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ポナの季節  作者: 大橋むつお
57/92

57『専務の頼みとSEN4・8』


ポナの季節・57

『専務の頼みとSEN4・8』    







 専務の頼みは二つだった。


 一つは、投げ銭の中から必要経費を除いた分の使い道だ。

「半分は将来に備えて貯金。あとの半分は福祉事業に寄付してもらいたい」というもので、全員文句なし。


 もう一つは「明日の日曜も頼む」というものだった。


 正直嬉しかった。が、土曜一日のことと思っていたので、走り切ったマラソンをもう一度という感じだ。


 安祐美は元来が幽霊なので、実体化の持続がむつかしく、ボーカルを交代することを条件にせざるを得なかった。

「なんで、幽霊なのにマッサージしなきゃいけないのよさ!」

 そう文句をいいながら、控室で安祐美の体をマッサージした。

「実体化って、とてもくたびれるの。例えて言えば、イルカが二日続けて陸上にいるようなものなの。無理してんのよ」

「安祐美マッサージしてると、なんだか……眠くなってくるね」

「あ、そういう時は交代して。このマッサージって、あんたたちの生気を少しいただいてるってことだから」

「えー! そいじゃ、あたし早く歳とっちゃうとか!?」

「ないない。ただぐったりして眠くなる。やりすぎると起きれなくなるから」

 で、由紀、みなみ、奈菜と交代しながら本番直前まで続けた。


「みなさーん、こんにちは! SEN4・8です! 今日も、こんなステージで初公演二日目が行えるなんて思ってもみませんでした!」


 MCまで引き受けたポナは、MCの喋り方まで安祐美に似ているので、自分でもびっくりした。どうもマッサージで、安祐美の癖まで移ってしまったようだ。

 昨日のステージは多くの人が動画サイトに投稿してくれたので、評判を呼び、今日は立ち見が出るほどの盛況ぶりだ。

 蟹江が、恥ずかしげも無く『SEN4・8 ポナ命!』と横断幕を張っているのは恥ずかしかった。

 前列には、みんなの家族が陣取っている。


 これでマスコミが取材にでも来てくれれば言うことないんだけど……と思ったけど、世の中、そこまでは甘くない。東京には、この程度の面白いことは、毎日掃いて捨てるほど起きている。


 今日は前半から客のノリがよく、ポナは、ついMCにも力が入りすぎた。ボーカルも、こんなにキツイとは思わなかった。


 コスも汗みずく。終わったらすぐにクリーニングだと思った。で、クリーニング代って必要経費になるのかなあ……などと冷静に考えている自分がいるから不思議だ。


 観客のコールは「エス!イー!エヌ! フォーティーーーーーエイト!」というのが多く、これで定着するんだと思った。


 アンコール込みで昨日より多い九曲を歌い終えてお開きになった。

「君たち、握手会だよ、握手会!」

 控室に戻ろうとしたら、専務に言われた。もう観客はAKBのノリである。

「ありがとうございます!」

「はい、元気です!」

「今度もよろしく!」

「ブログやりますんで、よろしく!」

「すみません冷え性なもんで(笑)」

 最後のは幽霊の安祐美。

 1/4程の観客が、ポナとの握手を求めた。やっぱ、MCとボーカルをやったことが大きい。


「新子、がんばってね!」


 新子と呼ぶ人も何人かいたが、一人の女性だけニュアンスが違った。思わず気を入れて見たが、もう後姿だった。

「おい、ポナ!」

 ムッとして振り返るとチイニイが手を出して突っ立っている。

「もう、みなみのとこに行くべきでしょ!」

「もう、行った。がんばってぇポナ!!」

 チイニイがオネエっぽく言うので、怒りながらもおかしくてならない。


 さっきの女の人、何だろう……頭から離れないポナだった。




ポナの周辺の人たち


父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師

母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん

長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉

次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。

長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官

次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ

三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )

ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。


高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)

支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子

橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長

浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊

吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。

佐伯美智  父の演劇部の部長

蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒

谷口真奈美 ポナの実の母


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