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そのサヨナラグッバイは誰に対してですか

ばっちり風邪をひきました。ええ、それも盛大に。

寒暖差が激しくなってきたせいと思われます。皆様も体調管理にお気を付けくださいまし。



いきなりですが僕はかなり特殊な書き方をしていると思います。といいますのも、ぷろっとなるものは横においといて、自分が描きたいエピソードやシーンを思いついたが吉日とばかり書いちゃうのです。そこに至る前後の話などは後でくっつけてる感じです。

これはきっとわかる問題から先に解いていけと、過ぎし日にくどいほど教わったためだとマイ先生ズのせいにしておきます。


長々と書いておいて何を言いたいかというとですね。





ベニグノ……生き残らせちゃった……どうしよう……




魔獣の欲求を存分に満たした後、魔力が回復して体調が上向いたオレだが、先ほどの晩餐を思い返して耐え切れずに吐き戻していた。

赤黒い胃液で出来た水たまりに細かく噛みちぎられた肉の欠片がいくつか浮いている。その光景が再び嘔吐を誘うという悪循環。



「あんたみたいに小型の魔獣は血液だけ摂取するのが効率的だね」



肩で大きく息をするオレの背中ごしに覗き込んだヴェラがそう声をかけてきた。

魔力を象徴するものの中で最も重要な位置を占めるのは血である。効果的に魔力回復だけを考えるのであるならば、何も肉を喰らう必要はないそうだ。

肉にも魔力を回復させる力はあるにはあるが、血液に比べて魔力の含有率はやや劣る。さらに言えば固形物である肉を収めるスペース――胃袋の大きさが必要になる。また消化吸収に要する時間もかかるためである。



「肉を欲するのは魔獣に少なからず備わってる獣性のせいだよ。あんたみたいなヒト型から姿がかけ離れるにつれ、それは強くなるもんなのさ」


「――うぅー。そういうことはもう少し早くいって貰えると嬉しんだけど」


「かかかか。何事も経験だよ、経験。見ると聞くとじゃ大違いってね」



からから笑うヴェラをオレは非難がましく睨みつけつつ、血と胃液や涎で汚れた口を冷たい水で何度もすすぐ。駄目だ、あの調理されていない肉のほのかに生温い感触が抜けきらない。部位にもよるのだが、ナメクジを口中に放り込んだような感覚がたまらない。これも慣れ次第なんだろうか。

魔獣補正でもかかっているのか、味覚については信じがたい事にあれをこの上ない美味と脳が認識してくれているので、妙な連想をすることを横に置けば問題はないと言える。それになにより、食事前の体調不良、意識の混濁状態、飢餓感からくるおよそ正常とはいえない精神状態から回復できる事を鑑みれば確かに現状これ以上の回復手段はないように思えた。

残念ながら今後もそのチャンスに恵まれ続けるのだろうが、食事を嫌った結果に例え枯渇死を免れたとしてもこの過酷な環境下であの飢餓状態であり続けるという事は危険極まりない。状況次第ではむしろ積極的に摂取する方向でもいいのかも知れない。



「それに一度経験しておけば次はだいぶハードルは低くなるもんさ。――それはそうと、体調も回復したようだしいよいよ本題に入りたいと思うんだけどね」



オレとベニグノがそろってこの川原に姿を現したそもそもの理由は、彼の魔道の師であるヴェラに会い今後の方針を定める事である。大変な横槍がはいったわけではあるが、結果としてはヴェラに会う理由のうちのひとつ、魔術の習得に関しては達成できたと言ってもいい。

