってくる。

「……あの、ネクタイ直った?」

「……ねえ、キスの練習しとこ」

「え……」

「だって、大輔くん下手なんだもん。本番で失敗したくないでしょ」

「うん……」

「じゃ……」

 ポナは爪先立ちして目を閉じた。

「うん……」

「ポナ……」

 大輔は両手をポナの頬に添え、間近に唇を近づける……とたんに大輔はミツバチにもどってしまう。

「どうしたの?」

 言われて大輔は人間にもどる。

「なんでもない……じゃ」

「うん……」

「ポナ……」



 もう一度大輔は唇を近づける……再び大輔はミツバチに。繰り返しているうちにアラームが鳴りだした。



「時間がないわ」

「うん……」

「始まっちゃう」

「結婚式」

「ううん、授業」

「授業……?」

「うん、もう先生来てる」

「え?」

「蟹江、起きたら、この問題やれ」

 目が覚めると数学の先生に当てられた。


 大輔は、遠慮していたポナへの電話を半月ぶりにした。




☆ 主な登場人物


父      寺沢達孝(60歳)   定年間近の高校教師

母      寺沢豊子(50歳)   父の元教え子。五人の子どもを育てた、しっかり母さん

長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉

次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員、その後乃木坂の講師、現在行方不明

長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官

次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ

三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )

ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。


高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)

支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子

橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長

浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊

吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。

佐伯美智  父の演劇部の部長

蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒

谷口真奈美 ポナの実の母

平沢夏   未知数の中学二年生


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