表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄拳パンチ!  作者: 須方三城
第参章 妖刀坊主
16/16

第拾陸話 おいしい鉄を食べよう


 ……ああ、熱中症って奴ですかね。ちょいと、頭がくらくらします。

 何はともあれ、クソ僧侶は御神岩に深々とめり込んで指ひとつ動きませんし……一件落着ですよね。はい。


 あと、すべき事は……ええと、とりあえず、ユリちゃんや村の方々にご報告して安心していただき……そして、村の方々に知れない様に、あのクソ僧侶をどっかの町の警兵さんの所へ連れて行く……って所ですか。

 ……あの村の様子は、危なっかしいですからね。無防備なクソ僧侶を晒せば、必ず惨劇が起きる。

 まぁ、クソ僧侶のやった悪辣な暴虐を考えれば、村の者総出でじわじわと嬲り殺しの私刑に処されるのも無理は無し……しかし、それはどうにも見過ごせません。


 いくら斬首以外の末路は有り得ない様な大咎者が相手でも、私刑で嬲り殺せば御法度に触れる事になる。


 御法度ってのは、平和のためにあるもんです。

 実際、御法度とお裁きのおかげで、抑止されている蛮行は星の数ほどあるでしょう。


 いくら嬲り殺したい気持ちに共感できても……御法度に触れるなんて間違いを、許す訳にゃあ……ねぇ? 何より、復讐劇なんざ小童こどもに見せるもんじゃあなしに。

 ……あと、正しいお裁きを受けさせる事であのクソ僧侶に自身の悪行、その報いを自覚させるべきでしょう。……そんな殊勝な発想に至るかどうかは、奴を信じて願うばかりです。


 結論。

 クソ僧侶の身柄は、俺が、秘密裏に、きちんとお裁きの場へ突き出す。

 それがきっと、一番正しいと思います。

 納得しかねる者はいるかも知れませんが……そうすれば少なくとも、これ以上の悲劇は起こらない。


 んじゃあ、まぁ、まずは一番手近な所にいるユリちゃんへご報告といきますかね。


 と言う訳で、社の中へ。


「ほいほーい、ユリちゃん。終わりましたよー……って」

「ひぅぅ、て、鉄之助……た、たしゅけへ……」


 ッ!?


「ゆ、ユリちゃん!? ユリちゃん!? どうしたんで!? なんだかすごく具合悪そうですよ!?」


 何だ何です何なんでい!?

 ゆ、ユリちゃんが、先程まで、ぼて腹を抱えて無邪気幼気に笑っていたユリちゃんが!?

 顔中にべっとりと脂の混じった汗を浮かべて、苦悶の表情を浮かべながら横たわって……!?


「お、ぉにゃ、く、は……!」

「おにゃくはん? おにゃくはんって何ですか!? 不味い、鉄之助さんかつてない程に混乱中ッ!」

「おにゃ、くぁ……ひッ、ふぅ……お腹……が……痛い……これ、産まれるぅ……!」


 ――…………ほわぃ?


「……産まれる?」


 こくこく、とユリちゃんが顔を顰めながら頷いた。


「えぇぇええええ!? ちょ、待っ、産まれるってまさか……!?」


 例の玉鋼ですか!? 真面目マジで!? ひゃっほう!

 いや、でもこの様子、どう見ても赤様を出産される妊婦さんなんですが!? え? 鉄産巫女テツウミコが玉鋼を産むのってそう言う感じなんで? 赤様と同じ所から同じ感じで出てくるんで? どう言う内臓構造してたら口から入ったもんが産道に……って、今はそう言う事を気にしている場合では無し。

 ユリちゃんのこの苦しみもがく様子、普通の出産と同等の次元で扱うが無難と判断します! つまりは、一大事ッ!


「ユリちゃん! もう少しばかし我慢を! 今すぐ下山して産婆さんばさんを探してきますんで!」

「うん……がん、ばる……ひっ、ひっ、ふぅぅぅぅ……」

「それ我慢する時の呼吸と違いますよね!?」


 今すぐ産む気満々だこの子!