彼女に言わせると、ついでに食事という通過儀礼を済ませることができたのが勿怪の幸いだそうだ。それについてはオレは苦笑するしかないのだが。


で、肝心の今後についてなのだが、ヴェラの提案はまず何をおいても内海南西部の小島にある<蛇姫>の社でホーム設定をしたらどうかというものであった。

現実世界では聞きなれない、というよりもゲーム用語そのままな単語にオレは眉をひそめた。



「最初に<星>に言われなかったかい?ヒトに<閲兵の儀>があるように魔獣にも類したものがあるって」


「……あ、あーあー!聞いた聞いたそんなこと。それが……なに?ホーム設定っていうやつ? 」



ホーム設定、またはねぐら設定と呼ばれたこのシステムは、ヒトの<閲兵の儀>に対して<星>が設定したこの世界で唯一のゲーム的な名残である。

これは各々が関わりの深い土地にねぐらを定め、さらに野生動物よろしく縄張り――テリトリーを持つことで完了となる儀式だそうだ。

テリトリー内には、住み着いた魔獣本体から漏れる魔力の影響を受けて魔力が物質化した魔石と呼ばれる水晶体が形成されるのだが、これが時間を経過するにつれ少しづつ鍾乳石のように成長し今度は逆に魔獣に影響を及ぼしだすのだという。

成長した魔石はそこに住む魔獣に一定の魔力の補充と、魔力で構成されているがゆえに可能なのだが肉体の再形成――癒しの効果を与えるのだ。ゆえに魔獣にとってねぐらは生き抜くために必須ともいえるべき要素であり、<星>はこれを設定する事が<閲兵の儀>の代用品と定めたのである。


ねぐらを取り決め、その際に自己の能力を識り、魔術を操ってヒトを捕食してはじめて魔獣は魔獣となるのだという。

生まれ落ちてすぐ冒険者に命を狙わ、ほうほうの体で逃げ延びたオレは随分と順番がおかしくなったようだった。


さらに彼女の話は続いた。

ベニグノに事前に聞いていたのだろう、彼女はオレたちに会う前、このひと月の間に可能な限りオレと同時期に転生した魔獣たちに接触したのだという。

これはオレにとって思いがけない朗報だった。彼らの無事を尋ねると、皆一人残らず息災で、全員魔獣としての手続きを終えて今は西を目指して移動しているはずだそうだ。

なぜ西に?という質問に対して彼女はこの世界の地理情報と簡単な勢力図を説明してくれた。


いまだ名前のついていないこの大陸を上から見ると、大雑把にアルファベットの「C」のような形状をしている。中央に広大なカストリャ内海が鎮座しており、「C」の書き始め、北東方向の沿岸部にオークを盟主にした亜人の国々があり、そこからぐるっと反時計回りに移動して南西までが魔獣が支配する秘境と呼ばれる広大なエリアになる。

南東の平野部分とほぼ真東の沿岸部はヒトたちの所領だ。内海から東に外海とを繋ぐ形で大小何条もの河川が存在しており、これが種族的好敵手と呼称して差し支えないヒトと亜人とを隔てる天然の国境になっていた。

以上の地理的要因をふまえると、魔獣が西へ西へと移り住むのは必然といえる。


またオレたちが転生前に集合地点として挙げた宿場町アレハンドであるが、そもそもこのアレハンドが捨てられた宿場町であるという情報自体がそれぞれが生前プレイしていたゲーム情報である。

ゲーム末期にプレイしていたと思われる白人警官のジョーと日本人青年ワタルの二人の提案でこの町を合流地点と定めたのだが、彼らの情報ではアレハンドは未実装エリア――まだ進入する事のできないエリアである西域探索の拠点として実装されたそうだ。尤も、その探索されるべき対象の西域エリアは最後まで未実装のままサービス終了を迎えたらしいのだが。

そのような理由からアレハンドはゲームプレイにおける人口中心地とはかけ離れたマップの西端に、当然のことながら利用価値がないものと認識されて存在しているだけであったらしい。

オレや他の数人などはゲーム末期を迎える前にこのゲーム自体から離れていたため、アレハンドの名前すら知らないか、知っていても未来のバージョンアップで西域探索の拠点ができるらしいよ程度の噂話での認識しかなかったのだ。


ところが、である。

今あげた情報は全て過去のゲームであった頃のお話だ。

現実世界となるとこれは大きく異なった。当たり前の話だが、西域エリアが未実装などという事自体がありえないのだ。この天地が続く果てまでのどこを探しても未実装などという奇妙な地域は見つからない。いまだ発見されてはいないが、この大陸から飛び出て尽きない外洋と呼ばれる大海を越えた先には、新大陸が存在しているのかも知れないほど世界は広大で、当たり前だが現実的だ。

