第47話 vsインド代表
本戦二日目、最初の相手はインド代表のカイラ。彼女はブラジル代表のルーカスよりも年下の少女だった。
そんなカイラが契約しているのは二本足で立つ巨大な象である。
「俺は【魅惑の小悪魔】を召喚して攻撃」
「カイラは進化させるです。ランクアップ・エヴォリューション」
巨大な象はネックレスや指輪等の装飾品を携え、より豪華な佇まいとなった。
シンはいつもと異なり、兎を進化させずに攻撃を宣言したが、そうしなければいけない理由があった。
「ランクアップ・ファイティング・エヴォリューションです!」
二足歩行する象は毒状態にも構わずに兎を見下ろし、一歩一歩近付いてくる。
その度にスタジアムが揺れ、観客達から悲鳴が上がった。
「【除災厄除の神】の効果発動です」
小さい肩を弾ませるカイラは息を整えながら呟く。
シンは攻撃を宣言し続け、兎はそれに応え続けたが【除災厄除の神】は段違いの防御力を持ち、びくともしない。
対してカイラ達には何の動きもなくされるがままとなっていた。それが彼女達の戦い方なのだ。
「次のターンで終わりです」
「もう八ターンか。あっという間だな」
カイラに勝つ為には攻撃力の高いモンスターで速攻するしかない。
彼女が契約する【除災厄除の神】はカテゴリーgodに属する特殊な勝利条件を持つカードである。
カイラは【除災厄除の神】へ進化後、八ターンを耐えれば無条件で勝利できるのだ。その代わりに攻撃や防御といったコマンド入力を一切行えない。
契約カードを信じる者にしかできない戦い方である。
シンの【魅惑の小悪魔】では【除災厄除の神】の鉄壁を破る事は不可能だった。
「マントラ発動なのです」
【除災厄除の神】のマントラは悪を退け、成功と勝利をもたらす。
巨大な象の神はあぐらをかき、右の掌を兎に向けた。
これだけで【魅惑の小悪魔】の負けが確定し、シンのスマートフォンには『loser』と表示された。
「悪魔のカードに勝てて良かったのです。神様が負けると国に帰った後で怒られちゃうのです」
「そんな事、気にしなくても良いだろ」
「ガネーシャ様と契約する者として、お兄さんにだけは負けるなと大統領に言われていますので」
「……えぇ」
この大会の参加者はシンが思っているよりも重責を担っている者が多い。
シンは日の丸を背負ってはいるがこれは本来であればカガリが背負うもので、代理を務めているシンは総理大臣に脅されてこの場に立っている。
そういう意味ではシンも特殊な境遇と言えるだろう。
またしても負けを喫したバトルを終えるとブラジル代表のルーカスと中国代表の强のバトルを観戦している観客から悲鳴が上がった。
時間を操る【時の支配神】はシンの【魅惑の魔物】を封じた強敵である。
対する强の契約カードはとぐろを巻く龍だった。
龍の強力な攻撃が【時の支配神】の胸を打ち抜いた時、ルーカスにも激痛が走っていた。
彼はそのまま胸を押さえつけ倒れてしまい、救護スタッフが駆け寄る。
その光景を生で観戦していた観客の悲鳴で他の選手やスタッフも異常に気付いたのだった。
テレビ視聴者向けの実況や解説も混乱しているが、それを感じさせないように場を繋ぎ、中継を一時中断していた。
「まさか、発症したのか!?」
「かもしれないのです。彼はお金の為に必死だったのでその身に何があってもおかしくはないのです」
「なんで、そこまでしてゲームをするんだよ。たかがカードゲームだぞ」
「それが彼の戦う理由なのです。勿論、カイラにも戦う理由があります。お兄さんにもあるのです?」
シンは自分を見上げる少女の視線から逃げるようにVIP席を見上げる。
そこでは鷺ノ宮 朝陽と進堂内閣総理大臣、その他各国首脳が談笑していた。
「俺は命を賭けてまで戦う理由を持ってない」
「そうですか。でも、彼はこれでお金ゲットです。お母様もお喜びでしょう」
「子供が病気を発症しているんだぞ! 喜ぶ訳がないだろッ」
「いいえ、それは違うのです。きっと彼は医療を望まないので、支払われる医療費の一部はお母様の懐に入るでしょう。契約書には使い方は人それぞれと書かれていましたので、生活費の足しになれば彼も救われるのです」
そんな文言には気付かずにサインしているシンは震えた。
そして、このような発言を少女にさせる世界が受け入れられなくて、やるせない気持ちでリングを後にした。
【象頭の小神】→【象頭の御子神】→【除災厄除の神】
ランク:序→破→急
カテゴリー:god
モチーフ: 商業と学問の神 ガネーシャ
効果:【除災厄除の神】召還後、八ターンが経過した時点で勝利が確定する。このモンスターは進化と効果以外の行動ができない。
契約者:インド人 カイラ選手