「……ごめん……頑張ろうと言う気概だけはあるんだけど……産むがやすし的な……!」


 ああ、要するに「滅茶苦茶に苦しいのでとっととひり出して楽になりたい」と。

 はい、うん、まぁ、出産の経験は無くとも「すごく苦しいらしい」と言う知識はありますんで、心理としてはわからないでもない。

 大体、あたら若い娘さんに「腹の中からデカブツが這い出してくる」なんて、野郎には想像もできない苦痛に耐えろ堪えろと強要するのも鬼畜の所業。


「……ええ、わかりました、わかりましたとも」


 やるしかねぇって話ですよ。


「鉄之助、今宵この時ばかしだけ……産婆になります!」


 俺はあらゆる者を助ける鉄の刃、鉄之助。助産もこなせずして何が鉄之助!

 やってやりますとも、ええッ!


「ひっ、ひっ、ふぅぅ……よ、よろしく、鉄之助……!」


 ユリちゃんが拳を握って親指だけを力強く立てた。あれは確か、最近若者に流行りだと言う手仕草。向けた相手を賞賛・激励する意図のもの。

 俺も同じ仕草で返しましょう。


 いざ、いざいざいざ!


 …………にしても……女子の股座をこんな緊張感で覗き込む羽目になるとは……もっといやらしい気分で臨みたかったもんだ。

 って、そんな愚痴を垂れている場合じゃあねぇ、お出ましだ。


「よし、良い調子っぽいですよユリちゃん! メリメリ出てきてます! この調子でもっといきんで! ひっ、ひっ、ふー!」

「……ひぃ、ひぃ、ふぅうううう……!」

「ひッ! ひッ! ふぅぅううううううッ!」

「ひッ……! ひッ……! ふうぅ、ふぅうううううう……!」

「よし、よしよしよし来い来い来い来い来い!」


 あと一息と見た!


「う……ぅぅ……疲れた……」


 って、あぁ!? ちょっと引っ込んだ!? 出産って戻る事もあるんで!? 嘘ん!?

 え、えぇと、こう言う時はどうすれば良いんで……!? とにかく、あれだ、出産に立ち会う時は、とにかく妊婦さんを褒め称え応援してやるのが定石だと聞いた覚えがあります!


「ユリちゃん頑張って! 大丈夫です、君は多分頑張れる子です! 笑顔が可愛い女子に頑張れない子はいない!」

「ぅ、ぅん……ひっ、ひっ、ひゅうぅぅぅうう……」

「その調子です! 大丈夫、君は偉い! 俺はこんな話を聞きました! 出産時に伴う痛みは、野郎では耐え切れずに死んでしまう程であると! 君はそれをここまで堪え、そしてついには乗り越えつつある! 感服、感嘆、ああ、感動でしかない! あと少しです! あと少しで君は伝説になるかも!」

「で、伝説……!?」

「ええ。えぇえ! 少なくとも俺は、この出来事を忘れない! 衝撃的過ぎてこれはもう忘れ様がありませんとも! 多分何度か夢にまで見ちまうでしょう! そして誰かにこの話をする時にゃあきっと、英雄の冒険譚を語る様に意気揚々と! 感情を込め、熱を込め、臨場感の溢れる語り口になってしまうに違いない! 君は今、それだけの事を為そうとしているんです!」


 もうね、唐突に鉄産巫女テツウミコの貴重な出産場面を見せつけられ、挙句、産婆さんの真似事(できているかは怪しい所ですが)をさせられるなんて経験、おそらく耄碌もうろく極まって往生する時にだって鮮明に思い出せますよ、こんなん。