さらに言えばゲームとは違い時間も留まらず流れ続けている。内海から南西寄り真南に存在したアレハンドだが、この現実世界では西域探索の橋頭堡としての役割を存分に発揮しており、ヒトの領域は当初よりも遥かに西へとアメーバのごとく魔獣の領域を侵していたのだった。

アレハンドを拠点に探索のプロであるエクスプローラー達と魔獣やモンスター討伐の専門家スレイヤーズが何十組、何百組と毎日のように西域へとくりだし魔獣の版図を削り取っていた。彼らは比較的安全な領域に宿営地を設置し、さらに西へとわけいってゆく。そしてその宿営地にアレハンドから人と物資が流れ込み村を形成し、ゆくゆくは第二、第三のアレハンドへと発展してゆく相を呈している

ここまではヒトの思惑通りに事が進んでいるようである。その証拠に東にあるヒトの本拠地とを内海沿いの街道で結び、橋頭堡アレハンドから西域へと放射状にヒトの生息圏が着実に広がりつつあった。

<蛇姫>の出現地点である内海南西部沿岸も今ではヒトが安全とは言い切れないまでも、一昔前を思えば十分に活動範囲内であると言えるの状態ではないだろうか。


以上の理由から、オレのアレハンドを目指すという当初の予定はあっさりと破棄されたのである。


さて、そこで少々話は変わるが、その魔獣は現在二つの勢力とそれに属さない者たち、計三つの勢力に分かれている。

ひとつは、ヒトと何らかの形で積極的に関わりを持ちながら共存共栄を目指すグループ。もうひとつはあくまでもヒトとは隔絶した僻地に逼塞し、不干渉を貫いた上で大陸上で生きていく生物として共存を主張するグループである。

この二つは両者とも亜人ではなくヒトとの共存を掲げているのだが、決定的な相違点があった。端的に言えば前者はヒトを同格という認識の上で友好的であろうとするのに対して、後者はヒトに対して格別の感情などなんら持ち合わせていない。陳腐な形容ではあるが路傍の石とでも言うのであろうか。彼らはヒトを「どちらが上かなどとは考えていない、互いの考えや立場を尊重し干渉しないだけ」と主張する通り、実害が及ぼされない限りにおいては一顧だにしない。

大袈裟ではあるが種の存亡の危機に際したとして窮状を訴えたとしても、彼らは無視し続けるだろう。だからどうした勝手に滅べ、と。

そして残るひとつ、その二つのグループに属さない者たちなのだが、そのほとんどが魔獣の欲求に忠実にほしいままに振舞う者たちで構成されている。彼らは大変自己中心的であるがために群れを形成することがなかった。今のところ明確な主義思想があるわけでもなく、この大陸のあちらこちらで個々で自由気ままに生息している。

一言で彼らの行状を説明すると傍若無人、これに尽きる。時も場所も弁えず、魔獣の力を思うに任せてふるうのだ。ある意味、本性に正直であるといえるこのグループがもっともヒトらがイメージする魔獣の姿に近い、というのは前者二つのグループに所属する者たちにとっては悪夢としか言えない。好き勝手に暴れまわる彼らのお陰で、ヒトや亜人にとっては魔獣は大陸の隣人ではなく討伐すべき脅威以外の何者でもなくなるからだ。


そのふたつのグループのうち不干渉を貫くグループは北西方向、極地にほど近い凍土が広がるエリアを本拠地に、ヒトとの共存共栄を目指すグループは内海の正確に真西方向、前人未到の密林の最奥にあるかつてのヒトがここに存在していた事を示す国の居住区のなごり――遺跡群を本拠地としている。

そして、その共存を画策するグループにヴェラは属しており、それゆえに翼を羽ばたかせて大陸を駆け回り自陣の強化――新しく生まれ落ちた転生者たちを味方に引き入れる事に励んでいたわけなのだ。


