第18話 表彰式
一度、控室へ戻り、水分を補給したシンは再びスタジアムへと立った。
不要な情報の開示もあったが、無事に目標を達成して晴れやかな気分だった。
表彰式には本戦に出場した全ての選手が参加し、主催者やスポンサー達からの言葉を聞いた。
そして遂に優勝者二人の名が呼ばれ、同時に壇上へ上がった。
待ち構えていたのは鷺ノ宮 朝陽と進堂官房長官だった。
まさか本物の政治家と顔を合わせる事になるとは思っておらず、シンの背筋から緊張の汗が流れ落ちた。
隣を隠れ見るとAimeeはキャスケットを被ったまま、堂々と立っていた。
肘で腕を小突き、小さな声で帽子を取るように注意したが、澄ました顔であっさりと拒否されてしまい、諦めて進堂官房長官から賞状を受け取る。
「君が七枚之悪魔の一柱を持つ者ですか。優勝おめでとう」
「ありがとうございます」
シンの次にAimeeも賞状を受け取った。
「手に汗握る見事なバトルでした。まさか借り物で勝ち進めるとは思ってもみませんでした。おめでとう」
「……Merci beaucoup」
そんなやり取りを隣で聞くシンは内心動揺していた。
あんなにも苦戦を強いられたのに他人の契約カードで戦っていたと言うのか。
驚愕の眼差しに気付いたAimeeはキャスケットの下で微笑んだ。
進堂官房長官が壇上から降りると入れ替わるように鷺ノ宮 朝陽とアタッシュケースを持った男が壇上に上がった。
頑丈なアタッシュケースが開かれ、真っ赤なシルクに包まれた七枚のカードが姿を現わした。
禍々しさを放つカード達を目の当たりにして喉を鳴らすシン。
隣からはクスッと笑う声が聞こえた。
「良い顔してる。先に選んで良いよ」
「え、でも……」
「ランク序のカードだけでランク破のカードと互角に戦ったんだから君の方が強いでしょ。お先にどうぞ」
シンは鷺ノ宮 朝陽に会釈してアタッシュケースの中を吟味した。
どれもランク急のカードであり、全てが輝いて見えた。
そんな中、何度見渡しても【色欲の魔兎】のカードが目に止まる。
喉から手が出る程に【色欲の魔兎】が欲しい。
【魅惑の小悪魔】の進化ラインの終着点であるカードが目の前にあるというのに手を出せないもどかしさ。
そんな苦々しさを呑み込むように、一思いに一枚のカードへ手を伸ばした。
シンが手に取ったのは、まだ見ぬ御仁との取引予定の品。【嫉妬の魔猫】だった。
「そのカードで良いんだね」
「……はい」
未練たらしく返事をしながら踵を返したシンの隣を通り過ぎたAimeeはアタッシュケースの中を確認して、迷い無く一枚のカードを手に取り、懐へ仕舞い込んだ。
「なるほど。面白い選択だ」
礼儀正しくお辞儀をしたAimeeはシンと同時に元の位置に戻った。
「えぇ、早っ!?」
「君が優柔不断なんだよ」
こうして魔王杯は終幕し、全体写真を取った後に各選手は帰宅や帰国の準備の為に控え室に戻った。
その道中、シンとAimeeだけが鷺ノ宮 朝陽に呼び止められた。
「上手くやったな、二人共。私の完敗だよ。会場があそこまで盛り上がっているのに主催者として盛り下げるような真似は出来ないからね」
「あ、バレてました? じゃあね、Monsieurシン。貴方とはまた会う気がする」
「……すみません。え、あっ、ちょっと!」
Aimeeは悪びれる様子も無く通り過ぎ、廊下を突き進んだ。
対してシンは素直に頭を下げる。
「久しぶりだね。まさか、また私のカードゲームで遊んでくれるとは思ってもみなかった。ありがとう」
「いえ……。今日はありがとうございました」
「気をつけて帰りなさい。今日から有名人だ。悪い大人について行くんじゃないぞ」
再度、会釈したシンは足早に控え室へ戻って行った。
* * *
「お帰りなさいませ、お嬢様」
先に控え室へと帰室していたAimeeはキャスケットを脱ぎ捨て、纏めて隠していた髪を振り解いた。
「ご機嫌ですね」
付き人である男性に脱ぎ散らかした服を片付けさせる彼女は始終笑顔だった。
「はい、アレク。随分傷付けてしまったから、謝っておいて」
「かしこまりました、お嬢様」
バトル中はパンツスタイルのクールな装いだった彼女は一変して貴族令嬢を思わせるエレガントな装いに着替え、会場を後にしたのだった。
【導きの小神】→【導きの御子神】
ランク:序→破
カテゴリー:god
モチーフ:軍神 ウプウアウト
効果:モンスターの体力がゼロになった時、相手モンスターの体力もゼロになる。
契約者:フランス人 アレクサンドレ(Aimee選手の付き人)