 少なくとも、俺の中じゃあ伝説だよ君はもう。


 あとは、無事に幕を下ろすだけですよ。

 さぁ、きっちりと玉の様な赤様――否、玉の様な玉鋼を産んで、笑顔で伝説のケツを締めくくり、話を結びましょう。


「だから頑張れ(ひッひッふぅぅ)!」

うん頑張る(ひッひッふぅぅ)!」

ユリちゃぁん(ひッひッふぅぅ)!」

鉄之助ひッひッふぅぅ!」

「「ひッッッひッッッふぅぅぅぅぅうううううううううううーーッ!!」」



   ◆



 そりゃあもうね。噂に違わぬ上等逸品でした。


 ……伝説だの何だのってのは大抵、誇大伝聞、そりゃあもう尾ひれ背びれに羽ひれがビッシリひれっひれと付いているもんだと、少々の肩透かしは覚悟していたんですがね。

 ありゃあ、そんな杞憂を一瞬で吹き飛ばしてくれる代物でしたとも。


 見ただけで感じた。産まれ落ちたそれを指先で触れた瞬間に確信した。

 この玉の様な玉鋼は、虹七色の光沢で煌くこの金属は、全ての面において、この世のあらゆる金属を凌駕する。無数の金属の優れた部分だけが、この玉に凝縮されている。


 ああ、ああ!

 神話が生まれるはずだ、仏が生まれるはずだ、伝説が生まれるはずだ。

 讃えられて、信仰されて、語り継がれて、当然じゃあないか、こんなもの。


 一口、いや、一舐めで良い。味わってみたい。それと引き換えに斬首だと言われても、きっと俺は頷いてしまう。


 ――……ですが、そうも、いかない。


「――本当に良かったの? 鉄之助、そのためにずっとずーっと旅をしてたんでしょ?」

「ずっとずーっと……ってのは誇大表現ですね。せいぜい半年と少しです」


 社の縁側にて。

 陽気にあたりながら、産後の疲れがすっかり取れたユリちゃんと世間話に興じる。

 産後はしばらくぐったりしていたから心配したもんですが……元気そうで何よりってもんで。

 腹もすっかりへっこんで、どこからどうみても、ただただひたすらに可愛らしいお嬢ちゃんだ。


「半年も経ったら、赤ん坊だって這える様になるよ? すごく長いよ。それだのに、私の玉鋼、食べなくて本当に良かったの? 一口くらい、食べちゃえば良かったのに」

「…………………………」


 まったく、こちとらここ数日、毎日、未練とたらたら揉めに揉めてようやく気持ちに整理が付いて来た所だってのに。この子は容赦無くほじくり返しなさる。

 ま、純粋無垢な子供故の事、恨めしくは思いませんがね……それでも、ちょいと勘弁はしていただきたい所ですよって。


 ――ええ、俺は、あの玉鋼を、一口、一舐めすらもしていませんとも。

 願望はあった、欲望も、未練も、執念も湧いた。それでも、駄目なもんは駄目なんですよ。


 ありゃあ、使い方を選ばなきゃあ駄目なんだ。


 あの玉鋼は、間違った手段で作られちまった。

 クソ僧侶が、極悪非道な強奪行為を山ほど働いてかき集めた鉄くれによって、産み出されちまった。


 玉鋼には勿論、ユリちゃんにだって罪は無い。

 でも、あの玉鋼の存在は、間違っていた。間違いの上に、成り立っちまっていた。


 だから、戻さなくちゃと、ね。まぁ、完璧にゃあ戻りませんよ。それでも、できる限りはやらにゃあ筋が曲がっちまうって話で。


 玉鋼は全て、村の者達に還元しました。


 クック船長の日誌通り、鉄産巫女テツウミコは食い溜めた鉄と同じ分量の玉鋼を産む。

 両手で抱え切れる大きさと重さだったのに、あの玉鋼は叩いて伸ばせばそれだけ広がった。ユリちゃんが食べさせられた全ての金属が、あの一塊に圧縮されていたんです。

 あの密度と体積でありながら、あの軽量っぷり……やれやれ、本当、浮世離れした金属でしたよ。


 そうして叩いては伸ばし、村の者達が各々奪われた物を、俺が親父譲りの鉄鍛術法てつうちじっぽうを以て作り直しました。

 ……形見だの、思い出の品だのは、形だけの復元になっちまいましたがね。それでも、ただ失われたままにするよりは、って所で。


 で、だ。

 奪われたもんをそのままそっくり全部作り直しゃあ、帳尻も合うってもんで?