こうして現在ではどちらかに属するにしろしないにしろ、魔獣は安住を求めて西へと移り住む傾向が強くなっているわけである。


ヴェラがオレに接触してきたのも、ロメジャン他の転生者に接触して西域行きを促すのも、本音を言えばつまるところは自己が所属するグループの利益のためである。

仮にヴェラのグループに所属したとしよう。何らかの協力――恐らくは<蛇姫>としての癒しの能力なのだろうが、を求められる事は明白だ。親子関係じゃあるまいし、一方的に保護してもらえる、助けてもらえるなどという脳みそまで虫歯に冒されたかと疑われるような甘い考えはオレにはない。魔獣の一員として共同体で自立して生きていくことを望まれるのだろう。

そしてそれは、ロメジャン達と合流しても規模こそ違えども方向性としては変わりないものになる、そう言い切れるものなのだ。そこまで考えが及んだからこそ、ヴェラの提案を受け入れたからこそ、全員が西を目指しているのである。

右も左もわからない者同士で固まるよりは、先達者の群れに紛れ込んだ方がより楽に生きていける。ましてその先達者たちの考えが、だいたいにおいて自分たちに沿うものであれば尚更問題はない。


ではこの申し出を断った場合はどうなるのか。答えは簡単だ。皆と袂を分けてこの過酷な世界を己の才覚のみで生きていくことになる。

だが、それは無理な話だ。それができないことは<蛇姫>も、オレ自信もよく理解している。それをやってのけれるくらいなら、ヴィクトルの呼びかけに応じなかったあの三人のように我関せずを貫いている。


オレは一にも二にもなく彼女の話に乗る事を伝えた。彼女はオレが断らないと最初から踏んでいたようで、さも当然のように頷くと再度の意思確認すら求めずに話をまとめだした。


闖入者の対処とその後のベニグノの治癒に時間を割いたため、想定していた時間よりも大きく遅れていたのだ。

頭上にあった陽も大きく傾いて、あと一、二時間もすれば遥かにみえる山々に姿を消すことになるだろう。そうすれば、あたりを支配するのは漆黒の闇である。電気の光がない世界だ。夜の闇は現代人には想像もつかないほど深いものとなる。

ヴェラもオレも暗視もちだ。ではあるが、夜の住人たちのような本格的なものではないので、できればその前にオレを連れて<蛇姫>の社に辿り着いておきたいのだそうだ。できれば今すぐにでも発ちたい――ヴェラはそう希望した。


そこまで話が進んだところで、傍らにずっと無言のままでオレとヴェラのやり取りに耳を傾けていたドワーフの友人の存在に気づいた。



「ベニグノは?……一緒には、来てくれないのかな? 」



オレの問いかけに、だがベニグノは笑みをたたえたまま小さく頭をふった。



「生まれたてのおぬしを保護してヴェラに引き合わせるまでがわしの仕事じゃった。癒しの術を習得した今、わしと一緒におる利点なぞ何もない。ここに留まるは無意味じゃし、ヒトであるわしには秘境の奥へと踏み入る事はかなわん」



魔獣には魔獣の世界があり、それぞれの生き様がある。本来あるべき所に落ち着く、それだけの事。いずれまた道が交じり合う事もあろう。ベニグノはそう締めくくった。

同じ大陸の住人でありながらヒトと亜人そして魔獣は同じエリアに存在できない、そういうことなのだろうか。触れ合う事があってもそれはあくまでも束の間の出来ことなのだろうか。

しかし、ヴェラのグループはヒトと共存共栄を目指しているはずだ。だからこそベニグノに命そのものというべき魂を分けた与え、魔獣に対してある一程以上の理解を以て魔獣の言葉を介する存在になったベニグノはありがたく、貴重なものであると考えているのではないのか。

そして、それは恐らくは正しいはずのだ。


だが、なおも言い縋ろうとするオレに辛辣としか言えない指摘をしたのは誰あろうヴェラである。

ベニグノは死にかけた。冒険者――スレイヤーズ達の手によって。どうしてそんなことに?と聞かれればオレは口を閉ざして俯かざるをえない。全てはオレこと<蛇姫>のせいなのである。

