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第49話 vs中国代表

 三勝三敗で迎えた最後のバトルの相手は中国代表のジァン

 右側のもみ上げを三つ編みにした彼は不敵に笑い、シエルデヴァイスを構えた。



「おい、日本人。お前の戦いは全部動画で見た。絶対にオレには勝てない」

「それはどうかな」

「「侵略アンヴァズィオン!」」



 互いに挑発し、シエルデヴァイスのディスクにカードをセットする。



「オレは【帝仕みかどつかえの小動物】を召喚」



 召喚されたモンスターは空中に浮かぶ東洋風の龍だ。

 冬姫ふゆひめの契約カードである【果実を守護する小動物】は西洋風のドラゴンだが、それとは全く異なる見た目である。



「「ランクアップ・エヴォリューション!」」



 二人の声が重なり合い、それぞれのモンスターが繭に包まれる。

 角と翼の生えた兎に対して龍の変化は微々たるものだった。

 余裕の笑みを浮かべ、腕を組むジァンは指先に挟んだもう一枚のカードをチラつかせていた。



「【魅惑の魔物】で攻撃」



 毒の尻尾は龍の固い鱗に阻まれて突き刺さらなかったが、状態異常バッドステータスはしっかりと適応されているようでシンのターンが終わると追加の毒ダメージが体力ゲージを削る。



「これが状態異常バッドステータスか。思ったよりも持って行かれるな。行けッ【帝仕みかどつかえの幻獣】!」



 ジァンの元から飛び立った龍は一直線に進み、鋭い爪が兎へと向けられた。

 しかし、兎は微動だにせず立ち尽くし、シンは口角を釣り上げた。



「【魅惑の魔物】の効果発動。これであんたの攻撃は俺の兎には届かない」

「厄介な効果だ。それでも全勝出来てないって事はお前が最強じゃないって事だよなぁ!」



 まだ策があるのか余裕の表情を崩さない彼はシンのターンが終わるまで目を瞑っていた。

 カッを目を開き、これ見よがしに指先のカードを見せつけるジァンはしなやかな手つきでディスクにカードを重ねる。



「震え上がれ。ランクアップ・ファイティング・エヴォリューション!」



 輝きを放つ繭が解き放たれた時、室内にも関わらず天井に雷雲が発生し、轟音と共に龍が舞い降りた。

 その手には漢字の彫刻が施されている巨大な印鑑が握られていた。



「降臨、【玉璽ぎょくじつか応龍おうりゅう】」



 空中を縦横無尽に駆けるその姿は神々しいの一言だ。観客席からも感動の声が聞こえる程である。

 究極進化を目の当たりにしてもシンは冷静に攻撃を宣言し、確実に毒ダメージを与えたが、胸の中では言いようの無い不安感が渦巻いていた。



「【玉璽ぎょくじつか応龍おうりゅう】の攻撃」

「何度やっても無駄だ、【魅惑の魔物】の効果発動」

「……れ」



 攻撃宣言を取り消さないジァンに従い、龍は巨大な口を開けた。

 不揃いな牙が剥き出しとなった口腔内に光が集まっていく。

 やがて光が集束し、一気に吐き出された光弾は兎の真横を通り過ぎ、床に大穴を穿つ。

 爆発と爆風の後に煙幕が晴れるとシンは床に倒れ込んでいた。



 契約モンスターの攻撃がプレイヤーにも適応される事は冬姫ふゆひめ戦でシンが立証している。

 冬姫ふゆひめ戦の一件はシンに故意があった訳ではないが、ジァンは攻撃対象にならない【魅惑の魔物】を無視してシンへのダイレクトアタックを命じた。

 そんな事が許されてしまえば、これは唯のカードゲームでは無くなってしまい、世界を脅かす兵器に成りかねない。



 直接攻撃を免れたシンはゆっくりと身体を起こしながら兎を探した。

 いつものように側で心配そうに眺めているのかと思ったが、それは買い被りだったのか兎はその場から動かずに上空を見上げていた。



 どうやって自分への攻撃を回避するか考えつつ立ち上がると悲鳴じみた観客の声が応援の声へと変わっている事に気付いた。

 そして、自分がカードバトルをしている事を思い出した。

 顔を上げると大スクリーンにはAimeeエメがアップで映し出されており、口をパクパクと動かしている。



「……使えってのか、こいつを」



 シンは腰のデッキケースを開き、中から最後の一枚を取り出した。

 そのカードに描かれているのは到底、兎とは思えないイラストだが、間違いなく【魅惑の魔物】の進化先だと分かるテキスト内容だった。

 ただし、無駄に長い文章の末は黒塗りされていて読めない部分があった。



「あんた、俺を直接狙っただろ?」

「何の事だ? どう見ても事故だろうが」

「そうか。なら次から気をつけろ。行くぞ、兎」



 シンはシエルデヴァイスを構え、重ねられた二枚のカードの上に最後のカードをセットした。

 眩い光はどこからともなく発生した黒い霧と混ざり合い【魅惑の魔物】を包み込む繭を覆い隠した。



 シンの呼吸が速くなり、肩が上下し始める。

 繭の中の兎がどうなっているのか見えないが、同じように呼吸が速くなっている事が手に取るように分かった。

 やがてシンの呼吸のリズムと【魅惑の魔物】の呼吸パターンが同調されなくなっていき、呼吸苦から表情が歪む。

 その苦しみの先にあるのは生への固執と勝利への執着である。

 好感度100%とは互いの気持ちをぶつけ合えることができる者達の証明。信じ合って共に戦い続ける者達だけが辿り着く究極の境地。


 故にシエルデヴァイスへの進化宣言はこう定められた。



「ランクアップ・ファイティング・エヴォリューション」



 この境地に何が待ち構えているのか、彼はまだ知らない。

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