 仕事を終えた頃にゃあ当然、玉鋼はかすも残っちゃあいなかったって話。


「それにしても、村の皆も、もう少し鉄之助を労ってくれても良かったのにね。一応御礼は言ってたけど……『済んだなら村から出てけ』って、少し酷くない?」

「そりゃあ仕方無いでしょう。……皆様から見りゃあ、俺は、同胞の仇を匿ったも同然ですし」


 クソ僧侶を警兵に引き渡した件……村長さんはかろうじて理解を示している風でしたが、納得まではしていませんでしたね、ありゃあ。

 当然、村の皆様も、俺に侮蔑や敵意の視線を向ける者の方が大多数って所で。「あんな奴が作った物なんぞ要らん」と作り直した物を水路に投げ捨てちまう方までいらっしゃいましたし、最初に出会った少女にゃあとんでもない罵詈雑言の叫びをかけられ、あの竹槍少年にゃあまた脇腹を突かれちまって。


 ……ってな感じで、ここ数日はユリちゃんの産後経過を見守りつつ、村とは一線をおいたこの山社に世話になっていた訳です。


「それでもさ、鉄之助は……」

「……これで良かったんですよ。少なくとも、俺は間違った事はしちゃあいません。だったら、それで良いんです」


 村には惨劇の記憶が残り、多くの命と思い出が失われた。結局、誰も得はしちゃあいない。

 それでも、俺は、筋を通せるだけ通したつもりです。為せるだけの善行を為したつもりです。助けられるだけの誰かを、助けたはずです。


 ……本当に、助けられるだけ、は。

 いつになったら、俺は、「助けられるだけ」なんてけちな事を言わず、皆が皆を完璧にどこまでも助けられる様になるんでしょうね。……未熟さが歯がゆいったらねぇや。


 ――万事万能な神仏の領域にでも達しない限り、そんな存在にゃあ永劫届きはしない。

 そうはわかっていても、俺は禁欲主義の僧侶じゃあないんで、欲っするし、望みもしますよ。


「……鉄之助は、良い事をしたし、頑張ってたと思うよ?」


 ……おっと、いけない。辛気臭い思考が面に出ちまった様だ。

 こんな小さな子に気を遣わせちまいました。


「ありがとうございます、ユリちゃん。君みたいな可愛い女子に褒められるのが、俺に取っちゃあこの上無い労いですよ」

「そう? なら良かった。えへへ」


 本当、純粋で、優しい子ですよ。

 この子が今、こうして笑えているのは自分の所業の末。

 そう思えば、いくらでも報われた気分になれるってもんです。


 ――助けられなかった方々に対する無念を忘れてはいけない。されど、助ける事ができた方々に対する歓喜をないがしろにしてもいけない。


 これからも今まで通りしっかりと。

 後悔は心の内に。面は笑顔でいきましょう。


「さて、ユリちゃんも完全に快気軒昂って具合ですし、そろそろ、俺は行くとします」


 傍らに置いといた笠と、鞘に収めているへし折れた妖刀を拾い上げ、それぞれ身に付ける。


「旅、続けるの?」

「えぇ。まだ、目的を果たしていませんので」


 俺の旅は、鈩姫タタラメ――つまりは鉄産巫女テツウミコを見つけ、その玉鋼をいただく事です。

 旅路はまだ途中って事だ。再開するのが道理でしょう。


 まぁ、一旦は壊染えぞの実家に帰ってから、ですがね。

 妖刀の加工と、斌秀盧ひひいろ合鋼ごうきんの予備を取りつつ、ついでに親父の墓参りでもするつもりです。旅路は中途とは言え大きな進展もありましたし、経過報告って奴で。


 そのあとは……、


「出産慣れした鉄産巫女テツウミコの方でも見付けて、俺のためにちょいとひと頑張りしてもらえませんか、と頼んでみるとします」

