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第42話 予選-その効果はチートか否か

 予選は八つのブロックに分かれ、各十人でのバトルロワイヤル形式となる。

 サークル状に十人の選手が配置され、それぞれの前にモンスターを召喚させて戦うのだ。



「侵略《アンヴァズィオン》!」



 十人の声が重なり合い、シエルデヴァイスが起動する。

 シエルカードゲームにおいて、余程の事がない限り1ターン目は進化で終える事が多い。今回もシンを含め、全選手が各モンスターをランク破のモンスターへと進化をさせた。

 戦いは2ターン目から始めると言っても過言ではない。もう一段階進化させるのか、攻撃を仕掛けるのか、効果を発動するのか。

 各選手が動き出す中、シンは未だに迷っていた。

 だから気付くのが遅れてしまった。



『おっと、これはどういう事でしょうか!?』

『完全にシン選手は包囲されていますね。各国の選手達は予め、結託していたのでしょう。我らの"魔王"がこの難局をどう切り抜けるのか見物ですね』


 

 スコットランド代表の選手は随一の素早さを誇るモンスターと契約しており、その効果によりシンを除く全選手のモンスターの素早さが【魅惑の魔物】を上回った。

 八ヶ国の代表選手はシンを標的に攻撃を宣言し、八体のモンスターが一斉に兎を目がけて飛び掛かる。



 シンが契約している悪魔の兎の弱点は耐久力の低さである。

 先攻かつ一撃離脱戦法《ヒットアンドアウェイ》を得意とするシンが後攻に回ることは敗北を意味する。

 ランク破へ進化させているとはいえ、八体の連続攻撃を受けてしまうと一瞬にして体力を削られるだろう。



「……そういう事かよ」



 絶望的な状況でもシンは気怠そうに呟き、角と翼の生えた兎を見下ろしていた。

 その視線に気付いたのか、兎もシンを見上げる。

 この時、シン達の心は決まった。



「俺は【魅惑の魔物】の効果を発動!」



 その効果は兎の弱点を完璧にカバーするものであり、使用していればカガリに勝てたと言わしめるものである。



「この効果により、俺のモンスターは攻撃対象に選択できない」



 八体のモンスターの攻撃は攻撃対象を無くした事で無効となり、それぞれの契約者の元へ戻って行く。

 各選手と観客達が茫然とする中、シンは容赦なく命令を下した。



「【魅惑の魔物】で【謎解《なぞとき》を好む御子神《みこがみ》】を攻撃」



 兎の尻尾が伸び、エジプト代表選手が使役するスフィンクスの背中に突き刺さった。

 みるみるうちに紫色に変色する背中と共に毒のダメージを受ける。



「な、なんだよぉ……」

「そんな効果ありなの!?」

「チートじゃないか!」



 一拍遅れて選手、観客、視聴者が驚きの声を上げる中、シンは効果を発動し続け、毎ターン通常攻撃を繰り返した。

 【魅惑の魔物】を攻撃対象に選択できない選手達は勝てそうな相手を対象にしてバトルは続く。

 兎の持つ効果は一聞すると隙が無いように思えるが実際はそんな事はない。それに気付いた人物が一人だけ居た。



 彼は3ターン目以降、毒状態となったモンスターを対象に効果を発動させ続け、状態異常《バッドステータス》の回復を行い続けた。

 そんな彼が動いたのは10ターン目だった。

 八人の選手と八体のモンスターは退場し、リング上にはシンとアルバニア代表の男性しか立っていない。




「私は【魅惑の魔物】を対象に【病魔吸飲《びょうまきゅういん》の幻獣】の効果発動!」



 まさか状態異常《バッドステータス》の回復以外の効果を持っていると思っておらず、シンは目を見開いた。

 これまでもモンスター効果により一瞬で勝敗が決してしまうバトルを何度か経験しているシンは焦る。



(これまでの行動は俺に攻撃する為の布石か。奴の鳥にも毒ダメージは入ってるから自己回復能力は無い筈。こっちの体力はマックスだけど耐えられるか!?)



 アルバニア代表選手の使役する白い鳥は首から黒い袋を提げており、その袋はモンスターの状態異常《バッドステータス》を回復させる度に膨れていった。

 その袋が解放され、これまでに集めた『毒』が一気に兎を襲う。

 それは効果ダメージとして作用し【魅惑の魔物】の体力を削っていく。



「ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい――ッ!」



 シエルデヴァイスにセットしたスマートフォンを凝視しながら、呟き続けるシンの額から汗が流れ落ちる。

 緑色だった体力ゲージは黄色から赤色へ変わり、ほんの少しの赤いゲージを残して止まった。

 幸い、毒状態になる事はなく、追加のダメージを負う事は無かった。



「俺は【魅惑の魔物】で【病魔吸飲《びょうまきゅういん》の幻獣】を攻撃ッ!」



 兎の攻撃と毒の追加ダメージにより白い鳥は倒れ、間一髪のところでこのブロックの勝者はシンに決まった。



 最後に大ダメージを与えられたアルバニア代表の男性の元へ行くと紳士の対応を見せつけられた。

 これが海外の大人か、と感服していると他のブロックの選手もバトルを終え、世界で八人の強者が出揃った。



 予選後、八人の勝者はそれぞれの過ごし方で夜を明かした。

 ホテルに引きこもりデータを見直す者。

 夜の町へ繰り出す者。

 友人と食事へ出かける者。等など。



 シンは早々にホテルに戻り、母と友人にメッセージを送った。

 そして、麻々乃から送られきた七人の予選動画を見ながら、一人寂しくディナーをいただくのだった。

【赤帽子の小妖精】→【赤帽子の妖精】

ランク:序→破

カテゴリー:fairly《フェアリー》

モチーフ:妖精 レッドキャップ

効果:このモンスター以外の素早さを大幅に上昇させ、攻撃力を低下させる。

契約者:スコットランド人 ローガン選手


【謎解を好む小神】→【謎解を好む御子神】

ランク:序→破

カテゴリー:god《ゴッド》

モチーフ:守護神 スフィンクス

効果:なぞなぞを出し、対戦相手が正解を答えれば相手の勝ち。不正解を答えれば自分の勝ちになる。

契約者:エジプト人 アムネット選手


【病魔吸飲の小動物】→【病魔吸飲の幻獣】

ランク:序→破

カテゴリー:mythical《ミシカル》

モチーフ:幻獣 カラドリオス

効果:自分以外のモンスターの状態異常《バッドステータス》を回復し、回復させた分だけの効果ダメージを相手モンスターに与える。このカードは通常攻撃できない。

契約者:アルバニア人 ジョヴァンニ選手

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