つまりはオレと一緒に行動するということは、今後ずっとヒト亜人問わず命を狙われ続けて危険に晒されるということなのだ。それも当人には何ら落ち度はなく、純粋にオレのとばっちりを受けるという不条理極まりない。それに付き合うのはよほどの命知らずか酔狂か。

それでも一緒に来てと言えるほど、残念ながらオレは厚顔でも恩知らずでもない。



「何も永劫の別れってわけでもないんじゃぞ。有難いことに祈祷師としてのわしを必要としてくれる村人たちがおるでな。必要とされる限りにおいて、わしはここで暮らすつもりじゃ。こんな髭面でよければまた来たい時に見に来てくれて構わんぞ」



愚図る子供をあやすかのようなベニグノの低い、優しい声。背の低い彼が、オレの腰のあたりをぽんぽんと叩く。

まだ出会ってひと月足らずのはずだが、彼の空気にオレはひどく依存しているように思われる。オレってそんなに幼かったかな、などと内心で首をひねりたいほどだ。

もしかしたら、ユーリの記憶が<蛇姫>の中に遺伝子のように蓄積されてオレに影響しているのかも知れない。ベニグノが言っていた「時を過ごすにつれ<蛇姫>の器に染まる」とはこういう一面もあるのかも知れないのだから。


考えてみればベニグノはなぜこんなにオレを気にかけてくれるのだろう。いや、オレという像の向こうにある<蛇姫>ユーリを、という方が正確なのだろう。

何にしても文字通り命がけで<蛇姫>であるオレを助けて、今も死にかけたのに文句のひとつすら口にしないのだ。彼のこれまでの言動や目を見ればわかるが、それは憐憫や色恋とは別のものであると断言できる。最も近いのは我が子を見守る親の情であろうか。



それよりはもっと――もっと近い感情は……オレを通して<蛇姫>に抱いているのは……贖罪めいたものではないか



先代ユーリは食事も取らず癒しの術を使い続け、最後は灰と化したという。ベニグノは当時、随分とユーリが無理を押して術を使い続ける事を諌め、食事を摂るよう奨めたと聞いている。

ベニグノはユーリを救ってやれなかったと自責の念にかられたために、その代償行為としてオレに良くしてくれているのだろうか。だとしてもそこには彼が負う責はないと思う。魔獣である<蛇姫>がその力を行使するのも、食事をとるのもその責任の帰結は当人にあるはずだからだ。

それとも――それとももっと他に、オレの知らない何かが過去にあって彼の上にのしかかって、それが悔いさせているのだろうか。


埒のない事を、とばかりにオレは頭を小さくふった。過去に何があったにせよオレには知りようのない事柄だし、今のベニグノとの間には何の関係もないはずだ。

そうだ、殊更に過去をほじくり返す必要などどこにもない。それに今この出立の場で、それを確かめてみる事が最優先事項であるようにも思えない。


かつての母が言っていた言葉をオレは思い出す。

「出かける間際に心が騒ぐような事を口にするものではない。余計な考えに注意をとられて事故を起こしたり、失敗しやすくなるからね。すっきり送り出すのが一番」

最終的にその言葉にオレは背中を押されて踏ん切りをつけたようなものだった。



――生まれ変わって最初に出会ったのがあんたで良かったよ。



口中でつぶやくも、言葉にはせずにオレは屈み込むようにしてペンギンのように愛らしいシルエットの友人を抱きしめた。

言葉にしたのはごく普通の別れであり感謝の言葉である。



「ありがとう、ベニグノ。またくるよ。きっと」


「おう。いつでもこい」



髭の感触と複雑に溶けあったハーブの香りが強烈に印象に残った。




<言い訳欄>


誤字脱字などは後日体調が戻り次第修正させて頂きます。

メローイエローを開発した人にノーベル賞を進呈したいほど好きなんですが、味がわかりません。あっはっは。寝ます。

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