「? 何でわざわざ別の鉄産巫女テツウミコを探すの? 私じゃあ駄目なの?」

「え……」


 ……きょとんとした様子で言ってますけど……、


「出産、滅茶苦茶キツかったでしょう?」


 あんな壮絶な出産風景を見せつけられて、君みたいなまだ幼い子にそれを頼むのは……ねぇ?

 出産経験豊富な方ならば、多少は頼み易いってもんで、そう考えていたんですが……。


「それはまぁ……でも、私、鉄之助に助けてもらったから。恩返しだと思えば……うん、きっと頑張れるよ?」

「こりゃあまた嬉しい事を……いやしかし……やはり、俺としましては、君みたいな幼気な女子に体を張らすってのは、どうにも……」

「……頭かたい」

鉄丈郎テツジョウロウですし」


 適材適所、難少なくこなせる者がその役割を請け負ってくれるのが、頼む側の心境としましてもね?

 俺のために頑張ってくれるって気持ちは嬉しい限りですが、その辺がどうにもね?


「誰だって最初は初心者だもん! 私だってその内、出産慣れするもん!! ぽこぽこぼんぼこ産みまくるもん!!」

「女子がそう言う宣言するってのもどうなんで?」

「? そう? あんまり気にしないけど」


 まだ淑女ではなく、あくまで少女って事ですかね。


「あ、そうだ! 私は良い事を考えたよ!!」

「ほう、そりゃあ、すごい。で、そろそろ俺は出発したいんですが」

「聞こうよ!? 名案だよ!? あのねあのね、私、美味しい金属をいっぱい食べたい!!」


 ほい?


「世の中には、色んな種類の金属が、いーっぱいあるんでしょ!?」

「ええ、まぁ」

「私も鉄之助の旅に付いてって、色んな所で色んな金属をお腹いっぱい食べるの!! そしたら私は幸せ!!」

「食の旅、って事ですか?」

「うん! でね、私がたくさん、たっくさーんの金属を食べたら……」

「………………成程。俺は君を連れて、食の旅をする。その旅の結果どうしようもなく産む事になるだろう玉鋼を、俺にくれると」

「そうそう! 私は美味しい思いをたくさんできて、鉄之助の目的も達成できる!! えへへ、これ、名案じゃない?」


 俺のために頑張って出産に臨む――それに抵抗があるのであれば、その事実を差し替えてしまおう、と。

 俺のために頑張って、ではなく、自分が食欲に正直であるが故に出産に臨み、結果、産み落とした物を俺に譲ってくれる、と。


「……また、気を遣わせちまいましたね」

「ん? んー……まぁ、気遣い半分、本望半分、ってとこかな? 美味しい金属は好きだし、旅にもいつか出てみたいとは思ってたし!! お。そう考えると、鉄之助は渡りに舟過ぎるね!!」


 渡りに舟、ときましたか。


「そりゃあ良い。君みたいな元気な子に乗ってもらえるなら、舟になるのも楽しそうです」

「お!! じゃあ?」

「……ええ、ええ。そんな素敵な提案、俺としちゃあ断れる道理がありゃあしませんとも」


 もしも冒険の旅路だったならば、ユリちゃんみたいな少女を連れ歩くなんぞ冗談でも許容しませんが……俺の旅路は元々、冒険目的などではありませんし、食を目的とする旅になるならば、特に問題は無いでしょう。

 それに……独り旅も悪くはありませんでしたが、可愛い連れがいる方が何倍も良いってもんだ。


「そいでは、よろしくお願いしますね。ユリちゃん」

「えへへ、こちらこそだよ!! 鉄之助!!」


 こりゃあどうにも、これからはますます、楽しい旅路になりそうで。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