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第23話 日本三強

 リョウは得意げに、かつ饒舌に語る。

 あのタッグバトルから一夜明け、登校するや否や昨日の事について語り始めた。



「あの人は三強と呼ばれる一人で、通称"黄金林檎ゴールデン・アップル"の冬姫ふゆひめ

「何で林檎?」

「そりゃお前、あの大企業の社長秘書であのネックレスをしてるからだよ」

「なるほど。他の二人は?」



 昨日の名刺と彼女のネックレスを思い出し、納得する。



「一人は日本チャンピオン、"九尾ナインテール"のカガリ。もう一人は"仮面騎士マスク・ド・シュヴァリエ"のンドゥーだ。」

「んどぅー? ふざけたユーザーネームだな」

「そんな事を言っていられないくらい強いぞ」



 シエルカードゲーム初心者のシンが三強の一人と接触したという噂は一気に広がり、ネットを騒然させた。

 本人はそれが如何に凄い事なのか気付いておらず、気付こうともしていない。

 彼が今、一番気にしている事は昨日の女性が持ちかけたスポンサー契約についてだった。

 シエルカードゲームにプロもアマもないが、チャンピオンであるカガリには強力なバックがついているという噂がある。

 冬姫ふゆひめは自社がスポンサーとなっており、大きな試合の際は会社がバックアップしてくれると言う事だ。



「断ろう」

「断るのかよ!」

「どうしたんだい、君達?」

「金田。林檎の会社ってヤバい話とか聞かないか?」

「鷺ノ宮エンタープライズには出資していて、あの冬姫ふゆひめのスポンサーを務めている。特に悪い話は聞かないけど、どうしてだい?」

「こいつがその冬姫ふゆひめに接触されて、スポンサー契約の話を持ちかけられたんだよ」

「えぇ!? そんな事がありえるのか……。君、この前まで無名、というか初心者だよね」



 途中から話に参加した金田の父も社長であり、当時はまだ中小企業だった鷺ノ宮エンタープライズに出資していたとの事だ。

 そんな彼は優柔不断でまだ契約カードを選定しかねている。



「その無名、初心者プレイヤーが悪魔のカード持ちで公式大会優勝なんてするから目をつけられてるんだよ」

「そうだ。だから無闇に大人とは付き合わない方が良いと思う。これは唯のゲームだ。金儲けに利用されるつもりはない」



 シンの軽率な行動は全て母に返ってくる。

 女手一つで育てて貰い、幼少期に多大な心配をかけた身として、それだけは何としても避けたかった。

 後日、シンは名刺の連絡先にお断りの電話をかけたのだった。




 期末試験に向けてテスト勉強をする為にリョウの自宅を訪れたシン。

 二階の部屋で教科書を広げていると階段を駆け登る音が近づいて来た。



「シン!」

「アヤメ、久しぶり!」



 ノックもせずに扉を開け放ったのはリョウの妹だった。

 彼女もまたシンの幼馴染みで来年、高校生になる。



「シン。いい加減、その呼び方止めろよ」

「今更変えられないって。俺が別の呼び方をしたら違和感があるだろ。なぁ、アヤメ」

「あたしもその呼び方気に入ってるよ」



 シンというあだ名は小学生の頃からいつの間にか定着し、今では誰もがそう呼ぶが彼女をアヤメと呼ぶのはシンだけである。



「シンがテレビに出た時はビックリしたよ。しかも優勝しちゃってるしさ。優勝賞品のカード見たーい」

「カードは色々あって手元に無いんだ」

「えー。でも、シンは自分のカードの進化先を手に入れたんだよね」

「あ、あぁ、まぁ、そうだな」

「いいなー。あたしもシエルカード欲しいんだよね」

「もういいだろ。俺達は勉強するんだから、出て行けよ」

「えー。折角、会えたのに」



 名残惜しそうに部屋を出て行く彼女を見送り、リョウと顔を見合わせた。



「もう中三だっけ。来年は受験か」

「俺達と一緒の高校を受けるってよ。だから親がシエルカードの購入を禁止してるんだ」



 それは賢明な判断だと思えた。

 今ではシエルカードゲームをやっている小学生も居るが定期的に問題が起こり、ニュースになる事も少なくない。

 高校受験合格後のプレゼントでも遅くないだろうというのがリョウや両親の考えだった。



 無事に期末試験を終えたシンは次なる戦いへと巻き込まれる事になっていく。

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