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第24話 リアルとバーチャルが交わった日

 終業式を終え、ガヤガヤしている教室が急に静まり返った。

 何時ぞやと同じで定刻になり、記者会見が始まったのだ。

 今回はシエルカードに興味の無い者達も見るべきもので進堂官房長官が壇上に立っていた。



『第二百代内閣総理大臣に指名されました、進堂です。新たな内閣が発足し、職責を果たせるように全身全霊で取り組んでいきます。それでは――』



 記者会見も終盤に差し掛かり、小難しい話が延々と続くのか、と飽き始めていた学生達にとって待ちわびた瞬間が訪れた。



『では最後にシエルカードについて新しい試みを実行したいと思います』



 カメラのフラッシュが眩しい映像を食い入るように見るクラスメイトに混じって、シンも固唾を飲み込んだ。



『先の公式大会"魔王杯"は実に素晴らしいものでした。私は参加する理由が無かったので不参加でしたが、次の公式大会には参加したいものです。そうでしょう、鷺ノ宮社長』



 公私混同と思われる発言に記者が食いつく。

 しかし、彼らの質問に答える素振りを見せない進堂総理大臣に応えるように、袖から鷺ノ宮エンタープライズ代表取締役社長――鷺ノ宮 朝陽が登場し空気が変わった。



『進堂総理から要望を受け、大規模な公式大会を開催します。今回は世界大会です。これから世界各地で予選、本戦を行い、国の代表者で世界一の座を争うのです!』



 会見の内容が大きく異なり、記者達が慌ただしくなる。

 テレビ生中継を見ていても、それが如何に予想外の展開かが見て取れた。

 更に鷺ノ宮 朝陽の話は終わらない。



『総理、こちらを』



 差し出されたシエルデヴァイスを装着した進堂総理がカードをセットすると青白い光を放ち、白銀の甲冑を纏う騎士が現れた。

 これまでの投影されたホログラムではなく、本物の騎士がそこに立っていた。

 進堂総理も初見だったのか、目を見開きながら恐る恐る騎士に触れていた。

 しっかりと掌が鎧に触れて硬さを感じる。その質感はテレビ越しでも視聴者に伝わった。



『これでシエルデヴァイスおよび、アプリの最終アップデートを完了しました。今日からこの現実世界に皆様の契約モンスターを召喚する事が可能になるのです!』



 その宣言は嘘か真か。

 記者も、ニュースキャスターも、学生も、会社員も、全世界の人が半信半疑でアプリをアップデートすると本当に契約モンスターが現実世界に現れた。



 シン達の学校でも至る所にモンスターが現れ、生徒達が興奮している。

 亜梨乃もこっそりとアプリを開き、机の上に愛しの蛇を召喚させていた。

 キャーと歓喜の声を上げながら蛇を抱き締める亜梨乃は麻々乃へと近付き、マフラーのように互いの首に巻き付けている。



「可愛すぎて辛い!」

「……そっか。良かったな」



 少し引いているシンを他所に触れ合い続ける双子は既に記者会見の事をすっかり忘れていた。

 しかし、シンは鷺ノ宮 朝陽が発する言葉を聞き漏らしていなかった。



『日本代表決定戦には魔王杯優勝者であるシン選手にも出場していただきたいと考えています』

『それは良い。シン選手、次は表彰台ではなく、スタジアムで会いましょう』



 突然、自分の名前を出され、むせ込むシンに気付いた双子がタブレットに目を向けると既に記者会見の中継は終了していた。

 カードゲーム発売元の社長と日本の首長から名指しされたシンはまたしても話題となり、噂は振り返された。



 疲弊したシンが帰宅するとテーブルの上に小包が置いてあった。

 母は仕事で不在だが自分宛であった為、遠慮なく開けると中から丁寧に梱包されたカードと共に手紙が添えられていた。



 はやる気持ちを抑え、傷つけないように開封すると待ちに待った物が顔を出した。

 それは、シン専用のランク破のカード。

 直ぐに自室に保管してあるデッキケースの二段目に収め、手紙を開いた。

 しかし、手紙はフランス語で書かれており、読むことは出来なかった。

 麻々乃に聞いた方が楽なのだが、待ちきれず自分で訳す事にしたシンは一晩かけて手紙を読み解いた。



 苦労して日本語訳した手紙の内容は感謝と注意喚起だった。



《契約カードのランクが上がれば、より強力なモンスターとなる。しかし、それは契約者にとっても負担となりうる。貴方がそのカードを使用している姿が見られる日を楽しみにしています》



 こうして日本代表決定戦でも渡り合えるであろう、【魅惑の小悪魔】の進化先のカードを手に入れたのだった。

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